ビジネスメールなどでよく使われる「拝受いたしました」という言い回しは、日常会話には登場する機会が少なく、使い慣れない人が多いです。「拝む」「受ける」「いたす」という3種類の言葉から成り立っていることから大体の意味は推測できるかもしれませんが、正確な意味はあまり知られていません。

この記事では、「拝受いたしました」の意味やビジネスでの正しい使い方・メール例文、類語・言い換え表現などを紹介します。あわせて誤った使い方についても解説するので、ぜひ参考にしてください。

  • 「拝受いたしました」の成り立ちと意味

    「拝受いたしました」の正確な意味や使い方を紹介します

「拝受いたしました」の意味とは?

「拝受」とは、受け取ることをへりくだってあらわす、謙譲語のひとつです。頭を下げて拝むことを意味する「拝」と、受け取ることをあらわす「受」から成り立っており、両方の漢字の意味をあわせた言葉となっています。「いたしました」は、「する」の謙譲語である「いたす」の過去形です。

「拝受」と「いたしました」が一緒になった「拝受いたしました」は、「つつしんで受け取りました」という意味の謙譲語になります。

「拝受いたしました」は二重敬語?

本来、同じ種類の敬語を重ねて使用すると、二重敬語になり誤った使い方になってしまいます。「拝受いたしました」も本来は誤った使い方ですが、通例的に使われており、問題ないとされることが多いです。

ビジネスメールや手紙を受領する際に使う

「拝受いたしました」という言葉を使うのは、何かを受け取るときです。具体的には、メールを受信したときや、郵送物を受け取ったときなどに使われます。かなりへりくだった言い回しですので、同僚には使わずに上司や取引先などに使用する言葉です。

  • 「拝受いたしました」の成り立ちと意味

    「拝受いたしました」とは、「つつしんで受け取った」という意味を持つ敬語表現です

「拝受いたしました」の正しい使い方・メール例文

「拝受いたしました」という言い回しは、ビジネスシーンで活用しやすいので覚えておくと便利です。ここでは、実際にビジネスメールで使える具体的な例文を紹介していきます。

メールを拝受いたしました

<例文>

先ほどメールを拝受いたしました。
早々にお返事いただきありがとうございました。
社内で検討後、追って連絡させていただきます。

「メールを拝受いたしました」は、メールを受け取った際の返信メールに使えるフレーズとして覚えておきましょう。

先ほどご注文書を拝受いたしました

<例文>

先ほどご注文書を拝受いたしました。
当社倉庫に在庫がございますので、○○日までにご送付いたします。
ご注文誠にありがとうございました。

「先ほどご注文書を拝受いたしました」は、注文を受け取った際のお礼のメールに使えるフレーズです。返信メールに定型文として入れておいても問題ないので、うまく活用してください。

お送りいただきましたカタログを拝受いたしました

<例文>

先日お送りいただきましたカタログを拝受いたしました。
社内で検討後、注文書を送付させていただきます。
何卒よろしくお願いいたします。

こちらからカタログなどを送ってもらうよう依頼していて、受け取った場合にも「拝受いたしました」は使えます。例文を参考に、お礼のメールに組み入れてみてください。

  • 「拝受いたしました」の使用例

    「拝受いたしました」の具体的な使用例や使用シーンを紹介しました

「拝受いたしました」の類語・言い換え表現

「拝受いたしました」の「拝受」にはいくつか似た意味の言葉があり、言い換え可能です。そこで、「拝受」の類語・言い換え表現を紹介していきます。

頂戴

「頂戴(ちょうだい)」にはいくつかの意味があります。「もらうことやもらって飲食することの謙譲語」という意味もあり、「拝受」と同じように使えます。

ただし、「頂戴いたしました」という表現は二重敬語であり、本来は誤った使い方ですので「頂戴しました」と表現しましょう。

拝領

「拝領」とは、目上の人から物をもらうことをあらわす言い回しです。受け取ることを意味する「領」を用いていますが、「受」に比べて「もらう」意味に寄っています。

目上の人から物をもらって受け取る場合なら、「拝受」を「拝領」で言い換えても問題ありません。

査収

金銭・物品・書類などを、よく調べて受け取ることが「査収」です。相手に受け取って欲しいときに使う言葉であり、自分の行動としてはあまり使われません。

「ご査収ください」「ご査収の程よろしくお願いいたします」などの言い回しを用いることで、相手に対してよく調べて受け取ってくださいという意味を伝えられます。目上の人に用いても問題ない言葉ですので、覚えておくと使い回しできる言葉です。

関連記事: ご査収の意味とは? 目上の人に「ご査収ください」はOK? 使い方や例文を紹介

受領

「受領」とは、金品を受け取ることをあらわします。尊敬語・謙譲語ともに使える単語ですので、迷ったときに使う言葉として覚えておくと便利です。

尊敬語として使う場合には、「ご受領ください」「ご受領をお願いします」などの言い回しで使用します。謙譲語として使う場合には、「受領いたしました」などの言い回しが自然です。

関連記事: 「受領いたしました」の意味は? 例文と共に正しい使い方を徹底解説

  • 「拝受いたしました」の類義語

    「拝受いたしました」は類義語として言い換えできる言い回しが多いです

「拝受いたしました」の間違った使い方

一見「拝受いたしました」と似ていても、少し使い方を間違えると誤った言い回しになってしまうことがあります。そこで、「拝受いたしました」と似ていても間違っている言い回しを紹介します。

ご拝受ください

「拝受」は自分がへりくだる謙譲語表現です。一方「ください」は「くれる」の尊敬語表現で、相手に物や行動を請求することを意味します。

「ご拝受ください」だと、相手に対して謙譲語を使うこととなり、失礼になってしまいますので、誤った言い回しです。

ご拝受いたしました

「拝受いたしました」は謙譲語表現として成り立っている言い回しです。謙譲語に「ご」をつける場合はありますが、「拝受いたしました」に「ご」をつけると過剰な敬語となってしまい、不自然な印象を与えてしまいます。「ご」をつけずに「拝受いたしました」のみで使うようにしましょう。

拝受していただけますか

「拝受」は謙譲語なので、自分の動作をあらわす言葉として用います。相手の行動に対して使うと、失礼になってしまうので「拝受していただけますか」は誤った言葉です。

相手に受け取って欲しい場合には、「お受け取りくださいますか」「ご受領いただけますか」などの言い回しを使ってください。

  • 「拝受いたしました」に似た言い回しNG例

    「拝受」が謙譲語であることに注意して誤った使い方にならないようにしましょう

「拝受いたしました」を正しく使いこなそう

「受け取りました」の謙譲語である「拝受いたしました」は、ビジネスシーンでしばしば使われる言い回しです。メールや郵便物、対面で資料を受け取った場合など、「拝受いたしました」を使うことで、相手に対する敬意をあらわして受け取れます。

一般的な敬語表現ですので、取引先からメールを受信した場合の定型文に加えておくのもいいでしょう。また、「頂戴」や「受領」など、似た意味で使える言葉も多いですので、一緒に覚えておくと語彙が増えます。

ただし、「拝受いたしました」は謙譲語ですので、尊敬語と組みあわせてしまうと誤った言い回しになってしまいますので、注意しながら使いましょう。

「拝受いたしました」は、取引先や上司との会話やメールで使いやすい言い回しですので、覚えて活用してください。