コロナ禍を受けて急速に広まったテレワーク。「多様な働き方の広がり」は悪いことではありませんが、例えば「テレワークによるストレス」「テレワークなのに、評価基準が従来のまま」など、新たな問題も生み出しているようです。

そんな中、ガイアックスがニューノーマル時代に合わせたシェアオフィスを1月26日よりオープン。オフィス勤務の在り方が変化する現在、シェアオフィスの使われ方について、同社に話を聞いてきました。

  • シェアオフィスのある「Nagatacho GRiD」

オフィスワークが権利となった

シェアオフィスがオープンするのは、永田町駅近くにある「Nagatacho GRiD」の2、4、6階と地下1階、そして屋上の4フロアです。同事業を推進する野口佳絵さんに、今回の取り組みの経緯を尋ねました。

――テレワーク、リモートワークが進む中、シェアオフィスはどう使われるのでしょう。

野口さん: コロナ禍以前よりテレワークを進める企業でも、実は「集まる場所」「誰かに会いたい」という要望があります。ただ、社員全員が集まる出勤という形態でなく、「集まりたい人だけ集まる」、出社したい人だけ出社するという形ですね。

実際、ガイアックスはテレワークが基本だが、中には出勤したい人もいる。そのため、同社では出社することがインセンティブのような意識だと言います。どういうことなのでしょう。

野口さん: 以前、出勤は働く人にとっては「義務」でしたが、テレワークが通常の企業にとって、オフィスワークは「権利」に変わってきていると感じます。

  • 2階は12個のブースと85個の固定席があるコワーキングスペースとなる

シェアオフィスの重要度が増した

野口さんによると、従来のオフィスは「業務に集中する場所」「誰かと会う場所」「自分と違う意見を聞く場所」など、複数の機能を持っていました。ところが、テレワークが広まることで、一人で黙々と仕事する時は自宅で完結できる状況に。

そして仕事が一段落して余裕ができると、自分以外のメンバーの様子が気になる。ただ、わざわざオンラインで聞くほどでもない。そんな時にリアルな場所としてオフィスが必要となる。つまり、オフィスに求められるものが変化したのでは? と説明します。

野口さん: シェアオフィスの強みは、偶発的な出会いや会話から生まれたアイデア、周囲にいる「別の組織」の人々との交流からくる気付きなどが以前よりあげられていました。テレワークにより、その重要度が増したように思いますね。

――そうした気付きを得るには、オンラインよりはリアルの方が良いのでしょうか?

野口さん: オンラインがになうこと、オフライン(リアル)がになうこと、そのあたりを働く側も理解し始めたのかなと思います。つまり、どちらかだけではうまくいかない、それぞれを補完できる方法がオフィスという場所や組織に求められるのかなと思います。

  • 自然光を取り入れ、開放的な印象

雑談を交えたコミュニケーション

こうした考えから、ニーズに合わせて形や大きさを変える変幻自在のホームグラウンドとして機能するシェアオフィスを提供すると話してくれました。

本シェアオフィスでは、法人でも個人でも、契約した「固定デスク」(税別6万円/月額)1つにつき5人まで登録でき、交代利用が可能。敷金・礼金はなく、1ケ月ごとで席数や入退去更新が可能となっています。もちろん郵便物の受け取りも問題ありません。

しかし、立地や内装で話題となった「WeWork(ウィーワーク)」と比較すると、すごく設備が充実している訳ではありません。そのあたりは、GoogleやAmazonが創業時に自宅のガレージでスタートしたエピソードがあるような、「ミニマムな環境からアイデアを武器にビジネスを始める場」に近い気がしました。

  • 利用者が自由に使えるような必要最低限の仕様

  • 6階は250人まで収容可能なイベントスペースで、イベントがない時は共有スペースとして開放されている

野口さんも「企業の成長ステージによって利用法を変えてもらい、最終的にはここを『卒業』して自前のオフィスを持ち、さらに飛躍してもらうのが理想ですね」と、冗談めかしながらも目指す形を明かしてくれました。

建物の4フロアを自由に使い、その時々に合わせて雑談を行いながらコミュニケーションを深め、弱いつながりを広めていく、そうした考えが色濃く反映されているようです。

  • 小さい子どものいる入居者に向けた「キッズルーム」も用意

  • 大型スクリーンやバーカウンターがある地下イベントスペースも、イベントがない時は共有スペースとして開放

  • 屋上は気候が良い時期はランチやヨガなどにも利用されている 提供:ガイアックス


先日、リクルートキャリアが「テレワークのストレス解消と雑談の有無」に関する調査結果を発表するなど、職場コミュニケーションの大切さが改めて指摘されています。

オフィスを縮小しつつ、テレワークを定着させる一つの解決策として、シェアオフィスの活用は有効なのかもしれません。