京成電鉄の宗吾車両基地を親子で見学する「けいせいキッズデー」が10月24日に開催された。今年は新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、全4回の完全入換制として、各回200名、計800名が参加した。

  • 「けいせいキッズデー」の特別列車に使用された「スカイライナー」車両AE形。成田スカイアクセス開業10周年の記念ラッピングが施されている

全4回のうち、第1グループの200名は京成上野駅から「スカイライナー」車両AE形を使用した特別列車に乗車。京成本線経由で宗吾車両基地へ向かい、会場を見学する貴重な機会となった。この特別列車に報道関係者も乗車できた。

■成田スカイアクセス10周年ラッピング車両、京成本線へ

「スカイライナー」は京成上野~成田空港間を結び、途中の京成高砂駅から成田スカイアクセス線を経由する。その際、印旛日本医大~空港第2ビル間で在来線最速の160km/h運転を実施。日暮里駅から空港第2ビル駅まで最短36分で結んでいる。

一方、「けいせいキッズデー」の特別列車は成田スカイアクセス線に入らず、京成本線を走行する。AE形は朝夕の通勤時間帯に運行される「モーニングライナー」「イブニングライナー」にも使用されるため、京成本線を走ること自体は珍しくないが、日中時間帯の京成本線を「スカイライナー」の車両が走り、しかも宗吾車両基地へ直接乗り入れるということで、いつもと違う特別感の漂う列車になっていた。

特別列車に使用されるAE形は8時52分、京成上野駅の1番線に入線した。車両は成田スカイアクセス開業10周年の記念ラッピングを施したAE03編成。早速、参加者たちの注目を集めていた。

  • 成田スカイアクセス開業10周年の記念ラッピング車両を使用した特別列車が入線、こどもたちの熱い視線に迎えられた

9時9分の発車まで15分ほど時間があるのだが、隣の2番線には9時0分発の成田空港行「スカイライナー」が停車中。同じホームにAE形2編成が並んだこともあり、イベント参加者たちの多くがカメラを向けていた。

特別列車は定刻に京成上野駅を発車。次の日暮里駅まで、地下区間を曲がりながら走行する。その途中、旧博物館動物園駅のホーム跡をうっすらと見ることもできる。地上区間に出てJR線を跨ぐと日暮里駅だが、今回は特別列車のため、通過となった。

その後はしばらく東京の下町エリアを走る。AE形は音が静かで加減速もなめらか。そのため、まるで線路上を滑っているかのように走っている印象を受ける。車内放送では、通常の「スカイライナー」の運行についてわかりやすく紹介した上で、今回の京成本線経由の走行に関して、「少しゆっくりめの走行となりますが、車内や外の景色をお楽しみください」と案内していた。

  • 京成関屋駅を通過した直後、東武スカイツリーラインと交差。「スペーシア」が走っていた

  • 青砥~京成高砂間の引き上げ線に京急電鉄新1000形が

京成関屋駅付近で東武スカイツリーラインと交差し、東武鉄道の特急車両「スペーシア」も見かけた。青砥~京成高砂間では、押上方面へ折り返すため準備中の京急電鉄新1000形ステンレス車を見ることができた。

■緑ある風景の中を走行、「スカイライナー」とは違う面白さ

特別列車は京成高砂駅を通過。本来、「スカイライナー」はここから成田スカイアクセス線に入るため、高架に上がっていくが、特別列車は引き続き京成本線を走行する。進行方向左手に成田スカイアクセス線を見送った後、特別列車は再加速。成田スカイアクセス線ほどではないものの、心地良い速度となって住宅の並ぶ風景の中を走行する。

  • 成田スカイアクセス線には入らず、引き続き京成本線を走行

  • 海神~京成船橋間でJR総武線と交差

  • 京成臼井~京成佐倉間では、田畑の続くのどかな車窓風景を見られる

京成本線の主要駅である京成船橋駅や京成津田沼駅も通過し、千葉線が分岐していく様子を眺めつつ、京成佐倉・京成成田方面へ向かう。住宅地の風景はユーカリが丘駅付近まで続き、その先は田園風景も見られるようになる。

