西武鉄道は25日、西武球場前駅にて「Laview(ラビュー) ブルーリボン賞受賞式」を開催した。同社のブルーリボン賞受賞は、初代「レッドアロー」5000系以来、50年ぶり。鉄道友の会内における支持率は47.3%で、2位に大差をつけての受賞となった。
受賞式が行われた西武球場前駅では、「ニューレッドアロー」10000系の「レッドアロー・クラシック」編成が先に入線。初代「レッドアロー」のカラーリングを模し、西武鉄道の歴史を感じさせる編成が、「ラビュー」の到着を待ち構えていた。
■池袋駅から西武球場前駅へ、記念の特別列車も運行
「ラビュー」は開式の15分ほど前に到着した。「Laview ブルーリボン賞 受賞式特別ツアー」の特別列車として池袋駅から西武球場前駅まで運行され、車内では落語家の林家たい平師匠が車内放送を行い、「ラビュー」のデザインを手がけた建築家の妹島和世氏、日立製作所主任デザイナーの高田裕一郎氏によるトークショーも行われたという。
西武球場前駅の臨時ホームに「ラビュー」が入線し、西武鉄道の新旧特急車両が並ぶ。「ラビュー」から招待客とともに、黄色い着物を着た林家たい平師匠も降りてきた。受賞式の司会を務めた「女子鉄アナウンサー」久野知美さんは、「ラビュー」の自動アナウンスも担当しており、この日は「ラビュー」をイメージしたグレーとイエローのコーディネートだった。
久野さんの隣に「ラビュー」の運転席が添えられ、日本大学芸術学部デザイン学科の古瀬愛さんによるデザインパネルが背景を彩った。黄色い座席と大きな窓からの青空をイメージした、「ラビュー」の特徴を表現したものだ。
■西武鉄道の後藤会長「受賞は光栄」
受賞式では、西武鉄道の取締役会長、後藤高志氏が挨拶。「鉄道業界にとって最大の名誉となる賞をいただき、大変光栄です」と喜びを表した。
「初代レッドアローから50年。いままでさまざまな車両を作り、ブルーリボン賞を受賞したかったのですが、なかなかできなかった」と後藤氏は話す。2005年、みずほホールディングスから転じて西武鉄道の社長に就任した際、「鉄道は近代日本の発展の根幹となってきた」ことを自覚したものの、一方で「変化への感性がキャッチアップせず、感性を研ぎ澄ませたい」とも考えたという。
「風穴を開けたい」と考えた後藤氏は、新車づくりに携ってきた車両部にプロジェクトチームを加えた。その結果、30000系「スマイルトレイン」をはじめ、注目を集める車両が次々に登場。001系「ラビュー」で結実した。
■「外装・内装・床下」3つの要素が受賞につながる
続いて鉄道友の会会長、須田寛氏が挨拶した。「外装・内装・床下、この3つがそろっているのが良いデザイン。床下もおろそかにしない」と、国鉄時代に教わったことを語った上で、「内外装は言うまでもなく、機器のコンパクト化も行われ、本当に良いものができた」と「ラビュー」を評価。「観光や通勤のための特急として利用されるこの車両は、これからの行動への心の準備ができる車両であり、乗ったときからの気持ちが演出されているものです」との見方を示した。
選考委員長の加藤幸弘氏は、2位となった候補と大きな差がついたことを紹介した上で、「斬新なデザインや構造、最新機器の採用」をブルーリボン賞の選定理由に挙げ、「完成度の高い魅力的な車両」と評価した。
■ブルーリボン賞受賞の記念ロゴも公開
表彰状と記念盾が贈呈された後、ブルーリボン賞受賞を記念したオリジナルロゴも披露された。当日、西武球場前駅にやって来た「ラビュー」A編成の1号車にオリジナルロゴが付され、「Laview」のロゴの下に「001 BLUE RIBBON PRIZE 2020」と記された。
このオリジナルロゴも、「ラビュー」を手がけた妹島和世氏のデザインによるもの。「これからの100年に向けて、リボンで『無限』(∞)をイメージさせるようにしました」「ずっと先まで、みんなが夢を持っていく願いを込めました」と妹島氏は説明した。
車内にはブルーリボン賞のエンブレムを掲出。昨年受賞したグッドデザイン金賞に続き、「ラビュー」に新たな栄誉が加わった。会場となった西武球場前駅のホームでは、「ラビュー」の模型をはじめ、初代「レッドアロー」5000系の車両部品やヘッドマーク、50年前にブルーリボン賞を受賞したときの賞状などが展示されていた。
「西武グループのスローガンは『でかける人を、ほほえむ人へ。』。コロナ禍で出かけることがためらわれる風潮があるものの、そんな中でも出かける人をほほえむ人にしていきたい」と後藤会長は言う。多くの人々の注目を集めた「ラビュー」が、ブルーリボン賞受賞を機に、コロナ禍の厳しい社会でも「ほほえみを与える力」となり、さらに多くの利用者や沿線住民に親しまれる車両になっていくことを期待したい。