女優の杉咲花が主演を務めるNHK連続テレビ小説『おちょやん』(総合 毎週月~土曜8:00~ほか)が、30日よりスタートする。ヒロイン・竹井千代(杉咲)の父・竹井テルヲを演じるトータス松本がこのほど、朝ドラ初出演の心境や撮影の感想を語った。

  • 『おちょやん』ヒロイン・竹井千代の父・竹井テルヲを演じるトータス松本

トータスは、大河ドラマは『龍馬伝』(2010)と『いだてん~東京オリムピック噺~』(2019)の2作に出演しているが、朝ドラは今回が初出演。「“朝ドラ”に出演するとは思ってもみなかったので、正直に言えば躊躇しました」と打ち明け、「“朝ドラ”は、家族全員で毎朝日課のように見ているもので大河ドラマとはまた違いますよね。イメージがまったくわかなかったです。そのなかに自分がいるのが想像できない(笑)。撮影が始まってからも、不思議に思いながら演じていますね(笑)」と朝ドラへの印象を述べた。

103作目の“朝ドラ”となる『おちょやん』は、今なお上方女優の代名詞と言える存在で“大阪のお母さん”として親しまれてきた喜劇女優・浪花千栄子をモデルにした作品。大正から昭和の戦前、戦中、戦後の大阪を舞台に、貧しい家庭に生まれたヒロイン・竹井千代が、女優の道を駆け上がっていく波乱万丈の人生を描く。

トータスが演じるテルヲは、養鶏で生計を立てているが、鶏の世話や家事も娘の千代にまかせっきりのダメな父親。見えっ張りだが気が弱く、世渡り下手。しかし口は達者で女性にはモテる。千代にとっては、憎みきれないトラブルメーカーであり続ける。

トータスは「テルヲは、ひどいお父さんですよ(笑)。台本を読んでいても、この人はいったい何を考えているのだろうと。だらしなくて、どうしようもない。ぼくらは生きていくなかで、家族に対する愛情とか世間体、恩や義理など人との調和を考えていきますが、テルヲはそういうことをあまり考えたことがない人なんでしょうね」とバッサリ。

だが、ダメな父親を演じる楽しさも感じているようで、「千代がテルヲが大事にしている鶏に腹を立て『お父ちゃん、流星丸とうちらと、どっちが大事やねん!』と言われて『そねなもん決まっとるやないけ…流星丸や』というせりふがあるんです。ふだんの自分だったら絶対出てこない言葉なので、こんなこと言って知らんぞーとやきもきするけれど、言い切るテルヲが羨ましくもありますね(笑)。思っていたとしても100%は言えないじゃないですか。それを言い切る。それがちょっと気持ち良かったりもします」と語った。

制作陣からは「『おしん』の伊東四朗さんが演じた作造さんのような、“西の作造さん”になってくれませんか?」と言われたそうだが、「小作農家の作造さんは、一生懸命家族のために働いても働いても報われず、貧乏な暮らしに耐えきれず、娘を奉公に出すことになって…。なにも悪いことしてない、ひたむきに家族のために働いているだけなのに。かたやテルヲって…。完全にテルヲが悪いだけですよ。おまえがちゃんとすればいいんじゃ!」と2人の違いを熱く解説。「作造さんとまったく比較にならないですよ、情けないですね、話が違う(笑)」とテルヲにあきれている。

ヒロインの幼少期を演じる毎田暖乃など、最初は子役が出演。トータスは「最初の現場は、子役もいてわちゃわちゃしていて楽しかったです。子役の皆さんもありがたいことになついてくれました。いまは物語が進んで違う面々なんですけど、以前のわちゃわちゃが懐かしくてね。でもこれが普通の現場なんだよなあと。あれになじんでしまっているから、寂しいですね」と懐かしむ。

また、「共演する役者の皆さんにはリスペクトしかないですね」と言い、「子役の皆さんもふくめて。8歳ぐらいの人生経験でも、あれだけの演技ができるというのは、ぼくには想像ができないですよね。僕はバンドマンですからね、ぜんぜん違う分野からきているから。子役の彼女がこれだけやるんだから、ぼくはとにかく受けてたつという気構えでおろうと思って現場に入っていました」と子役たちの演技を称賛。

ヒロインの杉咲に関しても、「千代役の杉咲花ちゃんとは、2012年の民放のテレビドラマで共演して以来です。その後、いろんなドラマに出演されて、めきめき頭角をあらわし、すごい女優さんになったなあと感心しきりです。なんか親戚の娘さんの成長を見ているような感じですよね。最初から能力の高い方でしたよね」と感心している。

そして、「テルヲが今後だらしなくてどうしようもない父親のままなのか、それとも最後は少しぐらい良い人間になるのか。死ぬ時ぐらいは良い人間でいたいなあと思っていますが、予定調和すぎますかね(笑)。テルヲのこれからを温かく見守ってください」と視聴者にメッセージを送った。

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