「プライミング効果」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
実はこれ、誰しもが無意識のうちに影響を受けている現象なんです。そして、この効果は企業のマーケティング活動にも利用されています。この効果を利用したマーケティング手法の特徴は、商品を直接アピールせずとも、消費者に商品を想起させられる点にあります。
本記事では、プライミング効果の意味、さらにはそれをビジネスに活かす方法を紹介します。
プライミング効果の意味
プライミング効果とは、先に何らかの刺激を受けることにより、無意識のうちに行動が影響されるという意味の言葉です。
例えば「サンタさんはどんな衣装を着ている? 」という質問をした後に「パッと思いつく果物は? 」という質問を続けると、サンタの赤い衣装に刺激を受け、赤い色の果物を答える確率が高くなります。これがプライミング効果です。
プライミング効果の例
プライミング効果を体験している方は多いです。しかし、当人がそれをプライミング効果だと意識しているケースはほぼありません。
例えば夕方帰宅途中、どこからか唐揚げのにおいが漂ってきたとします。そのあとに寄ったコンビニでつい唐揚げを買ってしまった、というのもプライミング効果と言えます。しかし、この場合「なぜ唐揚げを買ったのか」は当人にはうまく説明ができません。プライミング効果は、無意識のうちに表れるものなのです。
「10回クイズ」もプライミング効果
学生の頃に「10回クイズ」をしたことがある方は多いのではないでしょうか。実はこれもプライミング効果を利用しています。
例を用いて紹介しましょう。
AさんがBさんに「『That(ザット)』って10回言って」と言いました。
Bさんが10回「That」と言い終えたら、次にAさんはBさんに「『これはペンです』って言って」と言いました。
すると、Bさんは直前のThat(ザット)に影響されて「This is a Pen.」と答えてしまいました。
上記の問題で、Bさんは最後に「これはペンです」と言うのが正解でした。なにも、「英語で言って」とは言っていませんからね。ただ単に「『これはペンです』って言って」と伝えただけでは「This is a pen.」と返答する人は(よほど)いないでしょう。
このように、身近な遊びの中にもプライミング効果が使われています。先に受けた刺激(この場合「That」という情報)により、無意識のうちに行動が影響されてしまっているというわけです。
プライミング効果の種類
知らないうちに影響を受けているプライミング効果ですが、プライミング効果には2つの種類があります。それは直接プライミングと間接プライミングです。
これらの違いを覚えて、使い分けてみましょう。
直接プライミング
プライミング効果というのは「先行刺激(プライマー)」と、「後の刺激(ターゲット)」に分かれていますが、そのプライマーとターゲットが同じことを「直接プライミング」と呼びます。
例えば、アイスクリームの広告を見てアイスクリームを食べたくなることがあります。このような場合はアイスクリーム(の広告)がプライマーで、アイスクリーム(を食べたくなる気持ち)がターゲットです。
間接プライミング
直接プライミングのほかには、「間接プライミング」があります。これは、プライマーとターゲットが異なる場合のことを指します。
例えばひまわりの話をした後に、「果物と言えば何を思いつきますか」と聞くとバナナやレモンなどの黄色い果物を思いつくというようなことです。
このようにプライマーとターゲットが一致しない場合のプライミング効果を間接プライミングと呼びます。
ビジネスシーンでプライミング効果の活用方法
プライミング効果のことを解説してきましたが、ではプライミング効果はどのようなことに活かせるのでしょうか。
プライミング効果をビジネスに活かせるシーンはいくつもあります。例えば「商品に関するアンケート」「メールマガジンやSNS」「集中力の向上」「目標達成につながる前向き思考へのシフト」などです。
どのようにプライミング効果を活用するのか、その活用方法がわかる例を紹介します。
商品に関するアンケート
マーケティングにプライミング効果を利用できます。商品に関するアンケートを取ることにより、潜在顧客にプライマーを与えられるためです。しかもこの方法は直接商品を売り込んでいるわけではないため、潜在顧客の抵抗がありません。
では、どのようにアンケートを取ればよいのでしょうか。例えば自身でアウトドア商品を売っていると仮定し、アンケートで「健康のため気を付けていることは何ですか」「リフレッシュするためにしていることは何ですか」などと聞いてみます。
すると、そのような質問がプライマーとなり、潜在顧客はアウトドアに関心を向けることになります。
メールマガジンやSNS
メールマガジンは、登録してくれている方に情報を届けられ、SNSでも情報を発信できます。
そのお届けする情報に、プライマーとなる質問を混ぜることにより、その情報を目にした方は影響を受けるでしょう。
集中力の向上
受験生のとき、机の前に「○○大学合格」と紙を貼っていた方も多いでしょう。実は、それもプライミング効果です。「○○大学合格」という紙がプライマーになり、やる気を引き出します。ビジネスパーソンの場合は今月の目標などを目に付くところに貼るのもよいでしょう。
また、自分が集中できる時間や場所を記録することも有効です。例えば「朝の方が集中して作業ができた」「会社のデスクに余計なものがない方が集中できた」といった記録をすることで、そういった環境に置かれた際の集中力は、記録をする前よりも向上すると言われています。
目標達成につながる前向き思考へのシフト
自分を前向きな思考にしたいと思えば、口癖を変えましょう。口癖を変えることにより、物事をポジティブに捉えられるようになります。
そのためにはプライミング効果を利用してみましょう。自分が口癖にしたいと思っている言葉を目に付くところに貼ります。携帯の待ち受け画面や手帳など、とにかくよく目にするところに貼りましょう。
そのポジティブな口癖を目にすることにより、それが自分の頭に刷り込まれていきます。するといつの間にか自分の思考回路も前向き思考になるでしょう。
プライミング効果とアンカリング効果の違い
プライミング効果と似たものに、「アンカリング効果」があります。この効果は、「初めに見た数字や印象が、その後の判断に影響を与える」というもの。プライミング効果と似ていますが、アンカリングは最初見た数値がアンカー(碇)となり、その前後の数値が振れ幅になります。
プライミング効果は、先に入ってくる刺激が後のことに影響を与えますので、「イメージが植えつけられる」と考えるとわかりやすいでしょう。
プライミング効果を理解しビジネスに活用しよう
プライミング効果によって商品をさりげなく印象付けることが可能です。それにより潜在顧客に影響を与え、商品購入のキッカケにつなげることができます。そのため、ビジネスにおいてプライミング効果はよく使われています。そして、あなた自身も無意識のうちに、その影響を受けていることでしょう。
この記事でプライミング効果を正しく理解し、ビジネスシーンに活用しましょう。