中でも京成臼井~京成佐倉間は、進行方向左手の車窓に田畑が広がるのどかな区間で、列車は連続するカーブを越えながら進む。比較的ゆったりとした速度で、緑ある風景の中を走る様子は、最高160km/hに達する「スカイライナー」とは違った面白さがある。鹿島川を渡ると、間もなく京成佐倉駅を通過した。

■モニターの展望映像を見ながら楽しむ親子の姿も

前述の通り、今回の特別列車は「けいせいキッズデー」に参加する第1グループの200名が乗車している。使用車両のAE形は8両編成だが、最後尾の8号車は関係者(報道関係者を含む)用。参加者たちは1~7号車で会場到着までのひとときを過ごした。

その中から6・7号車の客室内を見てみると、座席を向かい合わせにしている人たちも多く、家族で談笑したり、流れる車窓風景をバックに親子で記念写真を撮ったりと、それぞれ思い思いに過ごしていた様子だった。京成津田沼駅通過後、客室扉上部のモニターに前面展望と後面展望が映し出されており、その映像を見ながら楽しむ親子の姿もあった。

  • 特別列車の車内の様子

  • 各号車のモニターに展望映像が映し出される

なお、今回の特別列車では感染防止のため、客室内の人数を限定し、距離を取って密接しないようにするなどの対策が取られていた。

大佐倉駅、京成酒々井駅を通過し、進行方向右手に留置線が複数見えてくると、間もなく宗吾参道駅。ここで特別列車はポイントを渡る。宗吾参道駅の1番線にしばらく停車し、隣の2番線から京成上野行の特急が発車した後、特別列車はゆっくりと折り返し、本線から引き込み線に入った。車庫のすぐ横をかすめるように走り、会場へ。京成上野駅を発車してから1時間弱。特別列車は10時すぎに宗吾車両基地に到着した。

  • 宗吾参道駅の1番線に運転停車。隣の2番線から京成上野行の特急が発車する

  • 進行方向が逆になり、ゆっくりと車両基地へ

  • 宗吾車両基地に到着。「スカイライナー」と記念に1枚

列車から降りた後、いま乗ってきた「スカイライナー」車両と記念写真を撮ろうと、多くの参加者が順番待ちの列を作っていた。その盛況ぶりから、「スカイライナー」が世代を問わず人気であることがうかがえた。

■保存された「スカイライナー」歴代車両にも興味津々

「けいせいキッズデー」では、順路に沿って宗吾車両基地の屋外や工場内を見学していく。基地内には、歴代の「スカイライナー」車両である初代AE形とAE100形の先頭車両が静態保存されており、ここで撮影する参加者も多かった。

初代AE形は1972(昭和47)年に登場したが、「スカイライナー」としての活躍は1978(昭和53)年から。1993(平成5)年までに全車引退し、台車などが現行の3400形に流用されている。ちなみに、特別列車が宗吾参道駅で運転停車した際、隣のホームから発車した京成上野行の特急が、ライトグレーの塗装に青・赤のラインをまとった3400形だった。

  • 日本初の空港アクセス特急、初代「スカイライナー」AE形

  • 2代目「スカイライナー」AE100形。「シティライナー」としても活躍した

「スカイライナー」の2代目車両、AE100形は1990(平成2)年に登場。初代AE形を置き換えた後、現行のAE形と交代する2010(平成22)年まで「スカイライナー」として活躍した。その後は京成本線経由の「シティライナー」に使用され、筆者も一度だけ乗車したことがある。「シティライナー」としての運転は2015(平成27)年まで。翌年の「さよなら運転」で引退となった。

静態保存された「スカイライナー」の歴代車両に、「けいせいキッズデー」の参加者たちも興味津々といった様子で、家族で記念撮影したり、車両をじっくり観察したりしていた。現行のAE形を見慣れたこどもたちにとって、先代・先々代車両はかえって新鮮に見えたのではないかと思う。

今年の「けいせいキッズデー」は例年とは異なる形での開催となったが、密接しないように距離を取った上で、参加者それぞれ楽しんでいた様子が印象的だった。昨今の情勢により、大人数を集客するイベントは京成電鉄に限らず難しいかもしれないが、可能な範囲でかまわないので、こどもたちの喜ぶ声が鉄道イベントに戻ってほしいと願っている。