女優の松本まりかが、23日にBSフジで放送される『ザ・ノンフィクション特別編「禍の中で この街は」』(19:00~20:55)のナレーション収録に臨んだ。昨年10月に2週にわたって『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ)で放送された、新型コロナウイルスに襲われた新宿二丁目のショーパブ「白い部屋」を経営するコンチママ(73)たちの奮闘に密着した作品に、その後の様子を追加取材した特別編だ。

お客が入らず赤字を抱えるコンチママたちと、一躍ブレイクを果たして今最も勢いに乗る女優である松本。対極にある状況に見えるが、松本は「ものすごく心が共感するところがあります」と語る――。

  • 『ザ・ノンフィクション』のナレーション収録を行った松本まりか

    『ザ・ノンフィクション』のナレーション収録を行った松本まりか

■飲食店のジレンマ「“歯がゆい”の最上級」

「白い部屋」は昨年、コロナで2度にわたる休業を余儀なくされた上、ママとキャストの間に心のすれ違いが生まれ、キャストの半分が店を去ってしまった。

その後、ベテランキャストのかんたさんが独立を決意。一方で、20年以上前にキャストだった真琴さんをチーママに迎えるなど、今回は「白い部屋」が大きく変わっていく様子が描かれており、松本は「コンチママも、かんたさんも…思っていた以上にすごい変わったなと思いました」と、前回放送時からの変化に衝撃を受けた。

この映像の中で特に印象に残っているのは、感染拡大に歯止めがかからない中で、新たな店を本格的にオープンする際にかんたさんが発した「(客が)お見えになったらラッキー。要請どおりですし。誰からも文句も言われることなく。そんなに忙しくならないから密にもならない」との言葉だという。

「お客さんに来てほしいけど、たくさん来たら困る。このジレンマが、飲食店をやられている方々にとって、このコロナで一番複雑なところですよね。店を閉めるにしても開けるにしても、どっちにも正解がないし、どっちにしろ売上は下がってしまう。どう頑張っても誰からもOKと言われないし、自分でもOKと思えるやり方がない。“歯がゆい”の最上級のつらい状況…この大変さを言い表せる言葉が見つからないです」

  • (C)フジテレビ

■前向きな言葉に「私も頑張ってみようと」

松本自身は、ドラマだけでなく、バラエティやCMなど様々な作品・番組に出演し続ける日々を送っているが、「おととしまで仕事が少なかった自分にとっては、今困窮されている皆さんの仕事がしたくてもできない歯がゆい気持ちも、めちゃくちゃ分かります」と、コロナで苦しむ二丁目の人たちに共感。

一方で、コンチママをはじめとする登場人物たちはネガティブにならず、「ここで嘆いても仕方ないからね。頑張りましょう」と、前向きな姿勢を見せている。松本は「このジレンマとの戦いはものすごく苦しくてストレスフルだと思うのに、それを明るい口調で言っている。そこがすごいなと思いました」と驚きを隠せない。

この二丁目の人たちの“強さ”の背景を、取材した宮井優ディレクターは「あの人たちは、性的マイノリティーとして人生そのものをずっと否定され続けてきたわけですよね。だからある意味、逆境に強いところがあると思うんです」と分析。「コロナで新宿の“夜の街”が叩かれ、不要不急として営業時間を短縮させられるけど、それにショックを受け止めつつも、“しょうがない。だったらやってやろうじゃないか”という感じがすごくある。そこに、この生き方を選択した人たちの矜持みたいなものを感じました」と語る。

松本も「私たちが経験できない深みというものを持ってらっしゃるんだなと思います。それは、圧倒的にかなわない存在であって、ただただリスペクトでしかない」と感心するばかり。その上で、「私も素直にもっと頑張らなくちゃいけないって改めて気づかされました」と感化された様子だ。

「ありがたいことに今忙しい状況の中で、ポジティブなワードを使うのに疲れたことがあったんです。その渦にどんどん入ってしまって…。でも、コンチママの発言を聞いて、私ももう1回頑張ってみようと思いました」