高度に発達し、自我を備えた人工知能(AI)と人間との"共存"や"理解"そして"対立"を描いた特撮テレビドラマ『仮面ライダーゼロワン』(2019年-2020年)の"その後"のストーリーを描いた『劇場版 仮面ライダーゼロワン REAL×TIME』が、『劇場短編 仮面ライダーセイバー 不死鳥の剣士と破滅の本』との同時上映で2020年12月18日より全国劇場にて公開される。

  • 鶴嶋乃愛(つるしま・のあ)。2001年生まれ、高知県出身。2013年よりファッションモデルとなり、2016年4月から2020年8月までティーン誌『Popteen』(角川春樹事務所)の専属モデルとして活躍した。『仮面ライダーゼロワン』のヒロイン・イズ役で女優デビューを果たし、今後のさらなる活躍が期待されている。撮影:大門徹

『劇場版 仮面ライダーゼロワン REAL×TIME』は、本来テレビシリーズ放映中の2020年夏に公開される予定で製作が進められていたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で製作スケジュールが例年よりも遅れたため、テレビシリーズが最終回を迎えた後に改めて脚本を練り直し、「最終回の"その後"」の時間軸でストーリーが展開することになったという。

「楽園を創造する」と語る謎の男エス/仮面ライダーエデン(演:伊藤英明)は無数の信者とともに、世界中で大規模な同時多発テロを引き起こした。世界が大混乱に陥る中、エスを止めるため、仮面ライダーゼロワン/飛電或人(演:高橋文哉)が立ち向かう……。

今回は、或人の社長業をさまざまな面からサポートし、日々のスケジュール管理や衛星ゼアの情報受信など、膨大な業務を完璧にこなす秘書型ヒューマギア「イズ」を演じる鶴嶋乃愛にインタビューを行った。「ヒューマギアを心の底から"笑顔"にしたい」と夢見る或人にのもっとも身近で接しているためか、回を重ねるごとに人間らしい"感情"を表すことが多くなったイズは、演じる鶴嶋の愛らしいたたずまいや、繊細な表現力もあって多くのファンを生み出し、『ゼロワン』屈指の人気キャラクターに成長した。そんな鶴嶋に、映画でのイズがどのような活躍をするのか、そして1年間にわたるテレビシリーズ撮影の思い出、イズの人気ぶりを実感した出来事を語ってもらった。

――優秀な秘書であるだけでなく、或人社長がハイテンションな"ギャグ"を放ったあと極めて冷静に"説明"を行い、「とても面白いジョークです」とフォローまでしてくれるかわいいイズは、放送が開始されるやたちまち人気キャラクターとなって話題を集めました。演じる鶴嶋さんは、イズの評判をどんなところから知りましたか?

毎回の放送後は、イズちゃんのどういうところがファンのみなさんに"刺さって"いるか気になるので、よくTwitterで検索していろいろなコメントを拝見していました。1年間にわたって、毎週イズの名場面や名セリフを盛り込んだイラストを描いてくださる方もいらして、いつも楽しみにしていました。

――放送中に、何種類もの「イズ・フィギュア」が発売されたのも、イズの人気の高さを如実に示す事象だったと思います。これについても、どのようなご感想を抱かれていますか?

それはもう、とてもうれしいことだと思っています。バンダイの方から「仮面ライダー以外のキャラクターフィギュアが作られ、発売されるのはすごく珍しい」と言っていただきましたし、そんなことを聞くと素直に「やったー!」なんて喜びがわいてきます。いただいたイズちゃんフィギュアはすべて、お家で大切にしています(笑)。

――或人といっしょにイズが「アルトじゃ~ないと!」の決めポーズを取ったり、或人の言葉を受けて無言でリアクションをしたり、何気ない場面であってもイズの存在感がとても大きなものになりましたが、ああいったイズの印象的な"動作"はどうやって生まれるのですか。

けっこう自分で考えることが多かったんですよ。途中のエピソードあたりから、監督がイズでいろいろ遊んでくださるようになって、台本に書いていない場面でも「イズ、そこで何かやってみて」みたいに言われて、何をしようかな……って考えるんです(笑)。『ゼロワン』を振り返ると、ストーリー的に重く切ない内容のエピソードが多かったのですが、そんな中で、観ている方たちに"笑い"や"癒し"を届けられるのはイズが出てくるシーンじゃないかなと思い、人間ではない「AI」だからこそ表現できる、ちょっとトボケた行動やコミカルな動作をポイントとして入れるようにしていました。

――台本にないイズの演技で、特に印象的なものがあったら教えてください。

第19話でイズが「舌打ち」したときは、すごく反響がありました。ZAIAエンタープライズとの「お仕事5番勝負」で「住宅販売対決」をする際、ヒューマギア・住田スマイルを紹介したら、相手側の新屋敷達己から「ダッサ……」と罵られて、思わずイズが「チッ!」みたいな口の動きをするんです。あれって、石田秀範監督が初めて『ゼロワン』に入られた回で、しかも撮影開始の1シーン目だったんですよ。監督から「イズ、そこで舌打ちやってみて」っていきなり言われました。それまでのイズは舌打ちなんてしたことありませんから「ええっ、ウソでしょ!?」と思いつつ、とにかく言われるとおりに演技してみたんです。そうしたら監督が「いいね!」って褒めてくださって……。実際に放送で使うかどうかはわからないけど、一応撮っておこう、みたいな話になってたんですね。ですから、放送されるとわかったときもかなり驚きましたが、見事に話題になってくれたので、よかったんだなって思いました(笑)。

――視聴者が思わず笑顔になるくらい愛されキャラだったイズだけに、第42話で迎えた結末には、劇中の或人ならずとも深い悲しみを覚えたファンの方たちも多かったと思います。あの場面については、どんなご苦労がありましたか。

演技については気持ちをこめていたので問題なかったのですが、皮膚が破れて中の機械がむき出しになった顔の特殊メイクが大変でしたね。特殊メイクそのものはそれほど苦ではなかったんですけど、メカ部分を顔に貼りつけているのでまったく表情が作れず、口もほとんど動かせなかったのには参りました。もちろんご飯も食べられないですから、食事は特殊メイクの前に済ませて臨みました。