2020年の年末調整も終わりましたね。年末調整は本来支払うべき所得税を算出し、給料の天引きによってすでに支払っている所得税との調整をするものです。払い過ぎた場合は還付金として戻ってきます。「いつ戻ってくる?」「受け取り方法は?」「還付金がもらえる対象者は?」など、還付金についてのさまざまな疑問にお答えします。

  • 年末調整の還付金はいつもらえる

    年末調整の還付金はいつもらえる

■年末調整の還付金とは

所得税は個人が1年間(1月1日から12月31日まで)に得た所得に対して課税される税金です。会社員であれば、毎月の給与および賞与から、暫定的に計算された所得税が天引きという形で徴収されます。これを源泉徴収といいます。源泉徴収により引かれる税額は、給与の総額から非課税分である社会保険料や通勤費などを引いた手取り額に対して、事前に申告してある扶養家族などの状況を元にした控除を行って算出された金額です。分かっている情報の範囲内で所得税の前払いをしているわけですね。

実際はこの他にも所得税を計算する上で必要な控除があります。それは次の所得控除です。

・生命保険料控除
・地震保険料控除
・小規模企業共済等掛金控除
・住宅ローン控除
・社会保険料控除(本人以外の家族の社会保険料を払っている場合)

これらの所得控除は年末調整の時期に証明書を提出することで確定します。そのため、控除がある場合は、源泉徴収されていた税額よりも実際は少ない税額になるので、払い過ぎた税金が戻ってきます。これが年末調整による還付金です。但し、逆のケースもあります。たとえば、年の途中に扶養家族が減ると、扶養控除がなくなるため納める税金が増えます。この場合は増えた分が徴収されます。

■還付金がもらえる対象者は?

年末調整で還付金をもらうには、まずは年末調整の対象者でなければなりません。

1.会社などに1年を通じて勤務している人
2.年の中途で就職し年末まで勤務している人

1と2のいずれかに当てはまり、さらに1年間に支払うべきことが確定した給与の総額が2,000万円以下の人が年末調整の対象者となります。

そして、次にあげる控除があれば年末調整で所得税が還付されます。

・生命保険料控除
・地震保険料控除
・小規模企業共済等掛金控除
・住宅ローン控除
・社会保険料控除(本人以外の家族の社会保険料を払っている場合)

控除を受けるためにはそれぞれの控除証明書が必要です。だいたい10月あたりからこれらの控除証明書が自宅に送られてくるので、無くさないように保管しておきましょう。小規模企業共済等掛金控除にはiDeCo(個人型確定拠出年金)などが該当します。また、住宅ローン控除は1年目は確定申告が必要、2年目から年末調整によって控除が受けられます。

■還付金はいつ、どのようにもらえる?

企業によってまちまちですが、12月あるいは1月の給料日に給与に上乗せされて支払われるケースが一般的です。給与明細には「年末調整還付」「所得税還付」などと記載されます。

このような場合、還付金が振り込まれた月は「いつもより多いなぁ」と感じるだけで、それが還付金によるものと知らずにいる人も多いのではないでしょうか。普段から給与明細はきちんと確認するようにしましょう。

■確定申告でもらう還付金

所得控除の種類によっては、年末調整ができず、確定申告をすることで還付金を受けられる場合があります。次の3つの控除がある場合は確定申告をしましょう。

・医療費控除
・雑損控除
・寄付金控除

医療費控除

医療費控除は、その年の1年間(1月1日から12月31日まで)に本人または生計を一にする家族のために支払った医療費が一定額を超えた場合に、所得控除を受けることができます。

◆医療費控除の金額

  • 医療費控除の金額の計算方法

    医療費控除の金額の計算方法

(実際に支払った医療費の合計額)-(保険金などで補填される金額)-10万円
※その年の総所得金額等が200万円未満の人は、総所得金額等の5%の金額

雑損控除

雑損控除は、災害や盗難、横領によって、資産が損害を受けた場合に、一定の金額の所得控除を受けることができます。雑損控除の対象となる資産は、生活に通常必要な資産に限られ、別荘や高価な貴金属、骨董などは省かれます。

◆雑損控除の金額

  • 雑損控除の金額の計算方法

    雑損控除の金額の計算方法

次の二つのうちいずれか多い方の金額
(1)(差引損失額)-(総所得金額等)×10%
(2)(差引損失額のうち災害関連支出の金額)-5万円
※差引損失額とは、(損害金額)+(災害等に関連したやむを得ない支出の金額)-(保険金などにより補填される金額)
※災害関連支出の金額とは、災害により滅失した住宅、家財などを取壊し又は除去するために支出した金額

寄付金控除

寄附金控除は、国や地方公共団体などに対し、特定寄附金を支出した場合に、所得控除を受けることができます。特定寄附金とは、国、地方公共団体、公益団体等といった団体に対して行った寄付金のことです。

◆寄附金控除の金額

  • 寄附金控除の金額の計算方法

    寄附金控除の金額の計算方法

次のいずれか低い金額-2,000円=寄附金控除額
(1)その年に支出した特定寄附金の額の合計額
(2)その年の総所得金額等の40%相当額

ふるさと納税も寄付金控除の対象です。自治体に寄附をした金額のうち2,000円を超える部分について、所得税及び住民税からそれぞれ控除が受けられます。

年末調整を行うことができる人であれば、ふるさと納税ワンストップ特例制度を利用することで、確定申告をしなくても寄附金控除を受けることができます。ワンストップ特例制度は、納税先が5団体以内の場合に限り、納税先団体に申請することで利用できます。

■確定申告の時期と還付金

確定申告の申告期限は、毎年2月16日から3月15日までとなっています。該当日が土曜、日曜、祝日の場合は、翌日に振り替えられます。2020年の所得の申告期限は、2021年2月16日から3月15日までとなります。還付金は確定申告した日から、およそ1カ月から1カ月半程度で指定した金融機関に振り込まれます。

還付金はもらえたら嬉しいものと思っているかもしれませんが、本来納めるべき税金よりも多く払ってしまったので、取り戻すという意味合いの方が正しいでしょう。そのため、面倒に感じても申告しないと損といえます。その点、年末調整は会社が代わりにやってくれます。所得控除の種類を知って、漏れのないように申告しましょう。そして、還付金がいくらだったのかの確認も忘れずにしたいですね。