王将リーグ残留を目指す藤井二冠と佐藤九段の対局は、まさかの佐藤九段の先手中飛車

第70期王将戦挑戦者決定リーグ戦の▲佐藤天彦九段-△藤井聡太二冠戦が10月29日に東京・将棋会館で行われています。ここまで0勝3敗の藤井二冠と、1勝3敗の佐藤九段。崖っぷちに追い込まれている両者の一戦は、佐藤九段がまさかの先手中飛車を採用しています。

藤井二冠を破るべく、トップ棋士たちがなりふり構わぬ戦型選択を見せています。前局では永瀬拓矢王座が3年ぶりに四間飛車を採用し、勝利を収めました。そして本局でも、居飛車党の佐藤九段が3手目に▲5六歩と着手。なんと中飛車に振ったのです。

佐藤九段が相手の居飛車に対して中飛車を採用したのは、2007年8月以来13年ぶり。その際は後手番での採用でした。本局のように先手番での中飛車は、過去に用いたことがありません。戦型予想の候補にすら上がらない、まさに秘策中の秘策を藤井二冠にぶつけてきました。

佐藤九段と藤井二冠の過去の対戦成績は、佐藤九段から見て0勝2敗。戦型は横歩取りと角換わりでした。相居飛車で戦うよりも勝算が高いと見ての採用でしょうか。

振り飛車を立て続けに使われると、藤井二冠の弱点は対振り飛車なのかな、と思われる方もいらっしゃるかもしれません。ところがそんなことはないのです。

本局の先手中飛車相手にはこれまで19勝3敗の成績。また、前局永瀬王座に敗れた後手四間飛車相手でも15勝2敗の成績を残しています。

永瀬王座や佐藤九段が藤井二冠に対して振り飛車を採用したのは、藤井二冠の弱点を突くという意味よりも、相手の研究が手薄くなっている戦型を用いて、事前準備の差を生かそうという意味なのではないでしょうか。

意表の戦型選択が功を奏して、佐藤九段が勝利するのか。それとも藤井二冠が相手の奇策を跳ねのけるのか。決着は本日の夜となる見込みです。

王将リーグで苦戦中の佐藤九段(左)と藤井二冠(提供:日本将棋連盟)
王将リーグで苦戦中の佐藤九段(左)と藤井二冠(提供:日本将棋連盟)