来年(2021年)に開催が延期された東京2020大会。その聖火リレーが100日後にスタートするということで、都内では12月15日、東京2020組織委員会が聖火リレー実施の市区町村およびセレブレーション会場をあらためて発表した。またオンライン会議システムを通じて、東日本大震災で被災した東北3県の代表者が聖火リレーに込めた思いを語っている。

  • 今年3月にギリシャのアテネから運ばれた聖火。現在は国内で大切に保管されている(写真は、日本オリンピックミュージアムにて8月31日に撮影したもの)

    今年3月にギリシャのアテネから運ばれた聖火。現在は国内で大切に保管されている(写真は、日本オリンピックミュージアムにて8月31日に撮影したもの)

大会の機運を醸成へ

東京オリンピックの聖火リレーは2021年3月25日に福島県のJビレッジを出発し、121日間にわたり、全国の人々の様々な思いを乗せて日本列島をかけめぐる予定となっている。登壇した常務理事(副事務総長)の布村幸彦氏は「基本的には、延期前と同じ内容です。聖火リレーは全国859市区町村で実施、1日の終わりに聖火の到着を祝うセレブレーションはトータルで113日間実施します」と説明する。

  • 常務理事(副事務総長)元文部科学省スポーツ・青少年局長の布村幸彦氏(Tokyo 2020提供)

    常務理事(副事務総長)元文部科学省スポーツ・青少年局長の布村幸彦氏(Tokyo 2020提供)

東京2020組織委員会では2021年2月頃を目処に、詳細ルートの地図情報を公式Webサイトで公表する予定。各都道府県とも協力して、どこを走るのか、道路レベルの詳細なルートを明らかにしていくとしている。なお12月15日の17時30分から、東京スカイツリーを聖火トーチの色である「桜ゴールド」にライトアップし、大会に向けた機運を醸成していく考えだ。

復興五輪 - 聖火リレーへの思い

ここで4名のゲストがオンラインで紹介された。

福島県代表として、Jヴィレッジ専務取締役の鶴本久也さんは「(今春まで)ナショナルトレーニングセンターで聖火リレーの準備が進んでいく様子を見てきたので、3月に延期が発表されたときは社員全員で落胆しました。でも世の中の状況を考えれば、やむなしだった」と、まずは素直な気持ちを明かす。その後、Jヴィレッジでは聖火の展示なども行い、多くの来場者があったという。そして「来年、無事にオリンピックが開催され、全国が熱気と感動であふれることを楽しみにしています。震災からまる10年が経とうとしていますが、被災地が元気に前を向いている様子を、聖火リレーを通じて国内外の人に見てもらえたら嬉しいです」と話していた。

岩手県代表として、三陸鉄道の社員である千代川らんさんは「聖火リレーは、今しか見られない被災地の”復興途中”の姿を見ていただける、貴重な機会になります。被災した海岸線も、少しずつ綺麗になってきました。三陸鉄道でも1歩ずつですが、復興に向けた歩みを進めています。東京オリンピックは、世界中から注目される一生に一度の機会。地元住民としても、楽しみに思う気持ちでいっぱいです」。これを契機に多くの人に福島まで足を運んでもらい、美味しい食べ物を楽しんでもらたら、と話していた。

  • 4名のゲストが聖火リレーへの思いを語った(Tokyo 2020提供)

    4名のゲストが聖火リレーへの思いを語った(Tokyo 2020提供)

宮城県代表として、元フェンシング日本代表の千田健一さんは「震災では、気仙沼市も大きな被害を受けました。当時は『もう復興は難しいのでは』と立ち直れない思いがありましたが、国内外の多くの方々にご支援いただき、復興の道筋を立てることができました。東京オリンピックは、復興五輪という意味合いもあります。今回、聖火リレーを走る機会をいただけたので、復興に向けて頑張っている気仙沼市の皆さんの気持ち、そして支援してくださった方々への感謝の気持ちを込めてしっかりと走りたいです」。

また開催都市である東京都を代表して、東京1964大会で聖火ランナーを務めた遠藤良宏さんは「中学時代に恩師から『聖火ランナーをやってみないか』と言われ、二つ返事で引き受けたのがきっかけでした。当日は、沿道にたくさんの人が訪れており、びっくりした思い出があります。私は中学校で教員をしてきましたが、当時の話をすると、興味を持って聞いてくれる生徒も多かった。東京大会で聖火ランナーを務めたのは私の誇りであり、心の財産でした」と振り返る。そんな遠藤さんだが、来年の聖火リレーもランナーを務めることになった。「かつての同僚には『2度目は走らないんですか』とよく聞かれました。50年ぶりに電話してきてくれた人もいた。みなさん、関心を持っていることが分かります。しっかり聖火がつながっていけば良いと思っています」と話していた。

  • 聖火リレーに使われるトーチ

    聖火リレーに使われるトーチ

聖火リレーのコロナ対策は

このあと質疑応答で、記者団からコロナ対策について聞かれた布村氏は「聖火リレーにおいても、観客、ランナー、運営スタッフ、地域住民の方々の安心安全の確保を大きなテーマとして、しっかりとした感染症対策を実施していきます。聖火リレーのコンセプトとしてHope Lights Our Way(希望の灯火で道を照らそう)ということを掲げていますが、ランナーの笑顔、また沿道の方々の笑顔を通じて『楽しい待ちに待ったオリンピック・パラリンピックが来るんだ』という気持ちが、全国に伝わることを願って聖火リレーを実施していきます」と説明した。

なお基本的には延期前に決まっていたランナーが走る見込みで、聖火ランナーは約1万人にのぼる。いま最終的な段取りを進めているという。またコロナ対策として、簡素化できる部分はできるだけシンプルにしていきたい、とも説明していた。