「発足」には読み方が主に2通りあり、読み方によって意味も使い方も異なります。ビジネスシーンやフォーマルな場で使われることの多い言葉ですから、それぞれの意味や使い方をきちんと理解して、正しく使えるようにしておきましょう。類語や対義語、英語表現もまとめました。
発足の意味と読み方とは
実は「発足」は意味によって読み方が変わる言葉です。最もよく使われる「ほっそく」の他、「はっそく」「はったり」があります。それぞれ詳しく見ていきましょう。
「ほっそく」の意味は組織が活動を始めることで、最も一般的
発足を「ほっそく」と読む場合には、組織や機関、制度などの活動の開始という意味があります。発足は現在、この意味で使われるのが最もオーソドックスでしょう。
なお「発」という漢字は、「発育」の「ハツ」や、「発展」の「ハッ」と読まれるのが一般的です。これを漢音といいます。「ホツ(ホッ)」と読むのは、今では一般的になっている漢音の読みより前に、日本に定着していたとされる呉音(ごおん)としての読み方です。
呉音は仏教関係の言葉でよく使用されていたといいます。他には「発端」「発作」「発起人」なども同様に「ホツ(ホッ)」と読みますね。
「はっそく」は出発すること
発足を「はっそく」と読む場合は「出発」「旅立ち」という意味で使われています。「ほっそく」の読み方の方がよく見聞きするため、「はっそく」は誤った読み方と思われるかもしれません。しかし、使われることが減っているだけできちんと意味があるのです。
前述のように、「はっそく」という読みは漢音の「ハツ」をそのまま生かした読みになります。「発育」「発達」「発表」などの言葉もあるので、なじみのある方も多いでしょう。
地名で「はったり」と読むことも
実は「発足」の漢字は地名にも使われています。北海道岩内郡共和町の地名で、読みは「はったり」です。日常やビジネスシーンの会話の中で使うことはなかなかありませんが、教養の一つとして知っておくといいかもしれません。
発足(ほっそく)の使い方と例文
組織や機関、制度などの活動の開始という意味の発足(ほっそく)について、例文を参考に使い方をイメージできるようになりましょう。
・事業拡大に伴い、新部門が発足されることとなった
・大学で新しく囲碁サークルを発足した
・明日は彼が立ち上げた団体の発足式が行われる
・A社は、今まで1つだった事業部を再編し、新たに3つの事業部を発足させるそうだ
発足(ほっそく)の類義語・言い換え表現
「初めて何かを始める」という意味合いを持つ「ほっそく」の類義語は複数あります。少しずつ意味が異なるので、場面に応じて使い分けできるようになっておきましょう。
設立
「初めて何かを立ち上げる」という意味でよく使われるのが「設立」です。「設立」は主に会社などの組織をつくりあげることで、「設立行為」という言葉もあります。
「設立行為」とは法律行為にあたるため、法人の登録など法的な手続きが必要になります。現代は比較的誰にでも会社を設立できるようになっていますが、それでも法的手続きを行わずに設立することはできません。
一方で「発足」は法律行為ではないため、法律に従う必要はなく自発的に立ち上げることができます。社内の事業部を立ち上げたり、学校のサークル活動を立ち上げたりするときに使うことができます。
つまり「会社設立」ということはできても「会社発足」ということはできません。同じように「サークル発足」は使えても「サークル設立」という言葉は使えません。
創立
会社や学校を初めて創ったときに「創立」という言葉が使われます。「設立」と同様、会社や学校など法的手続きを必要とするものを対象にしていますが、「設立」より「初めて」立ち上げたというニュアンスが強くなります。
学校でいう「創立記念日」はその学校が初めて創られた日です。学校や会社によっては途中で名称を変更することもありますが、「創立」はそれには関係なく正真正銘「最初」に立ち上げられたことを意味します。
「発足」の場合は、会社や学校のような法的手続きが必要となるもの以外について、組織が初めて立ち上がったことを表現することができます。
創業
会社や店が初めて立ち上がることを「創業」といいます。これも創立と同様に「初めて」立ち上がったことが重要です。また、法的手続きを必要とする組織や機関に対しても使われます。
「発足」で言い換えるときには、やはり会社や店のような法的手続きを必要とする機関や組織以外に使うことになります。
始動
大きな事業や計画が動き始めるときのことを「始動」といいます。「新規事業が始動する」「プロジェクトが始動した」というような順調に物事がスタートすることを表現する場合には、「発足」「始動」の言い換えが可能となります。
発進
「始動」と同じく、新しく物事がスタートする意味で使われるのが「発進」です。「事業が発進した」「試みが発進した」というような表現の際には「発足」に言い換えることもできます。
しかし、乗り物が「発進」するときに「発足」を使うことはできません。注意しましょう。
緒に就く
「しょにつく」と読む「発足」の類語です。日常会話で使われることはほとんどない言葉ですが、事業や計画が始まることを意味します。「始動」や「発進」は大きな事業やプロジェクトの開始を意味するのに対し、「緒に就く」は小規模な事業やプロジェクトの開始が対象です。
「発足」は規模の大小にかかわらず、事業や計画が新しく始まるときに使える言葉です。
発足(はっそく)の類義語・言い換え表現
前述したように、「発足」を「はっそく」と読むのは「旅立ち」や「出発」を意味するときです。発足(はっそく)はあまり多くは使われませんが、参考までに紹介しておくと、「旅立ち」や「出発」「出立」「門出」といった言葉に言い換えることもできるでしょう。
発足(ほっそく)の対義語
ここからは組織などの活動の開始、新しく物事が始まることを意味する「発足(ほっそく)」の対義語をご紹介します。対義語には、物事を終わらせるといった意味の言葉が該当します。
解散
会社などの団体が活動をやめることを「解散」といいます。ここでの「解」という字はしがらみなどを「解く」という意味です。「連盟は解散した」「アイドルグループは解散した」といった場合に使われます。
解団
「解団」は「解散」と同じく、団体が活動をやめることです。ニュアンスとしては「解散」よりさらに限定された集団を対象に使われるでしょう。「選手団」や「応援団」といった小規模組織が活動をやめるときのイメージです。
解党
「解党」は政党が活動をやめることを指すので、「解散」「解団」よりさらに対象が限定されます。政党のみを対象としているため、ビジネスシーンで使われることは基本的にありません。
発足(ほっそく)の英語表現
ここでは組織などの活動の開始を意味する「発足(ほっそく)」の英語表現をご紹介します。「発足(ほっそく)」を英訳すると「inauguration」になります。「inauguration」は事業などの「開始」の意味があります。
【例文】
- A new government was inaugurated.(新政権が発足した)
ビジネスシーンにも使われる発足とは、どちらの意味か読み方で判断できる
ビジネスシーンでもよく使われる「発足」の読み方や意味についてまとめました。「発足」を「ほっそく」と読む場合は、「事業部の発足」など新しいことが始まるときによく活用されます。「はっそく」と読む場合は出発することを意味します。使いどころを間違えないよう、意味の違いを知っておきましょう。