初版とはどのような意味があるのかご存知でしょうか。この記事では初版の本来の意味や初版本の価値に焦点を当てて、初版の意味と価値を解説します。

  • 初版とは

    たびたび耳にする「初版」とはどのようなものなのでしょうか

初版とは

初版とはその名の通り、最初に発行された「最初の版」です。「第1版」と表現されることもあります。同じ初版の中でも一番はじめに発行された分は「第1刷(だいいちずり)」「初刷(しょずり)」といい、厳密に初版といえば「第1版第1刷」あるいは「初版第1刷」のことを指します。

「刷」とどう違う?

「版」は原版のことを指します。「刷」は同じ「版」を発行、つまりコピーした回数のことです。原版という言葉は今日ではあまり目にすることはありませんが、かつて書物が鉛板や木板に文字を彫り、そこにインクを塗って紙に写すという作業をおこなって作られていたことに由来しています。

原版とは最初に彫られた板のことを指します。内容に修正があった場合、元となる板を彫り直す必要があるため、第2版、第3版と更新されていくのです。

一方「刷」は同じ内容で発行する、内容をそっくりそのままコピーする回数のことです。1回目の発行は第1刷、2回目は第2刷、と回数を追うごとに数字は更新されていきます。そのため初版第1刷、初版第2刷というように初版の中だけでも発行回数が更新されることもあります。初版が更新されて第2版となると、第2版第1刷からまた数え直しということになります。

「重版出来」の意味

「重版出来(じゅうはんしゅったい)」という言葉があります。同名のドラマで広まった言葉ですが、これは初版の中で何度も何度も同じ版の発行が重ねられることを指します。これは次々に発行しないと在庫がないために起こる現象です。つまり次の版を出版する前に本の売れ行きが好調であるということを示しているのです。出版社としては「重版出来」する方が売上を得ることができ、嬉しいものとなるでしょう。

  • 初版とは

    昔の発行技術の名残だったのですね

初版本が貴重といわれる理由

初版本と聞くと、貴重なものという世間的イメージが強いのではないでしょうか。初版本が貴重とされるのには、大きく4つの理由があります。

世に出回っている数が少ない

初版本は前述したように、初版の中の第1刷です。そのあとその本が何度も発行され量産されても、「初版第1刷」は限られた数しか存在しません。数が限られ、世に出回っている数が少ないからこそ初版本は貴重なのです。

完全オリジナル

物理的な量という価値を抜きにしても、初版本はまったく訂正が入らず著者の想いがそのまま残っている「完全なオリジナル」です。発表当時の作者の言葉は、そのときそのシチュエーションでしか書けなかったものです。想いが残っている、ということが文学的・思想的に初版本の価値を高める要因でもあります。また、初版は出したものの抗議などでそれ以上の発行を許されず、初版で発行した分のみ世の中に存在するとなったときも、初版本の値打ちは上がります。

帯も初版

本には帯がつきますが、初版本の場合は帯も世に出回っていない可能性が高いといえます。帯に「たちまち重版!」の文字が入ったり、一度読んだ著名人の推薦文が載せられたりするのを目にしたことはないでしょうか。そういった帯は大抵、あとに発行された本につけられています。誰も読んだことのない初版本にはそういった帯がつくことはなかなかありません。帯も完全に初版となると、その値打ちは格段に上がるでしょう。

著者のサインが入っていることも

初版本には著者のサインが入っていることもあります。すでに大物作家であれば値が上がるのはもちろん、出版当時は売れていなくてもあとに人気が出た場合など、サインのある初版本はプレミアとなり高値がつくことが期待できるでしょう。

  • 初版本に価値がつく条件

    今持っている本の中にも初版本が眠っているかもしれません報

初版本に価値がつく条件

しかし、初版本であればかならず値打ちがつくとも限りません。初版本の中でも特に値打ちがつく条件についてまとめました。

初版本の見分け方

初版本かどうかは、本の一番後のページにある発行情報を見ればわかります。「初版第1刷」とあれば最初に刷られた初版本ということになるので、もちろん値打ちは高くなります。初版でも2刷以降は若干値段が下がることもあるでしょう。

保管状況

どのような中古品でもそうですが、保管状況が悪く品質が落ちているようではそれが初版本でも値打ちは下がります。熱心なコレクターであれば状態のいい初版本を手元に置いておきたくなるもの。初版本かつ保管状態が良いものであれば、初版本に価値を見出す人は高値をつける可能性が高いでしょう。

保管年数

紙の本は傷みやすいものです。そのため、保管年数は本の値打ちを高めるのに重要な要素のひとつといえます。特に初版本ともなれば、発売された時期から時間が経てば経つほど、その期間を良い状態で保ち続けたことに値打ちがつくでしょう。

人気の作家は売れにくい?

人気の作家の作品であれば、初版本は高く売れると思われるかもしれません。しかし、実は人気の作家の初版本は高い値では売れにくいのです。前述したように初版本の値打ちが高まるのは、初版本が世の中にあまり流通していないためです。

通常、本は初版をある程度の部数発行し、購入希望が多く在庫が不足してきたら第2刷を発行する、というように量産されていきます。発行回数が多いほど人気のある作品と判断することができるでしょう。

人気の作家となると初版も発売時点で多くの人が買い求めることがわかっています。そのため初版の段階から多くの部数を発行します。結果的に世の中に流通する絶対数が多いため、初版であっても量産本と同程度の値打ちになってしまうのです。

  • 初版本に価値がつく条件

    たくさん発行されていると値打ちは上がりにくい

高値がつきやすい・つきにくい初版本

初版本とひとくちにいっても、本の状態にかかわらずジャンルによって高値がつきやすいものとそうでないものがあります。

料理本や専門書は価値が出にくい

料理本や専門書は、一見値打ちのある本に思えるかもしれませんが、実は性質上初版本としての価値は出にくいとされています。一般的に重版は初版の内容に修正があったときにおこなわれますが、料理本や専門書は内容が新しい方が、値打ちがあります。そのため情報が古くなった初版本は高値がつきにくくなってしまいます。

古書は高値がつく傾向にあるとはいえ、専門書や学術書は読む人が限られるという点でも、高値がつきにくいとされています。

小説や漫画は高値がつきやすい

歴史的価値の高い本の初版本に高値がつくのはわかりますが、小説や漫画に高値がつきやすいというのは少し不思議に思われるかもしれません。

小説や漫画は1冊のみだと高値もつきにくいですが、シリーズものなど巻数が多い作品はそろっていると値打ちが上がります。すべて初版本で巻数もそろっており、かつ美品ともなるとコレクション的な値打ちも上がるので高値で売れやすくなるでしょう。

小説の初版本は前述したように、発売当時の著者の想いが込められているという点でも高値で取り引きされやすいといえます。

  •  高値がつきやすい初版本

    もしかしたらその本、プレミアかもしれません

初版本を探してみよう

初版の意味や初版本の価値についてまとめました。初版とは一番はじめに発行された本のことをいい、歴史ある古書に限らず小説や漫画といった身近な本でも、初版本であれば値打ちが上がる可能性があります。

もしかしたら家の本棚にも、高値を持つ初版本が眠っているかもしれませんね。