年始の風物詩、箱根駅伝。今年は無観客試合となり、正月にテレビで観戦する方がさらに増えそうだ。

毎年1月2日と3日に開催される箱根駅伝では、関東の大学と学生連合の21チームが東京・読売新聞社前から箱根・芦ノ湖間の往復217.1kmを競う。卒業後はマラソンやトラック競技で活躍する選手も多い。

そのなかで、卒業後「YouTuber」という選択をした選手がいる。今回、ランニング×コメディYouTuberの「たむじょー」さんに、なぜこの仕事を選んだのか、また2021年の箱根駅伝の見どころを伺った。

  • 元箱根駅伝ランナーはなぜYouTuberになったのか?

たむじょー(ランニング×コメディ系YouTuber)
千葉県柏市出身。帝京大学では、2年生時に箱根駅伝8区を走る。4年時には全日本大学駅伝にて1区を任された。副主将としてチームを引っ張った。
実業団からの誘いもあったが卒業後は、YouTube上で「たむじょー」として活動している。チャンネル開設8ヶ月で登録者数4万人を超えるなど、今注目のランニング×コメディー・ユーチューバーである。
YouTube / Twitter

▼【前編】たむじょーさんに聞く、ケガせず継続できるランニングのコツとは?

■異色の進路、卒業後にYouTuberになった理由とは?

――たむじょーさん、本日はよろしくお願いします!

たむじょーと申します! 箱根駅伝に憧れて帝京大学に入学し、2年生時に箱根駅伝8区を走りました。大学を卒業した2020年の春からはYouTuberの活動を始めて、ランニングやタイムトライアルなどの動画を毎日アップしています。また陸上競技のイベントでペースメーカーとして走ったり、会場を盛り上げるMCとして活動しています。

――走る動画も多く投稿されていて、現役の頃と変わりない走りにファンの方も魅了されているようでね。特に人気の動画はどんなものです?

やらかした話なんですが「【伝説】6つ下の代まで語り継がれた夏合宿で激怒されて30分で帰らされた話【激怒】」という動画ですね。

――リアルな部活のやらかし話ですか(笑)

高校3年生の夏合宿で起きた出来事を語った動画で、タイトル通り監督に怒られて30分で帰らされた話です。「帰れ!」と言われても本当に帰ることってなかなかないと思うのですが……。監督の車で駅に連れていかれ、地元までの新幹線代にと1万円札を渡され帰らされました。この動画をきっかけに「本当に帰らされたやべー奴がいる」と僕を知ってくれた方が多いようです。

――確かに、たむじょーさんにしか語れない内容の動画です……。

当時は恥ずかしすぎてとにかく落ち込んだのですが、今だからこそ「こんな奴でも頑張れば巻き返せるぞ」と言えるエピソードですね。今だに高校でネタにされていて、後輩には「合宿を30分で帰らされた先輩」と認識されてます。

――そんなやらかしもありつつ箱根駅伝を走り、大学卒業後はYouTuberとしての道を選ばれました。企業のスポーツクラブ(実業団)で活動したり、一般企業に就職する選手も多いなか、なぜYouTuberだったのでしょうか?

僕は走るのも大好きですが、同じくらい人を笑わせたり楽しませたりすることが好きなんです。だからこそ「ランニング×コメディ」というテーマでYouTuberの道を選びました。

陸上競技をしていて、一番の目標は箱根駅伝でした。なので卒業後に競技で活躍したいという考えはなかったんです。実業団に進む話もいただいていたのですが、就職してやりたいこともなく、悩みながら就活をしていました。そんなとき、YouTuberという職業を知り、「これだ!」と。

――まさに、人を楽しませる仕事ですよね。

実は、小学校の頃から動画を撮ってSNSに投稿していたんです。面白い動画を作ったり、高校で漫才をやってみり、人を楽しませることが好きでした。「YouTuberって、自分のやりたいことと合ってるかも?」と思い、チャレンジしました。

――2020年の春から活動を始められて、9か月経ちました。

今はとても充実していますし。まったく後悔もありません。スーツを着ての就職活動やインターンシップはしていませんが、「これから一番やりたいことはなんだろう」と思って行動した結果がYouTuber活動だったので。

そういった経緯もあり、この活動を通して後輩や同世代の方に「絶対にやりたいことをやった方がいい」と伝えていきたい思いもあります。

――たむじょーさん自身も、やりたいことをやっている真っ最中です。

僕は幸運にも卒業後すぐに実現できました。でも、夢を持ちつつ一旦は別の道を選ぶこともあるかもしれません。思うようにいかないこともありますが、文句を言いながらでも今の目の前のことを全力で取り組めば、努力する方法が分かったり、きっと将来やりたいことにつながるはずです。

■初の無観客開催、今年の箱根駅伝の見どころは?

――さて、まもなく2021年の箱根駅伝が開催されます。今年は無観客での開催となり、例年と違う年になりそうです。そういった状況ではありますが、どんな見どころがありますか?

今年はどの大学が優勝するか、例年以上に予想のつかない戦いになりそうです。昨年優勝した青山学院大学も、11月に行われた全日本大学駅伝では4位という結果になりました。

例年は他の大会や駅伝の結果から、「この大学が上位になりそう」「この大学は調子悪い?」と予想がつきますが、今年はどうなるかわからない面白さがあります。

――目が離せないレース展開になるかもしれませんね。

1月2日・3日の箱根駅伝は選手にとって本当に特別なレースです。「すべては箱根のため」と頑張る選手も多く、この大会にぶつける思いは本当に大きいんです。今年はコロナ禍の影響で、部活が停止になったり、大会や試合が中止や延期になったりと、思うように走れていません。選手の走りを通して、厳しい状況のなか1年間頑張ってきた様子を感じてもらい、自分も頑張ろうと思うきっかけにしてほしいです。

――テレビの画面越しでも伝わってきそうです。

テレビと言えば、今年は視聴率も気になりますね! 毎年、非常に高い視聴率ですが、今年は現地で応援する方もテレビで見ることになりますし、お正月を自宅で過ごす方も多いでしょうから、過去最高の視聴率が箱根駅伝で出るかも! と期待しています(笑)

そして、やはり今回の箱根駅伝の特徴は「無観客」ということです。僕も箱根駅伝を走って感じたのですが、現地での応援は選手にとって本当に力になるんです。1時間くらい走り続ける間、ずっと声援をもらって、区間のゴールでタスキを渡すときは耳が聞こえなくなるくらい。それがないのは、選手にとってメンタル的にきつい箱根駅伝になりそうだなと思います。

でも、選手はみな箱根駅伝を目指して一生懸命トレーニングを積んで臨みます。箱根駅伝は多くの選手にとっての集大成なんです。その選手の強い意思、熱い思いをぜひ画面越しに感じ取ってほしいですね。

――選手の方にとっても特殊な年になりますね。

選手の皆さんにメッセージを伝えるとしたら、こんな機会はないので、逆にこの状況で走ることを誇りに思ってほしいです。10年後、20年後、「あの箱根駅伝を走ったんだぞ」と言えるはずです。

――箱根駅伝がどうなるか、ますます気になります。たむじょーさん、ありがとうございました!

▼【前編】たむじょーさんに聞く、ケガせず継続できるランニングのコツとは?