「謹んでお受けいたします」は、さまざまなシーンで利用できる便利な表現です。ただ、具体的にどのような場合に利用できるのか、類語表現には何があるかなど、改めて聞かれるとあまりわからないという人もいるかもしれません。

本稿では、「謹んでお受けいたします」という表現について、読み方や本来の意味など基本的な情報や、類語表現・英語表現について解説します。また、どのようなシーンで利用できるのかについて説明した後、各シーン別の例文も紹介します。

  • 「謹んでお受けいたします」とは

    「謹んでお受けいたします」は利用範囲の広い便利な表現

「謹んでお受けいたします」とは

「謹んでお受けいたします」とは、ある物事を受諾する・引き受ける、という意思表明の謙譲表現です。読み方は「つつしんでおうけいたします」と読みます。基本的な意味をもう少しくわしく掘り下げた後、類語表現や英語表現についても解説します。

物事の「受諾」の敬語表現

「謹んで」は、相手に敬意を払い何かの物事をすることを指します。「謹んでお受けいたします」というフレーズは、提示された物事に対し、相手に敬意を払って「受諾」するという、とても丁寧な敬語表現です。そのため目上の人にも使え、ビジネスシーンでもよく使われます。

「謹んでお受けいたします」の類語表現

「謹んでお受けいたします」と似た意味の表現としては、以下が挙げられます。

  • 謹んで承ります
  • 恐れながらお引き受けいたします
  • 承知いたしました
  • かしこまりました

いずれも謙譲の意味が含まれ、相手からの依頼など対して引き受けたことを表明する表現です。同じ表現を続けないようにする場合など、バリエーションをつけたい場合の参考にしてください。

「謹んでお受けいたします」の英語表現

「謹んでお受けいたします」を英語で表現する場合「喜んでお受けします」という意味合いの表現に置き換えられます。「I will be happy to accept it.(喜んでお受けします)」「We gladly accept your offer.(喜んでお申し出をお受けします)」などはその一例です。

招待を受ける場合、「I am glad to accept your invitation.(喜んで招待をお受けします)」などが使える表現です。

  • 「謹んでお受けいたします」とは

    「謹んでお受けいたします」は多くのシーンで物事を引き受ける場合に使える

「謹んでお受けいたします」のビジネスにおける利用シーン

「謹んでお受けいたします」がよく利用されるシーンは、辞令・昇進・依頼を受ける場合、受賞した場合、面接や内定の場面などです。処分を受けるというマイナスの物事を受ける場合も「謹んでお受けいたします」を使えます。

これらの利用シーンでどのような使い方をするのかについて、もう少しくわしく解説します。

辞令や昇進を受ける場合

辞令とは、昇進・降格や転勤や配置転換などによって現在の職位や勤務地からの異動の命令です。

辞令書を手渡される場面や上司から辞令を言い渡された場面などに「謹んでお受けいたします」を使いましょう。「謹んでお受けいたします」を使うことで、相手を敬う気持ちを表現しながら辞令や昇進を引き受けるという意思を表明することとなります。

依頼を受ける場合

相手からの依頼を引き受ける場合に「謹んでお受けいたします」を使うと、依頼を引き受けるという意味のとても丁寧な表現となります。「承りました」「かしこまりました」も使えますが、「謹んでお受けいたします」と返すと、誠意をもって対応するという姿勢も伝わるので、よく使われる表現です。

受賞した場合

表彰式などの場面で、受賞者が「謹んでお受けいたします」と返すシーンをテレビなどで見たことがある人もいるのではないでしょうか。

受賞のシーンでも「謹んでお受けいたします」は定番のフレーズとして利用されます。「謹んでお受けいたします」を使うこと、賞を与える側に対する敬意と感謝の気持ちを表現するとともに、受賞に対する謙虚な姿勢を示せます。

面接や内定の場面

「謹んでお受けいたします」は、面接の日程通知や内定通知を受け取った際の返信としても使える表現です。ただし、「この案内通知に対する返信は不要です」を記載されている場合は返信する必要はありません。

返信する際も「謹んでお受けいたします」というひと言だけではそっけない印象を与えるため、ビジネスメールの体裁を整えて返信するようにしましょう。具体的な例文は以降で紹介します。

