本記事では杞憂の意味や使い方、由来などを解説します。ちょっとした会話の中だけでなくビジネスの場でとっさに生かせるよう、例文も参考にしてみてください。

  • 今さら聞けない「杞憂」の意味や使い方などを理解していきましょう

    今さら聞けない「杞憂」の意味や使い方などを理解していきましょう

杞憂の意味や読み方とは

早速、杞憂の基本的な意味や読み方を見ていきましょう。

杞憂の意味は「無用の心配」

杞憂とは「心配する必要のないことに対して心配すること」「取り越し苦労」を意味します。心配していたけど何も起こらなかった、という意味合いで「杞憂にすぎない」「杞憂に終わった」などのようにも用います。

杞憂の読み方は「きゆう」

杞憂は「きゆう」と読みます。「杞」はクコ(ナス科の落葉低木)などという意味も持ちますが、ここでは後述するように古代中国の王朝・周の国の名前です。

「憂」は「ゆう」の他に「うれ(い)」「うれ(える)」などと読み、「うれえる、思い悩む、心配する」といった意味を持つ漢字です。

杞憂の由来・語源は中国の故事成語

杞憂の由来は、中国の思想家が記した書物「列子 天瑞篇」の中につづられたお話の中の「杞人天憂(きじんてんゆう)」という四字熟語からきています。この言葉を省略してできた言葉が杞憂です。

この故事は、中国周代の杞の国のある人が「いつか天が落ちて大地が崩れてしまうのではないか」と、ありもしないことばかりを心配して夜もよく眠れず食事もろくにできなかったが、いろいろ説明してようやく納得させた人がいたというお話です。

  • 杞憂は中国の故事が由来の言葉です

    杞憂は中国の故事が由来の言葉です

杞憂の使い方と例文

ここでは杞憂を使った例文や、杞憂を含んだよく使われるフレーズを紹介します。正しい使い方をマスターし、会話やメールの中で自然に取り込めるようにしていきましょう。

杞憂を用いた例文

  • 先ほどお送りしたメールの中で「書類の中に誤りがあるかもしれません」とお書きしましたが、杞憂のようでした
  • こちらの件につきましては、やはり私の杞憂でした
  • 特に変わった様子がないということは、私の杞憂だったようだ
  • 杞憂かと思いますが、念のため今一度ご確認のほど、お願いできますでしょうか
  • なんとなく悪い予感がするが、杞憂であることを願おう

杞憂を含んだよく使われるフレーズは以下です。

杞憂に終わる

「何か起こるのではないかと心配していたが、特に問題もなく無事に終わった」という意味を持つ言葉です。「杞憂に終わった」などの形でも使用できるため、日常でよく使われている言葉です。

ビジネスシーンでも使用でき、「今回の企画は不採用になるのではないかと思ったが、杞憂に終わった」「開発した商品が売れるかどうか不安でしたが、杞憂に終わりました」「15時までに間に合わないと思われたが、杞憂に終わるだろう」のように使われます。

杞憂であればよい

何か悪い状況になっていないか(または起こらないか)心配し、相手の無事を祈る意味を込めて、またリスクの要因に気が付いたときなどに使う言葉です。「杞憂であればよいのですが」という丁寧語として使うこともできます。

使い方としては、「杞憂であればよいのですが、体調など崩されていませんか」「杞憂であればよいのですが、先方に提出予定の提案資料の数値に、矛盾が生じている気がいたしまして…」のように用います。

杞憂しても仕方がない

「起こらないことを心配していても仕方がない」という言葉を簡潔に表現したフレーズです。無用な心配をしなくてもいい、という意味合いでも用いられます。

使い方としては「提出した書類は、事前に隅々まで何度も確認したのだから、今さら間違えなどの杞憂をしていても仕方がない」などです。

  • 例文を参考に杞憂の使い方を身に付けましょう

    例文を参考に杞憂の使い方を身に付けましょう

杞憂の類語・言い換え表現

杞憂と同じような意味を持つ単語に「懸念する」「危惧する」「取り越し苦労」といった言葉があります。それぞれの意味や使い方の解説を通して理解し、場面によって使い分けてみるのもいいでしょう。

懸念する

「懸念」(けねん)とは「何かが気になり不安になる」ことで、日常やビジネスの場においても多く使われる言葉です。「懸念する」の使い方としては「将来起こる可能性のある出来事に対し、不安を感じ心配すること」という意味合いを持たせて、「失敗してしまうのではないかと懸念する」などがあります。

「問題のある部分や心配な部分への指摘」という意味で、「この文章には矛盾があるのではないかと懸念する」「今回の件について懸念する声があがっているようです」などの使い方もできます。

また、「ご懸念」と書くことで敬語としての形になり、目上の人に対し相手の心配事などを気遣うときに使える言葉となります。

危惧する

「危惧」とは「事が悪い結果になるのではないかと不安になり、恐れること」という意味を持ち、「危惧する」は「悪い結果になるのではないか」などの不安な場面に用いられます。

「地球上の平均気温の上昇により、海面の上昇が危惧される」「実験の失敗を危惧する声もある」などのように使われます。

「危惧しております」という丁寧語を用いた使い方もできるので、目上の人に対して用いる場合などに使いましょう。

取り越し苦労

「取り越し苦労」とは「先がわからないのにさまざまな想像をして心配になること」を指します。

杞憂と同じような意味合いで使われることが多く、こちらも日常会話やビジネスで使いやすい言葉となっています。ただし、目上の人に対して使うと失礼な印象となってしまうので場所を選んで使いましょう。

使い方は、「予定が入らないのではないかと思ったが取り越し苦労だった」「雨が降るのではないかと思って傘を持ってきましたが取り越し苦労でした」などのように使えます。

杞憂の対義語

杞憂の対義語には「気楽」「のんき」などがあり、「何かに対する心配事や不安が無い様子」を表しています。

気楽は「心配なことや不安なことが無く、のんびりとしていられる様子」、のんきは「のんびりとした性格、または気分のこと、気晴らし」を指しています。

この2つをそれぞれ使ってみると、「やらなければいけないことが多いときでも、あの人はマイペースでのんきだ」、「たまっていた仕事がようやく終わったので気楽になった」などの使い方ができます。

杞憂の英語表現

杞憂は英語で表すと「needless anxiety」「unfouded fear」「groundless fear」などとなります。

杞憂の意味や使い方を理解しよう

杞憂とは、故事の「列子」から取られた「杞人天憂」を略した言葉であり、「心配する必要のないことを心配してしまうこと」という意味でした。「杞憂に終わる」という言葉は、それまでの不安や心配ごとを打ち消す表現です。

「杞憂であればよいのですが」は相手の体調などを気遣うとき、またリスクの要因を排除するときに使用できるため、「相手や状況をしっかり見ているな」と、印象を良くすることにもつながるかもしれません。