映画『るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning』(2021年4月23日・6月4日公開)の大友啓史監督と女優の武井咲が、22日より東京ドームシティ Gallery AaMoにて開催中の「25周年記念 るろうに剣心展」を観覧した。

  • 左から武井咲、大友啓史監督

    左から武井咲、大友啓史監督

同展は、1994~99年にかけて「週刊少年ジャンプ」で連載され、シリーズ累計発行部数7,200万部(電子版含む)を超えた大ヒット漫画『るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-』(原作:和月伸宏)初の大規模作品展。昨年4月に開催が予定されていたが、新型コロナウイルス感染症の拡大防止に鑑みて、いったん延期となっていた。主人公・緋村剣心をはじめとした様々なキャラクターたちがそれぞれの生き方を模索しながら信念を貫く姿を、200点を超える直筆原稿やカラー原画などで紹介する。

様々な原画を見ながら、撮影を振り返る武井と大友監督。今回の「るろうに剣心展」のために描き下おろされたメッセージ入りの原画キービジュアルイラストを見ながら、大友監督は「僕の勝手な考えですが、最近の剣心の画のタッチは、”健(たける)剣心”が入ってるような気がするんですよね」と映画版で主演した佐藤健に言及して周囲を笑わせ、武井は「当時のセリフを思い出しちゃいますね。ザワザワしてきました(笑)」と笑顔を見せる。『るろうに剣心 最終章 The Final』で描かれる「人誅編」の原画の前エリアで足を止めると、剣心と雪代縁の闘いを描いた原画を見つめながら大友監督が「まさに撮影もこんな感じでしたね」と語り、武井も「今まで描かれてきた剣心の闘いとは違いましたね。声が出せないというか、邪魔してはいけないという異様な雰囲気でした」と述懐した。

観覧を終え、感想を聞かれた大友監督は「間近で見ると迫力が違いますね。和月先生がどんな思いを込めて描かれたのか、剣の一振りにどれだけの時間を込めたのか直接伝わってきました。原作から何を感じるか、原作からのインスピレーションを得ようと思って読んでいた時の熱を思い起こさせられた感じがしました」と興奮した様子。武井は「大友監督と回らせていただいたので、映画化当時の監督の思いと大変さが伝わりました。これだけ細かいところまで見られるのはすごく貴重だと思いますし、1作目からの撮影をすごく思い出しました。あれから10年経ったとは思えないんですけど、こうやって剣心たちと一緒に過ごしてきたんだなと強く感じました」と感無量の様子でコメントする。

この展覧会のために原作者・和月伸宏氏が描き下おろした“剣心と志々雄真実”の闘いを描いた二枚一対の「剣闘図」も飾られており、大友監督は「このシーンを実写化した時は相当悩みました。剣と剣の闘いだけではなく、ある時代を背負った男と男の意地のぶつかり合いというのが、この画には出ていますよね。あのシーンは健くんも野獣のような顔つきに変わって。そういった迫力や剣撃の深さとスピードも1枚で表現するのは本当にすごいですね。僕らは何時間もかけて描いたシーンでしたので」と、映画シリーズ「京都大火編/伝説の最期編」の思い出を振り返る。一方、武井は「私はどうしても、健さんと藤原竜也さんに見えてしまいますね(笑)」と笑いながら「当時の撮影を鮮明に思い出します」と懐かしんだ。

映画の撮影を思い出す原画があったか問われた大友監督は「神谷道場での剣心と薫の出会い」と答え、「ヒロイン(薫)とこの原画を一緒に見れたというのは非常に感慨深いですね。原画を見てても、最後のシーンまで辿り着くのに薫がどんどん漫画の中のコマで成長しているんですね。それを私は生身の人間でも体験できているんです。佐藤さんと武井の成長もこの10年見てきたので、2人が一緒にいるシーンは本当に染みましたしね」と感動。武井も「神谷道場のシーン」と回答し撮影を振り返りながら「本当にこれまで緊張しながら撮影に臨んでいたのですが、本作での神谷道場の撮影の時に、この10年間見えていないところでも、(私の中には)薫が近くにいたんだなと思いましたし、戻って来ることができて本当に良かったです」と語る。原作から得た薫役のヒントとして、武井は「最初はやはりビジュアルですね。監督から当時言われていたのは、薫はピュアであり真っ直ぐで、常に父の言葉を信念に持っている女性で、そういったイメージとビジュアルや薫の良いところを体現できればいいなと思っていましたね」と明かし、監督からは竹刀をもらったエピソードも披露した。

武井は映画シリーズ完結について「またこのシリーズに参加できるのは凄く嬉しいですし、海外へ行った時に“薫”として見られる時もあり、こういったグローバルな作品に携わることができて光栄でしたね」と感謝の気持ちを口にする。そんな武井の思いを聞いた大友監督は「薫は17歳の道場主という、父の思いを背負って、道場を守る健気な少女という設定で、そんな人いるかなと思って探していたところ、武井を見つけてオファーをしました。当時の武井と薫が重なって、良いスタートを切ることができましたし、シリーズが進むにつれて、色々な現場で経験された芝居の上手さがすごく出ていました。今回は剣心と巴の過去をどう受け止めていくか、恐らく、5年前(前作)の武井の受け止め方と、今作での受け止め方は違うと思うんですね。薫が2人の過去を受け止める姿は、多くの女性が共感出来る部分だと思います。その想いを武井が芝居を通して表現してくれていましたね」と労い、武井も「剣心の過去を知って2人を思いやるのは、昔の私では無理だったと思いますね」と大友監督の言葉に頷いた。薫というキャラクターについて武井は「信念を貫き、自分の思いを曲げずに立ち向かっていく姿はずっと変わらない姿だと思いますし、私はそういった薫の姿が本当に好きですね。芝居中、薫の気持ちに寄り添いながら共存していましたし、感慨深い気持ちになりますね」と自身にとっても大切だと語った。

剣心を演じた佐藤健について聞かれた武井は「健さんにとっても大きなミッションだったと思うんですが、周りのスタッフさんと同じ方向を向いて進んでいく姿が好きでしたね。健さんがいるだけで、みんなのスイッチが入るし、健さんが剣心を纏うと、『るろうに剣心』の世界に入り込めましたね」と回答。さらに、神谷道場メンバーとの撮影について「『ただいま』という気持ちが強かったですね。うっかり素に戻ってしまうくらいの空気感でした。久しぶりの現場だったんですが自然とスイッチが入りましたし、最高に楽しかったですね」と振り返り、「剣心が横にいてくれたからこそだと思っています。目の前に剣心がいて、横に弥彦がいるということが神谷道場の日常を思い出させてくれるというか、撮影が始まっているというよりは、ご飯を食べている途中で撮られているという感覚でした」と心境を表した。

(C)和月伸宏/集英社