朝ドラ『わろてんか』で恋愛も妻役も長期間、経験済みだったが、葵本人の中では『わろてんか』での経験を恋愛ドラマや妻役で意識していなかったゆえに「あまり経験がない」と受け止めていたが、『わろてんか』での経験は今回の作品に生きていると言う。

「自分のキャリアの中で夫婦役の第1弾が『わろてんか』でした。今回、それ以来の夫婦役です。奥さん役の経験が少なかったので難しい部分はあったのですが、恋人だった人たちが家族になっていく、恋人と家族の違いみたいなものは、朝ドラでちゃんと年を追って演じていた経験は大きかったかもしれないです」

その『わろてんか』。朝ドラという幅広い世代の人が見ているドラマに出演した経験、そして、1人の人生を長く演じた経験は大きかったという。

「朝ドラを経験していないことを想像できないくらい、考え方も演じ方も、現場での振る舞い方も、いろいろな価値観が大きく変わったような経験でした。ものすごく影響はあると思っています」と、朝ドラ出演によって女優として成長できたと実感している。

特に変わったことは現場でのスタンス。「そんなに大それたことは言えないのですが(笑)」と前置きした上で、「朝ドラを経て物事を見る時の距離感が変わりました。例えば、スタッフさんのことも朝ドラ以前は大人の方たちとして見ていましたが、朝ドラを経た今は一緒に挑んでいるチームだと思うようになり、積極的に関係をつかもうとしていけるようになりました。それまでは遠慮して話せなかったんですけど、いろんなことをディスカッションしたりできるようになりました」と明かす。

それは演技の技術というよりも、女優としての自信につながった。「朝ドラをやり遂げられたことは自信になっていて、何か一個責任を果たせたことはすごく大きかったと思います。みなさんのために頑張りたい、1人で作っているわけではないと感じることが多かったので、本当に助けてもらってばかりでしたが、そのみなさんに何ができるのかを考えられるようになりました」

その経験が『年の差婚』の現場で生きているか尋ねると、「と、思います!」と葵は目を輝かせる。

「舞衣子さんのキャラクターは原作が印象的だったので、髪型、髪色、メイク、衣装など、それぞれのスタッフさんと細かくお話させていただきました。今までメイクについてのやりとりなどはしたことなかったのですが、自宅で試しに自分が思う舞衣子の顔をメイクしてみてから、アイシャドウの雰囲気や、マスカラなども相談してみたり、衣装やアクセサリーも、キラキラしているものより、かわいいキャンディーっぽいピアスをつけたほうが舞衣子っぽい感じがするので、『どうですか?』と提案してみたり、より役が深められたような気がします。外側のビジュアルが舞衣子っぽくなると、のびのびお芝居できるような自信も生まれて、すごく助けられました」

そして、『年の差婚』での長回しの撮影、自分の意見を積極的に言う経験などを経て、女優という仕事の意味合いや理解が昔と今ではまったく違うものに。

「よりそのキャラクターになっていく、演じるというよりも、もっと理解したいという気持ちが強くなった現場でした。そのためにできることはたくさんあり、準備の段階で、もっともっとすることがたくさんあるなと。それがきっと作品のためにもなると感じることができ、今までとは違うなと思います」と変化を明かした。