  • 「謹んでお受けいたします」のビジネスにおける利用シーン

    使えるシーンを知り「謹んでお受けいたします」を使いこなそう

「謹んでお受けいたします」を使ったメール例文集

利用シーン別に「謹んでお受けいたします」の表現を使ったメール例文を紹介します。

辞令や昇進を受ける場合のメール

例文として、直属の上司から主任昇進の連絡を受けたときに返信する場合を取り上げました。まずは、連絡をもらったことに関するお礼とともに昇進を受け入れることを伝えます。連絡をもらった上長との関係性などに触れてお礼と今後の決意を盛り込む構成が多く見られるパターンです。

件名 : 主任昇進のお礼

第1開発部 第1グループ 冨岡課長

お疲れ様です。
村田です。

この度は、主任職への昇進のお話を頂き、誠にありがとうございます。
謹んでお受けいたします。

これまで、冨岡課長にはいつも見守って頂いており、困ったときには温かくご指導頂いたこと、心から感謝申し上げます。

主任職として、課長の期待に応えるべくより一層精進する所存です。
今後とも、引き続きご指導ご鞭撻の程、よろしくお願い申し上げます。

依頼を受ける場合のメール

ビジネス上「謹んでお受けいたします」を利用するシーンとしてもっとも多いケースです。依頼を確かに受けたことを伝える言葉として「謹んでお受けいたします」を使いましょう。その後の文章で依頼内容の完了見込みについて伝えておくと、相手側も後のスケジューリングをしやすくなります。

件名 : 見積依頼の件

第1開発部 第1グループ 冨岡課長

いつもお世話になっております。
資材管理部 管理1G 後藤です。

ハードウェアの資材調達に関する見積書作成のご依頼について、謹んでお受けいたします。
ご指定の期日内にお渡しできる予定ですので、今しばらくお時間を頂きますことご了承ください。

それでは、引き続きよろしくお願い申し上げます。

受賞した場合のメール

受賞の連絡を受けたメールの返信では、まず受賞の連絡を受けたことに関する謝礼を述べましょう。その後、受賞した賞を受け取る意思表示として「謹んでお受けいたします」を使います。受賞に関連して、締めくくりで今後の意気込みを表明するなど、状況に応じてアレンジしてみてください。

件名 : 社長賞受賞および表彰式の件

経営企画部 秋葉部長

いつもお世話になっております。
第1開発部 第1グループ 村田です。

この度は社長賞受賞のご連絡を頂きありがとうございました。
また、表彰式のお誘いも頂きありがとうございます。
双方ともに謹んでお受けいたします。

今回の受賞を励みに、今後も一層魅力的な製品開発にまい進する所存です。
それでは、引き続きよろしくお願い申し上げます。

内定通知の返信のメール

内定通知の返信は、件名を変えずに「Re:」として返信します。採用担当者宛には同時期に多くの学生から連絡があるため、誰の返信かわかりやすくするための配慮です。内定を受けることを明確に伝える文章として「謹んでお受けいたします」を使いましょう。丁寧かつ誠実な姿勢が伝わる最適な表現です。

件名 : Re:選考結果のご連絡

株式会社ABC 人事部 人事課
採用担当 田中様

大変お世話になっております。
マイナビ大学文学部文学科近代文学コース4年の中村和明と申します。

内定のご連絡を頂き、誠にありがとうございます。
謹んでお受けいたします。
内定の連絡を頂き、非常に嬉しく思っております。
4月より貴社の一員として活躍できるよう、精一杯努力していく所存です。
今度ともご指導ご鞭撻のほど何卒よろしくお願い申し上げます。

  • 「謹んでお受けいたします」のビジネスにおける利用シーン

    単に「謹んでお受けいたします」というだけではなくシーンに応じた言葉を補おう

「謹んでお受けいたします」は便利な表現

「謹んでお受けいたします」は、さまざまな利用シーンで使える便利な表現です。謙譲表現になっているため目上の人にも使え、相手に丁寧な印象を与えつつ、依頼などを引き受けるという気持ちを伝えられます。

ただ、メールで返信する場合「謹んでお受けいたします」一文ではそっけないため、ビジネスメールの基本構成は意識しながら返信のメールを作成しましょう。