アイドルグループ・嵐の二宮和也が主演を務める映画『浅田家!』(10月2日公開)が、第36回ワルシャワ国際映画祭で最優秀アジア映画賞(NETPAC賞)を獲得したことが19日、明らかになった。

  • 左から中野量太監督、二宮和也

    左から中野量太監督、二宮和也

同作は写真家・浅田政志とその家族を映画化した映画。4人家族の次男として生まれた政志(二宮和也)が、家族それぞれが“なりたかった自分”をテーマにコスプレで家族写真を収めた写真集「浅田家」が、第34回木村伊兵衛写真賞を受賞しプロとして活動を始めた最中、東日本大震災が起こる。政志は津波で泥だらけになってしまったアルバムや写真を洗浄、元の持ち主に返すボランティア活動をする人々を約2年間にわたって撮影していく。『湯を沸かすほどの熱い愛』(16年)で、第41回報知映画賞作品賞、第40回日本アカデミー賞優秀作品賞、優秀監督賞、優秀脚本賞など数々の賞を受賞した中野量太監督が独自の目線で映画化した。

9日~18日の間行われていた、第36回ワルシャワ国際映画祭「国際コンペティション部門」に出品にされていた同作だが、現地時間17日16:30(日本時間23:30)よりワルシャワ市内の映画館マルチキノにて授賞式が行われ、アジア映画12本の中から最優秀アジア映画賞(NETPAC賞)を獲得。ワルシャワ国際映画祭においての最優秀アジア映画賞は、邦画作品では初の受賞となる。

本作のプレミア上映は、現地時間14日に、ワルシャワ市内の映画館マルチキノ(キャパ366席)で上映され、観客の反応は非常にポジティブで、多くのシーンで笑いが起こっていた。今回の授賞理由について、ある審査委員は「本作は、現在の混沌とした時代にこそ必要とされる希望に満ちた、非常に感動で楽しい作品でした。誰もが大きな心を持ち、純粋な夢を決して諦めない、ユニークなある家族の悲しみと喜びの描写が素晴らしく、私たちは最優秀アジア賞(NETPAC賞)を授与いたします」と述べている。

ワルシャワ国際映画祭国際コンペティション部門グランプリでは、これまでも2004年に『別離』でベルリンのグランプリ、アカデミー賞外国語映画賞を受賞したアスガー・ファルハディ監督の『美しい都市(まち)』(日本劇場未公開)や、2010年、『ブレードランナー2049』で知られるドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の『灼熱の魂』、2013年、『COLD WAR あの歌、2つの心』のパヴェウ・パヴリコフスキのアカデミー賞外国語映画賞受賞作『イーダ』などが受賞しており、後の巨匠監督の初期の作品が多く受賞しているという特徴があるという。邦画作品の受賞は、2007年『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』(吉田大八監督)のフリースピリットコンペティション部門大賞受賞以来となる。

二宮の出演作が、海外の映画祭に選出されるのは『硫黄島からの手紙』(06年)での、第57回ベルリン国際映画祭、第79回アカデミー賞のノミネート、『ラストレシピ ~麒麟の舌の記憶~』(17年)での第2回マカオ国際映画祭での公式上映、『検察側の罪人』(18年)の第38回ハワイ国際映画祭への出品以来。21日から開催の第25回釜山国際映画祭のオープンシネマ部門にも正式招待されている。今回、新型コロナウィルスの影響で映画祭に出席できなった二宮と中野監督は、この吉報を耳にし、コメントを発表した。

二宮和也 コメント

まずは監督、受賞おめでとうございます! 朝起きて、「最優秀アジア賞を受賞しました」という知らせが深夜に来ていたことを知り、大変驚きました。人から人へ気持ちが伝わったことが嬉しいです。それだけでも嬉しいです。最初から賞を目的として、作品に参加したわけではありませんが、こういった映画祭があるからこそ、世界の人に観ていただく機会があり、世界中にある“家族というものの一つの形”を感じて頂くことができたのかなと思います。賞をいただけたことはもちろん光栄ですが、映画を観た皆さんの感想で、たくさんの方が久しぶりに映画館に行ったきっかけが『浅田家!』だと言ってくれているのを知り、すごく嬉しかったです。色々な価値観の人が集まって一つのスクリーンで同じものを共有できる映画館という場所に人が戻ってきて、お客さんが「よかった」と言ってくれる作品を作れたことが何より素晴らしいと思います。

中野量太監督 コメント

この映画が言葉の壁や国境も超えて海外の人にも受け入れられたということがとても嬉しいです。国際コンペティション部門に選ばれた理由も「この苦しい時代だからこそ、こういう映画が必要だ」というものだったのですが、受賞理由も同じだったと聞いて嬉しかったです。この映画は家族の話なので、世界共通だと思いました。東日本大震災の中で苦難にぶつかっても、希望を見つけて乗り越え、前に進むという話なので、世界の方々にも理解をして頂けたんだと思います。日本の映画ファンの方々が、この作品で映画館に帰ってきてくれたというお話を聞いて、世界の映画ファンも帰ってきてくれるきっかけの映画になってくれたらいいなと。受賞理由を聞いて、もしかしたらそういう役目をもった作品なのかもと感じたので、今、上映できていることが嬉しいです。