フジテレビのドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』(毎週日曜14:00~ ※関東ローカル)では、“丁稚制度”を続ける家具製作会社・秋山木工に飛び込んだ若者たちに密着した『ボクらの丁稚物語 ~泣き虫同期 4年の記録~』を、14日・21日に2週にわたって放送する。
今回の物語は、2017年に入社した4人の同期を中心に追っているが、彼らを受け入れる秋山木工の秋山利輝社長は、時代に逆行するこの制度に、どんな思いを込めているのか。秋山木工を10年以上見続けてきたドキュメンタリーSAMURAIの山田貴光ディレクターに話を聞いた――。
■あえて“嫌われ役”になっている
ドラマや映画に登場する「丁稚」は、幼い子供の頃から職人や商人の家に入り、奉公する姿が描かれているが、秋山木工の丁稚制度は、一流の家具職人を目指し、住み込みでの修業生活を送るというもの。携帯電話も恋愛も酒もタバコも禁止、さらには、男女ともに丸刈りになって過ごすという気合の入りようだ。
そんな秋山木工を山田Dが取材することになったきっかけは、同社に入社した女子高校生たちに密着した映画『わたし家具職人になります』(2011年公開)。「彼女たちを追いかけたいと思ってカメラを回させてもらったのが最初です。それ以降も毎年新しい子が入ってきて、育っていく様子を見続けてきました」
この制度を作った秋山社長は、今回の密着でも「コラ!」「分かってんのか、お前ら!」「バカタレが!」と厳しい言葉で叱る様子が映し出されている。その姿を長年見てきた山田Dは「基本的に、秋山社長は大家族のお父さんであり、親方であり、師匠ですね。その中で、自分の役割として『叱ることをしなければ失礼だよ』という言い方をしています。褒めてやるのは誰でもできるけど、叱ってあげないと彼らが育たないということを自分の経験から知ってるから、あえて“嫌われ役”になっているんだと思います」と分析する。
そのことは、叱られる側も感じているそう。
「あまり見込みがなかったり、期待をかけられなかったり、育っていかない子には叱らなくなっていくんです。だから彼らも、『社長に怒られなくなるのはヤバいんじゃないか…』と思っていくようになりますね。それでも人間ですから、『やっぱりムカつきます』と本音を言う子もいますが(笑)、それから数年経って『あの言葉ってこういうことだったんだな』と気づくんですよ」
■親とのつながりを大事に
秋山社長が丁稚を育てる上で意識するのは、本人だけでなく、その親・家族にも及ぶ。入社初日に家族へ手紙を送り、その返事をみんなの前で読み上げるほか、毎日の修業生活を記録したレポートは1冊書き終えるごとに実家に送り、それを読んだ家族がメッセージとともに送り返してくれるというやり取りが行われているのだ。
その狙いは「親と一緒に育てる」ということ。さらに、「親孝行」が1つのキーワードになっている。
「家具職人は、人を喜ばせる家具を作るのが仕事。だから、親孝行することによってまず家族を喜ばせないと、他人を喜ばせることはできないということなんです。修業をドロップアウトしようとする子は、自分のことしか考えていないけど、親のために、誰かのためにと考えることによって残っていける。だから、親からの手紙をみんなの前で読ませて、ちゃんと感動する気持ちを伝えるなど、親とのつながりをすごく大事にされていますね」