第75期名人戦で激突した両者は、今期ともに2勝2敗の成績に

第79期A級順位戦4回戦(主催:毎日新聞社・朝日新聞社)の▲佐藤天彦九段(2勝1敗)-△稲葉陽八段(1勝2敗)戦が10月19日に関西将棋会館で行われました。第75期名人戦七番勝負で対決したこともある同い年の一戦は、稲葉八段が勝利を収めました。

前期は最終局で激突した両者。その際には佐藤九段が勝利し、辛くもA級残留を果たしています。

佐藤九段が先手番の本局は、横歩取りの戦型に。横歩取りは序盤から激しい戦いになりやすい戦法ですが、本譜は佐藤九段が飛車を下段に引き揚げて穏やかな展開となりました。

後手の稲葉八段は角を打って1歩得を果たすと、自陣の傷を消した後に玉の守りを固めていきます。やがて稲葉玉が金銀3枚にしっかりと囲われた、強固な守備陣が完成。横歩取りの出だしとは思えない形となりました。

盤石の陣を築いた稲葉八段は、佐藤陣の弱点である桂頭攻めを開始します。佐藤九段も稲葉八段の角を目標に金を進撃させましたが、狙われている角をズバッと切り飛ばしたのが、稲葉八段の好判断でした。佐藤玉を5筋で孤立させ、それを飛車・銀の協力で追い詰めていきます。

絶体絶命に見えた佐藤玉ですが、ここから佐藤九段が粘りに粘ります。敵陣にいる馬を頼りに玉を上部に逃がしていきました。しかし、稲葉八段は慌てません。敵陣の駒を回収していき、手駒を蓄えます。そして佐藤玉が入玉を果たしたタイミングで、ついに捕まえることに成功。最後は自陣飛車を打って、佐藤玉を即詰みに打ち取りました。

稲葉八段はこの勝利で成績を2勝2敗の五分にしました。順位が10人中8位と下位のため、ここで黒星が2つ先行すると首筋が寒いところでした。一方敗れた佐藤九段も2勝2敗。こちらは挑戦権争いから一歩後退です。

星を五分に戻す、大きな勝利をあげた稲葉八段
星を五分に戻す、大きな勝利をあげた稲葉八段