有名な温泉地である「ゆふいん」。温泉宿の名前を見ると「湯布院」「由布院」と表記が異なっています。漢字が変わると場所さえも違いそうで混乱してしまいますよね。そもそもどうしてこのような2つの表記があるのでしょうか。

本記事では「由布院」と「湯布院」の違いやその地名が生まれた歴史についてご紹介します。

  • そもそも「ゆふいん」とは?

    意外と知らない地名の表記の違いや、ややこしい地名が生まれた背景をご紹介します

そもそも「ゆふいん」とは?

「由布院」と「湯布院」の違いについて解説する前に、そもそも「ゆふいん」とはどのような温泉地なのかおさらいしてみましょう。豊かな自然の中で落ち着いて過ごすことのできます。

大分県由布市湯布院町にある温泉郷

ゆふいんとは大分県の中央部、由布市湯布院町にある温泉郷のことです。大分県にある活火山「由布岳(ゆふだけ)」の麓に広がる温泉地帯で、温泉湧出量・源泉数は全国2位となっています。「東の軽井沢、西のゆふいん」と称されるほど人気で、女性も多く集まる観光地です。

2005年には湯布院を舞台としたNHKの連続ドラマ小説『風のハルカ』でも注目されました。

国民保養温泉地としても指定されている

ゆふいん温泉は1959年5月に国民保養温泉地として制定されました。国民保養温泉地とは温泉法にもとづき「温泉利用の効果が期待され、かつ健全な温泉地としての条件を備えている」と環境大臣が指定する温泉地のことです。

温泉の効能や温泉地の健全性、街並みなどが評価の対象とされており、湯布院温泉郷はそのチェックにも通った由緒正しい温泉地となります。

  • そもそも「ゆふいん」とは?

    ゆふいんは日本有数の温泉地です

もともとは由布院だった

「由布院」と「湯布院」。いざ行ってみようと検索すると、地名やホテルの表記の仕方がそれぞれ異なることに驚いてしまう方も少なくありません。実際の地名も大分県「由布市」「湯布院町」といささか紛らわしいですよね。

そもそもゆふいんは由布院、由布院温泉として知られていました。では、なぜ今のような表記になっていったのでしょうか。

「由布」の由来

「由布」の由来には諸説ありますが、ここでは代表的なものをご紹介ます。

現在の由布院にあたる地方では昔「たく」と呼ばれる木が多く生えていたと言われています。「たく」から作る木綿のことを当時は「ゆふ」と呼んでいたそうです。豊後国風土記には「此の郷之中に栲樹多く生す、栲の皮を取り、以て木綿(ゆう)を造れり、因りて柚富(ゆふ)郷」と曰ふ」という記述があります。この柚富郷が現在の「由布院」の語源です。

北由布村と南由布村に分かれていた

明治22年には北由布村と南由布村、湯平村が発足しました。さらに昭和11年には北由布村と南由布村は合併し、「由布院村」となりました。このことからも「ゆふいん」の「ゆふ」は当初「由布」であったことがわかります。

  • もともとは「由布」院だった

    その地方で作られていた木綿から「ゆふ」という名がつけられたと言われています

2つの名称が生まれた背景

現在ゆふいんと呼ばれている温泉地は当初「由布院」地方であったことがわかりました。ではここから、なぜ「湯布院」という名称がさらに生まれたのでしょうか。この地方の合併の記録を追うとその背景が見えてきます。「由布院」と「湯布院」の名称が生まれた背景についてご紹介します。

昭和30年の湯平村との合併で「湯布院町」が生まれる

昭和11年に村として誕生、昭和23年には町となった「由布院」でしたが、その後昭和30年に再び合併が行われます。合併の対象は隣にあった湯平村でした。その際、「由布院」の「ゆ」を「湯平市」の「湯」に変えた「湯布院町」が誕生しました。

平成17年の合併で「由布市湯布院町」が生まれる

昭和の度重なる合併により「由布院」と「湯布院」という2つの表記が生まれました。さらに平成17年、いわゆる「平成の大合併」で大分県庄内町、挾間町、湯布院町が合併し「由布市」となりました。

これにより由布院温泉や由布院駅のある「湯布院町」は「由布市」に属することになり、「大分県由布市湯布院町」というそれまでの土地の歴史を知らない人にはいささか難しい表記の住所となったのです。

  •  2つの名称が生まれた背景

    何度も合併を繰り返したことにより、由布院と湯布院という異なる表記が生まれました

「湯布院」と「由布院」の違いは?

由布院は湯平村との合併により「湯布院」という表記が新しく生まれたことがわかりました。しかし現状も「湯布院」と「由布院」は統一されていません。旅館などではどちらの表記も変わらず使われているようです。表記が異なっていると、まるで違う地名のようで不安になってしまいますよね。

では現在、「湯布院」と「由布院」はどのように使い分けられているのでしょうか。

どちらも間違いではない

結論としては、「由布院」と「湯布院」はどちらも間違いではなく、どちらも使用されています。旅館や施設によって表記が異なる場合もありますが、大きな位置の違いなどもないので気にしなくてもいいでしょう。

先ほどご紹介した「国民温泉保養地」でも「湯布院(由布院・湯平)」として登録されています。「由布院」も「湯布院」も歴史上存在した地名であり、今も変わらず使い続けられているので、気にせず好きな方を使用しても何も問題はありません。

ちなみにゆふいん温泉郷のあるJRの駅名は「由布院」駅となっており、現在JR「湯布院」駅はありません。

湯平町を含めると「湯布院」、含めないと「由布院」

「湯布院」でも「由布院」でも間違いではありませんが、昔からこの地方に住んできた方は使い分けをしています。「湯布院」は「旧湯平町」が合併して生まれた地名です。そのため地元の人は湯平町だった地域を「湯布院」、湯平町ではなかった地域を「由布院」と呼び分けているようです。

ただし、新しく由布院地方に住む人などは正確に呼び分けているわけではないようで、最近ではあえて「ゆふいん」と平仮名で表記する施設も増えてきています。

  •  「湯布院」と「由布院」の違いは?

    最近では平仮名で「ゆふいん」と表記することも増えてきました

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ゆふいんは大分県由布市湯布院町にある日本有数の温泉地です。由布市湯布院となかなかややこしい地名で、旅館なども「湯布院」と「由布院」と今でも表記が分かれています。これには昭和から平成にかけて何度も行われた合併が関係しています。

由布院と隣にあった湯平とが合併したことにより両者の地名をとった「湯布院」という表記が生まれました。今もその歴史を知る人たちは湯平町の場所を「湯布院」それ以外を「由布院」と呼び分けていますが、だんだんとそれを知る人も少なくなり、今では「ゆふいん」と平仮名で表記されることも少なくありません。

一見難しい2つの地名ですが、それにはこの土地の歩みが込められているのですね。