宮崎を舞台にした東村アキコ原作、平祐奈主演のコメディドラマ『ひまわりっ~宮崎レジェンド~』が、世界進出に向けてセールス活動していることが分かった。

宮崎県出身の東村アキコが実話をもとに描いたギャグマンガを、いまだかつてない宮崎ローカル色満載の軽快なコメディドラマに仕上げ、原作ファンからも定評がある今作。ローカル局のテレビ宮崎が開局50周年を機に初めて連続ドラマ制作に挑んだ作品で、海外に同局制作の番組を売り込むのもこれが初めてだ。

そこには、“てげてげ”(=宮崎弁で適当)では終わらせない一連の動きには実はある思いが隠されている。開局50周年プロジェクト総合プロデューサーの榎木田朱美アナウンサーが語ってくれた――。

  • 『ひまわりっ~宮崎レジェンド~』に出演する高橋克典(左)と平祐奈

    『ひまわりっ~宮崎レジェンド~』に出演する高橋克典(左)と平祐奈

■宮崎のイメージ向上に手応え

今年6月1日にテレビ宮崎で初放送されて以降、連続ドラマ『ひまわりっ』の快進撃が続いている。見逃し配信サービス・TVerなどを通じて全国で視聴できるほか、国内セールスに成功して、各地の地上波テレビ局でも画面からいっぱいに伝わる宮崎ローカル色ドラマが届けられている。これまで、フジテレビをはじめ19局で放送され、現在は福井テレビで放送中(毎週土曜17:15~)だ。

そんな中、先日発表された「東京ドラマアウォード2020」ではローカル・ドラマ賞を受賞する快挙を果たした。「東京ドラマアウォード」は、作品の質の高さだけではなく、市場性、商業性にスポットをあて、“世界に見せたい日本のドラマ”というコンセプトのもと、世界水準で海外に売れる可能性が高い優秀なテレビドラマを表彰するもので、ローカル制作ドラマを代表して本作が選ばれたのだ。授賞式に臨んだ阿部祐也プロデューサーは「宮崎県をPRすることをテーマに制作したドラマが全国に届き、評価されたことはスタッフ一同この上ない喜び」と感極まった様子だった。

  • (左から)「東京ドラマアウォード2020」授賞式に出席した水主義人プロデューサー(テレビ宮崎)、阿部祐也プロデューサー(同)、平部隆明プロデューサー(ホリプロ)

毎週土曜夕方にテレビ宮崎で放送されている自社制作の情報生番組『U-doki』でこの受賞のニュースが伝えられると、多くの視聴者から喜びの声が届いたという。番組では東村アキコからのコメントも紹介され、「おめでとうございます。ていうか、本当ですか? ウソですよね?」とユーモアを交えながら、「思い入れのある作品をドラマ化できるのはUMK(テレビ宮崎)しかないと思っていました」と締め、彼女の感動の思いが共有された。

開局50周年記念ドラマとして制作された経緯がある本作。実現にあたって事業全体の旗振り役を担い、ドラマにも出演した同局の榎木田朱美アナウンサーも、県民の視聴者に明るいニュースを伝えられたことに喜びを隠せない様子だ。

「県内の皆さんが口々にわが町、わが故郷を舞台にしたドラマが作られたことをうれしいとおっしゃってくれ、県民皆で受けることができた賞だと思っています。また系列の皆さんのご協力で全国各地での放送も実現し、全国で『ひまわりっ』を通じて、宮崎の良さを認知してもらっていることに手応えを感じています。放送から半年経った今でも、ドラマで演じたスナックママ役の名前で『あけみママ!』と呼びかけられることも(笑)。ドラマが届いたと感じる瞬間でもあります」

■「てげてげ」は…宮崎弁の英語翻訳にひと苦労

勢いに乗って、テレビ宮崎は初の海外セールスにも挑んでいる。今月はじめにオンライン開催された日本で唯一の国際映画製作者連盟公認の国際映画祭と併設されるコンテンツマーケット「TIFFCOM」で、海外バイヤーに『ひまわりっ』が初披露されたところだ。

アジアをはじめ、世界各国から参加するバイヤー勢に少しでも作品の良さを知ってもらおうと、平と高橋克典、井上祐貴がPRコメントを寄せる映像も作られた。しかも、中国語、韓国語、英語の3か国語に対応と、気合は十分。高橋はこの収録の様子について本人のブログに「向こうまで広がったら、僕は健一さんのキャラでアジアの方々に認知されるわけですか!? こ、困る」と、役柄そのままの茶目っ気で伝えている。

  • 英語版ポスター

一方、本編の英語翻訳作業には苦労が伴った。宮崎弁は温かみある方言である反面、曖昧なニュアンスを表現した言葉が多いからだ。正しく意味を汲み取りながら、柔らかい表現を使った英語で字幕化することで、はじめて宮崎弁ドラマの良さが伝わるわけだが、なにしろそのノウハウが全くないところから始める必要があった。

協力者を得ながら初のドラマ作りが行われたように、この英語翻訳作業も多くの人の協力がカギとなった。宮崎弁の分かるオーストラリア出身のローカルタレント・ジェイミーを中心に、英会話学校のネイティブスタッフの助けによって仕上げる工夫が行われたのだ。

実際に翻訳版を見ると、宮崎弁らしさが伝わるくだけた英語に訳されている。例えば「大体、適当」を意味する「てげてげ」は「easygoing」といった具合。また、ドラマでふんだんに登場する宮崎料理も英語の辞書に載った正式な訳がないが、「宮崎地鶏」を「Miyazaki homebred chicken」、「チキン南蛮」を「chicken nanban」などと表現している。