「吊り橋効果」とは、恐怖や緊張からくるドキドキ感を、一緒にいる異性への恋と勘違いするという心理効果です。そのため、恋愛に活用できる心理学としてご存知の方も多いのではないでしょうか。

吊り橋効果はドーパミンの放出が関係していると言われていますが、ドーパミンには「やる気をださせる」「ポジティブになる」という効果が期待できます。そのため、恋愛だけでなくビジネスにも活かせる場面は少なくありません。吊り橋効果の意味や使い方を知って、ビジネスに活かしましょう。

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    吊り橋効果をビジネスに活かしましょう

吊り橋効果の意味

吊り橋効果は、心理学用語とされています。吊り橋を渡っているときのような緊張や恐怖を伴う状況下で、行動を共にしている相手に好意・恋愛感情を持つようになる現象を表す言葉です。1974年にカナダの心理学者によって発表された学説で、「恋の吊り橋理論」とも呼ばれています。

■吊り橋効果が起こる理由

一般的に、「好き」という感情は出会って好意を持ち、その後ドキドキするという経路だと考えられています。しかし、出会ってドキドキし、そのことによって好意を持つという経路もあると唱える心理学者もいたようです。

この「ドキドキする」という感情の解釈をすり替えられるのではないか、というのが吊り橋効果の仮説だといわれています。つまり、緊張する状況になってドキドキする、それが好きという間違った認知に誘導されることが吊り橋効果ということです。

■吊り橋効果の心理学実験

吊り橋効果を実証する実験は、カナダの社会心理学者、ドナルド・ダットンとアーサー・アロンによって行われました。

実験は、18~35歳の男性を集め、揺れる吊り橋と揺れない頑丈な橋の2カ所で実施。男性に橋を渡ってもらい、女性がアンケートと称して声を掛けます。そして、「説明をしたいので後日電話をください」と電話番号を教えます。

後日電話をかけてきた人数を見ると、頑丈な橋を渡った男性は少数だったのに対し、揺れる吊り橋の方は多くの女性が電話をかけてきたそうです。この結果から、「吊り橋」という不安定な状況が「不安」を「好意」と勘違いさせたと推論されました。

■吊り橋効果が起こりやすい状況

吊り橋効果はドーパミンの影響を受けていると考えられています。一般的に心拍数が上がると、ドーパミンが分泌されてドキドキすると言われています。そこで、「なぜドキドキするのだろう」と考え、ドキドキの原因は今の状況の中にあると勘違いする現象が起こるようです。

つまり、恐怖などが原因でドキドキしているのに、恋愛や楽しさからくるドキドキと勘違いするというのが吊り橋効果の本質と言えます。そのため、恐怖・不安・緊張・興奮などのドキドキする状況であれば、吊り橋効果が起こりやすいと言えます。

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    吊り橋効果は恋愛に限った心理作用ではありません

吊り橋効果をビジネスに活用した具体例

吊り橋効果は恋愛に関する心理学として有名ですが、ビジネスにも活用できます。

例えば、一緒に仕事をして苦労を共にすることでメンバーへの好意や連帯感が生まれますが、これも吊り橋効果に分類されるでしょう。このように、従業員と顧客との間にも連帯感が生まれることで、ビジネスにおいて成果が期待できるでしょう。

ここからは、ビジネスにおけるさまざまなシーンでの吊り橋効果を見て行きましょう。

(1)チームワークを高めたいときに活用する

参加型ゲームなどの社内イベントにおいて、吊り橋効果を発揮できるシチュエーションを作るという方法があります。ゲームなどでテンションが上がってくると、一緒に楽しんでいる人に対して連帯感が芽生えることから、チームワークを高めるのに役立つでしょう。

(2)会社紹介の文章に活用する

苦労を共にすると結束力が高まる吊り橋効果を、顧客とのコミュニケーションに使うことも効果的でしょう。多くの企業は、社外に向けて会社紹介の文章を出しています。

自社がどのような会社なのか、会社としての努力や商品開発の苦労などを公開することで、顧客に安心感や親しみやすさを与えられる可能性があります。安心感や親近感からくる幸福感も、ドーパミンのドキドキ感と同じように吊り橋効果があると言われています。

(3)社長のあいさつや紹介文に活用する

社長のあいさつや紹介文に吊り橋効果を織り交ぜる方法もあります。社長がどういう人柄なのかを知ってもらうことで、相手(取引先や顧客)に安心感を与えられる可能性があります。苦労話などがあれば、親近感も湧くでしょう。この安心感や親近感が、商品の購入につながっていく可能性があります。

吊り橋効果をビジネスに活用する際の注意点

吊り橋効果はビジネスにおいても活用できますが、活用する際には注意が必要です。効率よく吊り橋効果を実践するためにも、以下に紹介する注意点を把握しておきましょう。

効果は長く続かない

吊り橋効果はドーパミンによる勘違いからくる心理効果といわれているため、長くは続きません。

1つのミッションを終えた直後、興奮が残っているうちは続く可能性がありますが、数日で効果は薄れていくでしょう。そのため、ビジネスにおいて活用する際は、常に次の目標を設定しておきましょう。

狙い通りにならない場合もある

吊り橋効果を狙っても、思い通りの効果を得られないケースもあります。ビジネスにおいては、取り組むメンバーのモチベーションが重要になるため、モチベーションが下がっている状態ではうまく効果が出ないことも念頭に置きましょう。

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    吊り橋効果をビジネスで使う際に知っておきたい注意点とは

吊り橋効果の英語表現

吊り橋効果を英語で表現すると、直訳で 「suspension bridge effect」となります。ただし、これは心理学の専門用語ではありません。心理学では、このような効果を「misattribution of arousal」と呼んでいます。日本語に訳すと「覚醒の誤帰属」となります。

ビジネスにおいて英語を活用する機会は増えているため、状況や相手、伝えたい内容によって英語表現を使い分けましょう。

吊り橋効果をビジネスで活用しよう

恋愛のための心理効果として有名な吊り橋効果は、ビジネスシーンでも活用可能です。吊り橋効果を上手にビジネスシーンに取り入れることで、社員の結束力を高められます。さらに、マーケティングにも応用できるため、企業の戦術として取り入れるのもよいでしょう。

吊り橋効果で得られる心理作用を、さまざまなビジネスシーンで活用していきましょう。