デビュー曲「夜に駆ける」がメガヒットした音楽ユニット・YOASOBIのボーカルikuraとして注目を集めている幾田りらは、2000年生まれで20歳になったばかりの新鋭シンガーソングライターだ。アコースティックセッションユニット・ぷらそにかのメンバーとしても活動している。
幼い頃からの「歌手になる」という夢を叶えた幾田。Netflixで10月23日より独占配信されるアニメーション映画『フェイフェイと月の冒険』では、日本語版エンド・クレジット・ソング「ロケット・トゥ・ザ・ムーン~信じた世界へ~」を歌い上げている。幾田を直撃し、ブレイク後の率直な感想と、アーティストとしてのルーツに迫った。
――YOASOBIの「夜に駆ける」が大ヒットし、一気にスターダムを駆け上がりましたが、ブレイクの実感はありましたか?
それが、ちょうど自粛期間とかぶっていたので、外に出て反響をもらえる機会が少なかったですし、数字やランキングを見ても、あまり実感が湧かなかったです。でも、先日、ゲームセンターの「太鼓の達人」で「夜に駆ける」をやっていたら、たまたま通りがかった5歳くらいの男の子が曲を歌ってくれて、「ああ、こんなに小さな子でも知っていてくれているんだ!」と、改めて曲の広がりをひしひしと感じました。
――それはうれしいですね! 仕事面での心境の変化はありましたか?
お仕事の幅が広がったなとは感じています。Netflixさんの『フェイフェイと月の冒険』で、日本語版エンド・クレジット・ソング「ロケット・トゥ・ザ・ムーン~信じた世界へ~」を担当させていただけたこともそうですし。
――とても高揚感がある曲ですが、どういう点に魅力を感じましたか?
歌いながら感情が高ぶっていくところです。最初は、主人公のフェイフェイが、自分の信じている月の世界への憧れや、それが本当に存在するのかという不安などをつぶやくような形で始まるんですが、曲のテンポが上がっていくにつれて、その世界を信じる気持ちがどんどん膨らんでいき、最後は映画を観ている人たちに直接語りかけるような勢いで歌っていくところがいいですね。
――邦題は幾田さんが考えられたとか。すぐにパッと浮かんだのですか?
実は、30個くらい案を考えました。オリジナルのタイトル「Rocket to the Moon」をそのまま日本語に訳するのもわかりやすくていいかなとも思ったのですが、映画を観た時、主人公のフェイフェイが、自分の世界を信じて突き進んでいく意志の強さを感じたので、「ロケット・トゥ・ザ・ムーン~信じた世界へ~」としました。
――この楽曲で、ミュージカル調の歌唱に挑戦してみていかがでしたか?
台詞っぽく語りかけるような歌い方を求められたので、普段歌っているポップスよりも、感情がのせやすい気がしました。また、私は幼少期からディズニーの音楽が大好きで、昔から家では、映画の役になりきって歌っていましたし、小学生時代にミュージカル劇団に所属していたこともあり、その頃のミュージカル魂が蘇ったような気がしました。映画音楽への情熱にまた火がついた感じがしたんです。
――YOASOBIは、小説を音楽にするユニットですし、物語を歌にする点は共通している気がします。
YOASOBIでは原作小説があり、曲を作ってくれるコンポーザーのAyaseさんがいて、私は主人公になりきって歌うボーカルの役割をしています。そういう意味では、今回も自分で作詞作曲をした曲ではなく、違う誰かを演じるという点において、YOASOBIでの経験が活かされたなと思っています。
ただ、「ロケット・トゥ・ザ・ムーン~信じた世界へ~」は、劇中歌ではなく、エンド・クレジット・ソングだったので、主人公であるフェイフェイになりきって歌うというよりは、フェイフェイの力強さを受け継ぎつつ、幾田りらとして歌ったほうがいいんだろうなとも思いました。きっと、観た人が勇気をもらえる映画だと思うので、私としては、最後にもうひと押し、背中を押せるような歌をと思い、フェイフェイに幾田りららしい成分を入れて、メッセージを届けられるようにと、意識して歌いました。