「市井」や「市井の人」の意味や読み方、使い方の例文をご紹介していきます。併せて語源や類語、英語表現も取り上げました。

  • 「市井の人」の市井とは

    「市井の人」の「市井」の持つ意味や、使い方などを紹介していきます

市井の読み方や意味とは

名字として「市井」を用いる場合は「いちい」と読むこともありますが、「市井の人」などと表現する場合は「しせい」と読みます。

この市井には、「人や家の集まっているところ」という意味があり、市街地やちまた、世間などを幅広く指す表現として、文学作品などでよく使われています。

市井の語源

「市井」の語源は、中国の古い時代といわれています。井戸のある場所に人が多く集まって、市ができたことから、人が多く集まり住むところを指して「市井」というようになりました。

現在では、「街」や「ちまた」など、たくさんの人が集まる言葉の代名詞的に使われることも多いです。

  • 市井の読み方や意味、語源とは

    「市井」には人が集まるところという意味があり、語源は古く中国です

市井の使い方と例文

「市井」を名字以外として使う場合、「市井の人」をはじめいくつかの使い方があります。「市井」の代表的な使い方をピックアップしましたので見ていきましょう。

市井の人・市井の人々

市中に住む庶民を表す言葉として「市井の人」「市井の人々」がしばしば用いられます。助詞である「の」を省略して「市井人」と表現する場合もあり、意味は同じです。

【使い方例】

・この番組では、長年一つの道に打ち込んできた市井の人にスポットライトを当てている
・騒動後、彼は芸能界に復帰することはなく、地方で市井の人として暮らしていた

・総理大臣は、市井の人々とは違うのである
・彼は一介の無名の市井人だった

「市井の人」は、「市井」を使った言い回しの中でも最も使われることが多いです。「一般大衆」「一般庶民」などを意味する言葉として、文学作品を中心に登場するので覚えておきましょう。

市井の臣(しせいのしん)

「市井の臣」も「市井の人」と同じく、市中に住む人民や庶民を指し示す言い回しです。「臣」に「主君に使える人」という意味があることから、「お城に住む主君とは異なり市中に住んでいる一般庶民」を表しています。

【使い方例】

・国都にいて仕えない者を、市井の臣という
・農人は草莽の臣なり、商工は市井の臣なり

やや硬い言い回しですので頻繁に使う機会があるわけではありませんが、古い文章を読む際に覚えておくと意味を理解しやすいです。

市井の徒(しせいのと)

「市井の徒」とは、古代の歴史書がもとになっている「市中に住む、ならず者」を意味する言葉です。「徒」には「何の役にも立たない」「いいかげんなさま」などの意味があることから、「市井の徒」は「市中に住んでいるごろつき」などを指す言葉として使われます。

【使い方例】

・ある市井の徒(長谷川伸による書籍のタイトル)
・あきらかにこれ、破廉恥の市井売文の徒、あさましとも、はずかしとも…(太宰治『あさましきもの』より)

ネガティブな意味で用いられる例として覚えておきましょう。

  • 「市井」の使い方例文

    「市井」は「市井の人」以外にもさまざまな使い方があります

市井の類語・言い換え表現

「市井」は使っている漢字自体は簡単ですが、日常会話で頻繁に用いられる言葉ではありません。そこで、「市井」を言い換えできる類義語を紹介します。

ちまた

「ちまた」には、「人が大勢集まっているにぎやかな通り」「大勢の人々が生活しているところ」などの意味があります。漢字では「巷」と書くのが一般的ですが、語源をたどると「道(ち)股(また)」であり、道の分かれ目のことです。道の分かれ目には人の往来が多かったことから、ちまたといわれるようになりました。

「市井」に比べて日常会話や文章などで用いられる機会が多く、より一般的な表現といえます。

「町」には、現在の市町村や集落を表す以外にも、いくつかの意味があります。「住宅や商店が多く人口が密集しているところ」という意味もあることが、「市井」の類義語といわれる理由です。

「市井の人」の類語は「庶民」「大衆」

「市井の人」の意味は「市中に住む人」「庶民」などです。

よって「特別な地位・財産などのない世間一般の人々」を表す「庶民」や、「社会の大部分を占める一般の人々」を意味する「大衆」などが、「市井の人」を言い換えるのに適しています。

  • 「市井」の類義語

    「市井」には「ちまた」や「町」など言い換えできる類義語があります

市井の英語表現

「市井」を表す英語表現はいくつもあり、無理なく表現できます。「市井」や「市井の人」を意味する、代表的な英語表現を紹介します。

「common」「ordinary」

「common」とは、「社会一般の」「公衆の」などを表す英単語であり、「市井」の英語表現として使われます。また、「普通の」や「平凡な」などを表す「ordinary」も、「市井」の英語表現として使われることは多いです。

【使い方例】

・common people(庶民、市井の人)
・an ordinary worker(役職に就いていない人、市井の勤め人)

どちらも一般に使われる英単語ですが、人を表す言葉の前に使うことで、「市井の人」という意味としても使えます。

「the street」「the town」

「the street」「the town」は、「市井」や「ちまた」「町」などの意味でも用いられる英語表現です。

【使い方例】

・The street was quiet.(町は静かだった)
・the pleasures of the town(ちまたの楽しみ、その辺で楽しまれているもの)

「通り」や「町」を表す単語ではありますが、前後の文脈から「ちまた」として使うこともあるので、覚えておきましょう。

ordinary citizens

「市井の人」を表す英語表現はいくつかありますが、「ordinary citizens」が代表的です。それ以外にもいくつかの表現があるので紹介します。

【使い方例】

・ordinary citizens
・common people
・the common man
・an ordinary person

まずは、「一般庶民」「一般大衆」「普通の人」などと言い換えると、適切な英語表現がしやすくなります。

  • 「市井」の英語表現

    「市井」「市井の人」を意味する英語表現は豊富にあります

「市井」は世間、「市井の人」は大衆を表す言葉! 理解して使いこなそう

「市井」は「世間」「世間一般」「ちまた」などを表す言葉として、しばしば使われる言い回しです。普段の会話で使われることはそう多くはありませんが、文学作品などでは見かけることが多いです。

「市井」の読み方は「しせい」ですが、名字として使われる場合のみ「いちい」と読みます。語源は古く中国にまでさかのぼり、井戸のある場所に人が多く集まって市ができたことから、人が多く集まり住む場所を指して「市井」というようになりました。

一般大衆を表す「市井の人」という使い方が最も一般的ですが、「市井の臣」や「市井の徒」など、別の使い方もあります。類義語も多いので、言い換えながら意味を理解していくといいでしょう。