年金の受け取り時期が近くなると、どのように年金を受け取るのが良いか、気になる人は多いのではないでしょうか。受け取り方によって税額は大きく異なります。まずは、年金にかかる所得税の基本的な仕組みについて理解しておきましょう。

  • 受け取る年金にも税金がかかる?

    受け取る年金にも税金がかかる?

公的年金等に税金がかかる仕組み

年金といっても様々な種類があります。国からもらえる年金はもちろん、企業が従業員のために支給する企業年金、自分で保険契約を結んでいる個人年金など、様々です。そして、税金の仕組みも年金によって異なります。

しかし、最も多くの人に共通する年金は国の年金でしょう。国の年金にも税金はかかりますが、税制優遇制度があります。それは、「公的年金等控除」といって、収入から一定額を差し引ける仕組みです。

この仕組みによって、本来の収入より低い金額で税金を計算できるようになります。そして、この仕組みを利用できるのは、国の年金だけではありません。公的年金等と呼ばれる年金で利用できます。

公的年金等には、老齢基礎年金、老齢厚生年金、企業年金、iDeCoなどがあります。税額を計算する際は、これらの年金をすべて合算してから、公的年金等控除を差し引きます。収入が公的年金等だけの場合は、その後に、所得控除を差し引き、税率をかけて求めます。

では、具体的に所得税の算出方法を確認していきましょう。

  • 出典 : 国税庁「公的年金等の課税関係」公的年金等に係る雑所得以外の所得に係る合計所得金額が1000万円以下

    所得税の算出方法

A : 公的年金等 ー 公的年金等控除額 = 所得
B : (所得 ー 所得控除額) × 税率 = 所得税

A : 公的年金等から所得を求める

厚生労働省が標準的な年金額と発表している令和2年の年金額は、夫婦2人で約22万円です。この夫婦の前提は、夫婦どちらか一方が40年間厚生年金に加入して働き、その間の平均給与がボーナス含む月額換算で約44万円、一方は専業主婦(夫)です。

話を分かりやすくするために、40年間厚生年金に加入したのが夫、妻は専業主婦と仮定します。夫婦2人で22万円の年金を受け取っているということですが、その年金の内訳は、夫の老齢基礎年金と老齢厚生年金が合計で15.5万円、妻の老齢基礎年金が6.5万円です。年換算すると、夫の年金は約186万円、妻78万円です。

収入がこの年金のみなら、それぞれの年金額から公的年金等控除を差し引きます。公的年金等控除は65歳未満か65歳以上かで金額が異なり、いずれも公的年金等に(b)の割合をかけて(c)控除額を差し引きます。(下記図表参照)

  • 出典 : 国税庁「公的年金等の課税関係」公的年金等に係る雑所得以外の所得に係る合計所得金額が1000万円以下

    出典 : 国税庁「公的年金等の課税関係」公的年金等に係る雑所得以外の所得に係る合計所得金額が1000万円以下

夫の年金は186万円、妻は78万円ですから、赤枠のランクに該当します。計算すると以下の通りとなります。

夫:186万円×100% ー 110万円 = 76万円
妻:78万円×100% ー 110万円 = 所得ゼロ

妻の年金は、控除額より小さいので、所得はゼロとなり所得税はかかりません。では、夫の所得税はどうでしょうか。

B : 所得から所得税を求める

所得税は、算出した所得から、さらに所得控除という控除を差し引き、税率をかけて求めます。所得控除は14種類あり、その中で自分の条件に合うものを選択して差し引きます。

例えば、この夫の場合、差し引ける所得控除には、社会保険料控除、配偶者控除、基礎控除があります。社会保険料控除の金額は、夫が支払った社会保険料の金額で、住んでいる地域や収入等によって金額が異なります。

配偶者控除は、配偶者と本人の生計が同じで、配偶者の所得が48万円以下の場合、受けることができます。配偶者控除は本人の所得や妻の年齢によって金額が異なりますが、本人の合計所得が900万円以下で配偶者が70歳未満の場合、控除額は38万円です。

  • 出典 : 国税庁「配偶者控除」配偶者控除額の金額

    出典 : 国税庁「配偶者控除」配偶者控除額の金額

次に基礎控除です。基礎控除とは合計所得が2,500万円以下の人なら差し引ける控除です。控除金額は、合計所得が2,400万円以下の場合48万円です。

  • 出典 : 国税庁「基礎控除」

    出典 : 国税庁「基礎控除」

さて、ここで配偶者控除(38万円)と基礎控除(48万円)を合計すると86万円ということが分かりました。所得から、各種所得控除を差し引き、所得税を計算しますが、夫の所得は76万円です。76万円から86万円を差し引くと、ゼロ以下になりますから夫の課税所得はゼロということです。つまり、夫も妻も所得税はかからないということです。

公的年金等以外の年金

今までお伝えしてきたのは公的年金等の課税についてです。公的年金等以外の年金については、この計算式が当てはまりません。公的年金等以外の年金には、生命保険の個人年金や共済の年金契約等があるでしょう。

例えば、生命保険の個人年金については、受け取った金額から支払った保険料を必要経費とする計算式に当てはめて所得を計算します。したがって、大きく増える年金契約の場合は、所得税も大きく増える可能性が高いわけです。

税額を小さくする方法

iDeCoは受け取り方を年金形式か一時金形式か選ぶことができます。企業年金も企業によっては受け取り方を選ぶことができます。受け取る形式が変わると、税金の計算方法が変わり、税額も変わりますから、事前にシミュレーションしておくと良いでしょう。

また、複数の年金を受け取る場合、受け取る年齢を調節して一定の期間だけに集中して受け取らないことです。集中させてしまうと、その年だけ収入が上がり、税金も上がってしまいます。

さらに、自分が使える所得控除をもれなく使うことも有効です。例えば、医療費にお金がかかった年は、医療費控除の確定申告をする等が挙げられます。

また日本年金機構から源泉徴収対象者に、毎年秋に「扶養親族等申告書」が送付されます。これを提出しなければ、配偶者控除等を受けられないので、必ず提出するようにしましょう。