2012年の「第13回全日本国民的美少女コンテスト」で審査員特別賞を受賞した少女も、今では成人を目前に控えた19歳。映画『おしん』(12)で華々しく女優デビューを飾り、NHK連続テレビ小説『べっぴんさん』(16~17)出演と大役を射止めて来た井頭愛海にとって、演じることは常に不安との闘いでもあった。

16日から公開中の初主演映画『鬼ガール!!』では、鬼の末裔という難役に挑んだ。地元・大阪での撮影、そして家族や共演者に支えられながらのクライマックスシーンでは、号泣してしまったという井頭。彼女が心の中に抱えていたある思いとは。

  • 『鬼ガール!!』主演の井頭愛海 撮影:宮川朋久

■一人でずっと悩んでいた

――本作に臨むにあたって、「緊張と不安」があったそうですね。

地元にゆかりのある作品で、いつも以上に気合いが入りました。一人でも多くの人にたくさん見てもらいたいという気持ちと、ちゃんと表現できるのか不安もあったんですけど、ご一緒したのが同年代の方々だったので、みなさんに支えられながら撮影することができました。「私が主演!」というよりも、周りの方に頼らせて頂いたというか。最初は気を張っていた部分もありましたが、現場に入るとみんなクラスメイトみたいな雰囲気でした。

自分の演技プランがこのままで大丈夫なのか、一人でずっと悩んでしまった時期もありました。そこに気づいてくれたのが桜田ひよりちゃん。寄り添ってくれて、お芝居のこともそうなんですけど、それ以外でも息抜きやリラックス方法を教えてくれて、すごく楽になりました。ひよりちゃんは私よりも2つ歳下なんですが、とてもしっかりしていて私にとっては「お姉さん」みたいな感じです(笑)。

――高校卒業してすぐの撮影だったそうですね。

より一層頑張らなきゃなという気持ちになりました。「鬼ガール」と聞いて、最初は怖いイメージもあったんですが、私が演じた鬼瓦ももかは鬼の末裔で人よりも力が強かったり、50メートル走を4秒で走るほど運動神経が良かったり、感情が高ぶると角が生えて来たり、かわいらしい部分もあって(笑)。そういう自分にコンプレックスも抱いていて、一見普通の女の子なんです。だからこそ、映画を見て共感してくださる方も多いんじゃないかなと思います。

――物語の終盤、ももかが舞台に立つシーンでは泣いてしまったそうですね。

撮影もラストスパートの頃。映画の中でもすごく重要なシーンだったので、緊張しつつも気合いを入れて。お芝居だけではなくて、私の本当の思いとも重なって忘れられないシーンになりました。ももかの一番成長したところを見せられる場面でもあったので1カ月ぐらいずっと悩んでいて、自分の心も解放できて気持ちがあふれ出てしまいました。

過去にもそういう感覚になったことはありましたが、今回はずっとももかの気持ちに……。1カ月ぐらいの撮影でずっと地方にいて、「本当にこのままで大丈夫なのか」と不安も感じながら、ちょっとずつ自信をつけていった自分が、劇中のももかとリンクしたんだと思います。

――芸能界入りして8年。常にそういう不安と向き合ってきたんですね。

自信がある時はあるんですよ(笑)。でも、不安を解消するために事前にしっかりと準備しておきたいタイプです。全然器用じゃなくて、むしろ不器用。何かをするにしても、人より多くの時間がかかってしまうことが多くて。そういう「不器用さ」も、ももかと通じる部分があったのかなと思います。私自身、ももかと同じで自分の中で解決するというよりは、友人や両親に悩みを打ち明けて、励ましてもらうことがほとんど。「こんなところで負けてられない!」と言い聞かせて切り替えています。

■朝ドラ『べっぴんさん』の思い出

――映画では支えとなる人がたくさん登場しますが、井頭さんにとっての恩人は?

やっぱり、両親はずっと前から支えてくれているというのはすごく感じていて。不安を感じた時に電話するといつでも話を聞いてくれて、「絶対に大丈夫」「いつも味方だよ」と励ましてくれます。地元の大阪に帰った時は、父や母、きょうだいが手紙を渡してくれたり。そういう家族みんながいるから、私も頑張れる。妹は折り紙でお守りを作ってプレゼントしてくれたりするんですよ。もっとしっかりしないとなと思います(笑)。

――いつ頃、上京されたんですか?

高校入学と同時に上京したので……もう4年目ですかね? 当時は東京に行く気満々で、「東京でバリバリ仕事して、みんなにテレビや映画でたくさん見てもらえるように頑張ろう!」という思いでした。実際に上京すると、すぐにホームシックになってしまって(笑)。その寂しさを紛らわせながら、日々奮闘しています。

――その頃、NHK連続テレビ小説『べっぴんさん』(17)にも出演されていましたよね。

上京して半年も経たない時期で、しかも大阪での撮影だったので、実家から通った約半年間は活力になりました(笑)。すごく大変でしたが、大阪での撮影だったからこそ乗り切ることができた部分もあったのかなと思います。私にとって家族は、大切な支え。今回の撮影でも、実家にちょくちょく帰ることができたのでありがたかったです(笑)。

『鬼ガール!!』の撮影場所は、“超”地元です。実家から現場まで通える距離で、遠足で行ったことがあるところとか、自分にとってゆかりのある場所で撮影できたのは安心感がありました。

■『アニー』に感動したあの日

――2012年の「第13回全日本国民的美少女コンテスト」審査員特別賞でデビュー。ご両親は、芸能界入りに最初から好意的だったんですか?

小学校6年生の頃で、両親からは「芸能界以外の道もあるから」と言われながら、最後のオーディションとして参加しました。「受かるわけないだろう」と思っていたんでしょうね(笑)。芸能界への憧れを抱く娘に対して、いろんなオーディションを探して受けさせてくれていたんですが、その小6のタイミングで「別の道もあるよ」と。基本的にはずっと応援してくれていました。

憧れを抱くきっかけになったのは、ミュージカル『アニー』。同年代の子たちがステージ上でキラキラしているのがすごく楽しそうで羨ましくて、「私もこの世界に入りたい!」と思うようになりました。それまでは看護師、保育士、警察官、医師とかとにかくいろいろな職業に興味があって、俳優業は作品を通してあらゆる職業に携わることができるので、そこも魅力的でした。

――2013年公開の『おしん』では、いじめっ子役。7年前のインタビューでは、「(演じたいのは)落ち込んだ役で、そこから立ち直るような役にも挑戦したい」とおっしゃっていました。今回の『鬼ガール!!』でその願いが叶いましたね。

えーっ! そんなこと言ってました!? 全く記憶になくて……(笑)。当時の自分もそうだったと思いますが、新たな物事を始める時に一歩踏み出す勇気を振り絞るのって、なかなか難しいですよね。そういう方々の背中をそっと押してくれる作品だと思うので、たくさんの方に笑顔を届けられたらいいなと思います。

■プロフィール
井頭愛海(いがしら・まなみ)
2001年3月15日生まれ。大阪府出身。2012年の「第13回全日本国民的美少女コンテスト」で審査員特別賞を受賞し、芸能界入り。2013年公開の映画『おしん』で女優デビューを飾り、以降はNHK連続テレビ小説『べっぴんさん』(17)をはじめ、『さくらの親子丼2』(東海テレビ・18)、『少年寅次郎』(NHK・19)、『ラーメン大好き小泉さん 二代目!』(フジ・20)など数々の作品に出演している。