ビザ・ワールドワイド・ジャパン(以下Visa)は12月17日、「Visaのタッチ決済」に関するメディア説明会を開催した。新型コロナウイルスの感染拡大により、国内外でタッチ決済の取り組みが加速しているという。

  • 「Visaのタッチ決済」に関するメディア説明会を開催

Visaのタッチ決済、国内の動向

冒頭では、コンシューマーソリューションズ 部長の寺尾林人氏がVisaのタッチ決済の現状について説明した。文字通り、店舗のレジなどで非接触で支払えるのがタッチ決済の魅力。そうした理由から、新型コロナウイルスの感染拡大後、タッチ決済の利用が世界中で増加しているという。国内のタッチ決済対応カード数は2020年9月末の時点で3,230万枚を突破。国内のタッチ決済取引数の伸び率は、前年同期比で約15倍以上まで拡大した。

  • 国内のタッチ決済対応カード枚数と取引件数の伸び

寺尾氏はVisaのタッチ決済消費者の声として、タッチだけでスピーディー(55%)、お釣りのやり取りの手間がない(44%)、サインや暗証番号の手間がない(43%)、現金やカードを手渡さずに済むので清潔(40%)、といった反応を紹介し、「タッチ決済は利用者満足に寄与しています」と説明する。

  • タッチ決済が利用者満足に寄与

なおVisaのタッチ決済利用者の44%が「現金を使う機会が減った」と答えた。「タッチ決済の拡大は、日本のキャッシュレスの普及につながっています」と寺尾氏。今後ともブランドの認知向上に努めていく考えだ。

  • 過去1年間で全世代男女の認知度がアップしているという

続いて、マーチャント・セールス&アクワイアリング ディレクターの山田昌之氏がVisaのタッチ決済の加盟店を取り巻く環境について説明した。国内加盟店においては、対応端末数は(数は非公表ながら)前年同期比で3.2倍に増加。コンビニでは全体の70%でVisaのタッチ決済が利用可能になった。

  • 国内加盟店の状況

山田氏は「スーパー、コンビニ、ドラッグストア、飲食など、普段使いできる店舗が増えてきました。全国展開の大手チェーン店のみならず、地方の個人商店でもVisaのタッチ決済が使われている状況」とアピールする。

消費者、加盟店が求めているのは「安全性」「安心感」「スピード」。ちなみに安心感について、山田氏は「従来は『カードを相手に渡さなくて良い』という意味での安心感だったものが、コロナ後は『客と従業員の接触を避けられる』という意味合いに変わっています」と補足する。

  • 加盟店を取り巻く環境とニーズ

今後は、消費者、加盟店の"ユーザー体験"が重要なフェーズになるという。その取り組みの一環として、ワンボタンでどのインターフェース、ブランドもカバーできる端末を開発した。「この端末ならアルバイト店員でも、よりスムーズなオペレーションが行えます」と説明する。

  • よりスムーズな店舗オペのために、3面待ちのレジ端末を開発

店舗においては、Visaのタッチ決済が利用できることがひと目で分かるよう、アクセプタンスマークを積極的に露出していく。これは消費者だけでなく、レジ店員の理解を深めるうえでも有効だという。また、利用促進のため加盟店との協業も進めている。すき家では、Visaのタッチ決済利用で50%を還元するキャンペーンを実施した。「加盟店さんからも情報を発信することで、さらにVisaのタッチ決済の認知拡大に努めていきたい」とい山田氏。

  • アクセプタンスマークを積極的に露出

最後に、デジタル・ソリューション ディレクターの今田和成氏が公共交通機関における状況を説明した。各事業者からは「チケットカウンターの従業員が不足しているのでタッチ決済で解決できないか」「インバウンドへの対応が不十分なので強化したい」「券売機のメンテナンス費などのコストを削減したい」など、様々な悩みが寄せられているという。

  • 公共交通機関の課題

そこで地方の高速バス、鉄道、地下鉄などでVisaのタッチ決済の導入が始まった。「京都丹後鉄道では11月25日にサービスを開始しました。距離制運賃に対応しています。また、福岡市では実証実験の段階ですが1日乗り放題の切符を電子化しました」と今田氏。

  • 公共交通機関における導入事例

課題のひとつはスピード。店舗における決済では0.5秒以内にオーソリ(金融機関へ確認を行う過程)を処理している。これを公共交通機関(固定運賃)でも行い、0.5秒以内の処理を実現した。けれど公共交通機関(距離制運賃)では、その場でオーソリ取得が難しかったという。このためバックエンドシステムを挟んで運賃金額の計算などを実施。結果、「公共交通機関でも利用に耐えうる仕組みを構築しました」(今田氏)と説明している。

  • 公共交通機関での決済処理の違い

  • Visaのタッチ決済の導入のメリット

最後に、今田氏は「弊社は国際ブランド。究極的には、Visaのタッチ決済に対応したカードが1枚あれば世界中どこでも過ごせる、そんなサービスの実現に向けて取り組みを進めています」と説明していた。

  • Visaのタッチ決済に対応したカード1枚で、世界中どこでも過ごせるように

国内市場は還元キャンペーン合戦だが

記者団の質問に、寺尾氏、山田氏、今田氏が対応した。

キャッシュレス決済の国内市場は現在、PayPayやd払いなど各事業者が利益を削る還元キャンペーン合戦になっているが、という質問に寺尾氏は「(決済ツールは)認知向上が大事だと考えています。より多くの人に知ってもらい、継続的に使ってもらう。そのために店舗で一度、利用してもらうキャンペーンもひとつの手段です。ただ、継続的に使ってもらうためには様々なアクティビティが必要だと考えています」と考えをのべた。

東京オリンピックも普及の契機になるか、という質問には「他国でオリンピックが開催されたときも、Visaはパートナーシップとしてサポートしてきました。最も先進的で、かつその国のマーケットに合った決済手段を提供する良い場として考えてきたからです。日本においてもタッチレスがキャッシュレスの取り組みに貢献していく、ということを皆さんにご理解いただける良い機会と考えています。現状を踏まえると、インバウンドに関して不透明なところはありますが、中期的に見ても、来日した人が母国で使っている決済手段をそのままスムーズに日本でも使えれば、経済の活性化につながる。その観点でも、オリンピックを契機にさらにタッチ決済を利用者、加盟店の両方の立場で拡大していくことが大事だと捉えています」と寺尾氏。

現状、クレジットカードのタッチ決済は日本では認知度が低く、それを導入している店舗スタッフも知らないケースがあるが、という質問に山田氏は「店員さんの認知は重要な課題です。今後も認知度の向上がベースになりますが、事業者さんにおいては、ロゴの掲示も大切だと感じます。広島の地方スーパーでは、ロゴをしっかり掲示したことでたくさんの人に使ってもらっている。そういった意味で、地域の大手店舗、中小事業者さんにロゴを貼ってもらう活動を、アクワイアラ(加盟店の契約獲得と管理を行う企業)さんらと一緒にやっていきたい。またプレゼンでも紹介しましたが、そこまで認知が進んでいないスタッフでも取り扱えるよう、レジ端末の仕様を変えていく。お客さんに『カードで』と言われ、ボタンを押せば決済できる状態になる、そんなところまで手当てしていければ」と話していた。