近畿エリアの東海道・山陽本線(琵琶湖線、JR京都線、JR神戸線)を中心に運行されるJR西日本の新快速が10月1日、運行開始50周年を迎えた。初代車両の113系から、153系、117系、221系を経て、現行の223系・225系に至るまで、さまざまな車両が使用されてきた。

  • 運行開始50周年を迎えたJR西日本の新快速。9月30日の報道公開では、153系で使用された「新快速」の銘板も披露された

新快速は国鉄時代の1970(昭和45)年、大阪万博開催時に「万博号」として活躍した113系を活用して運行開始。当時は京都~西明石間で1日6往復運転され、途中停車駅は3駅(大阪駅、三ノ宮駅、明石駅)のみだったという。1972年の153系「ブルーライナー」に続き、1980年に初の新快速専用車両117系「シティライナー」を投入。JR西日本の発足後、1989(平成元)年に221系を投入した。117系・221系は鉄道友の会ローレル賞を受賞している。

現在は223系・225系を使用し、日中時間帯に毎時4本の高頻度で運行される。運行区間も拡大され、福井県の敦賀駅から兵庫県の播州赤穂駅・上郡駅まで、近畿エリアの2府3県をカバー。速達性・利便性・安全性に加え、近年は快適性・安定性の実現にも取り組み、昨年3月、有料座席サービスの新快速「Aシート」が上下各2本(野洲~姫路・網干間)の列車に導入された。JR西日本は今年2月、おもに新快速で運行される225系を新製投入すると発表。2020~2023年度にかけて計144両を投入する計画とされている。

新快速の運行開始50周年を迎えるにあたり、JR西日本は9月30日に報道公開を実施した。かつて新快速で活躍した221系と、現在活躍中の223系・225系を並べて展示し、223系に掲出する記念ヘッドマークシールも披露されている。153系で使用された「新快速」の銘板も会場に登場。新快速「Aシート」の車内も公開されたという。

  • (写真左から)221系、225系、223系を並べて展示

117系や221系のような当時最新の車両も投入しつつ、特急列車並みの速達性・利便性を有する新快速は、JR西日本を代表する列車のひとつであり、鉄道ファンからの注目度も高い。では、運行開始から50年間で投入された計6形式の中で、「新快速」と聞いてイメージする車両は一体どの車両なのか。マイナビニュース鉄道カテゴリのTwitterアカウント(@tetsudomynavi)を活用し、アンケートを行ってみた。

設定できる項目数の関係で、運行開始当初の113系・153系と現行の223系・225系はそれぞれ1項目にまとめた。アンケートの結果、1日で600票近く集まり、223系・225系が52.4%と半数以上の票を集め、1位になった。現在活躍中の車両で、2形式で1項目としていたこともあり、これは当然の結果といえるかもしれない。

  • Twitterのアンケート機能を使って調査した結果、新快速でイメージする車両は223系・225系が1位、117系が2位に

2位は117系で28.4%。初の新快速専用車両として国鉄時代末期からJR発足初期にかけて活躍し、新快速での運用を終えて約20年が経過しているにもかかわらず、根強い人気があることを感じさせた。その他、JR発足初期に投入された221系は11.8%、運行開始当初の1970年代に活躍した113系・153系は7.4%となった。なお、今回の選択肢に入れなかったが、JR東海の新快速に使用される311系・313系を挙げる人もいた。

神戸市在住の鉄道ライター、新田浩之氏はアンケート結果を受けて、「117系の根強い人気に驚いた。現代の車両にはない無骨なスタイルと、当時の国鉄では珍しかった転換クロスシートの導入が評価されたのではないか」とコメント。221系も新快速がJR西日本を代表する列車となる過程で重要な役割を果たしたが、「新快速としての活躍は約10年ということもあり、他形式の車両と比べると印象が薄いのかもしれない」とのことだった。大和路快速が走る大和路線(関西本線)、みやこ路快速が走る奈良線、さらに嵯峨野線(山陰本線)でも221系が主力車両として運用されており、「関西地区で幅広く活躍しているため、“身近に見られる近郊型電車”という感じなのだろう」と語る。

また、117系が人気を集めたもうひとつの要因として、「9月にデビューした長距離列車『WEST EXPRESS 銀河』もアンケート結果に影響を与えたのだろう」と新田氏。117系1編成(6両編成)を改造した「WEST EXPRESS 銀河」は、11月まで夜行特急列車として山陰方面(京都・大阪~出雲市間)へ、12月からは昼行特急列車として山陽方面(大阪~下関間)へ運行を予定している。9月30日の報道公開でも、「1999年まで新快速で頑張ってくれた車両が観光列車として生まれ変わったのは感無量」「活躍の場を与えられて頑張って走ってくれるということで本当に嬉しく思います」といったコメントが見られた。

  • 国鉄時代に新快速専用車両としてデビューした117系。現在は湖西線・草津線をはじめ、岡山地区でも快速・普通列車で活躍している(写真は湖西線の普通列車。2015年撮影)

  • 117系の1編成が「WEST EXPRESS 銀河」に生まれ変わり、9月から営業運転を開始した

JR西日本は10月1日以降、新快速の運行開始50周年を記念したさまざまなプロモーションを展開している。新快速「Aシート」編成の12号車(京都・野洲方先頭車)に記念のヘッドマークシールを掲出(期間は2021年3月31日まで)したほか、「JRおでかけネット」の特設サイトにて、ドキュメンタリームービー「まちと、みらいと、みなさんと。新快速50周年」を公開。歴代車両の写真・イラストをデザインしたオリジナルグッズも販売されている。京都駅、大阪駅、三ノ宮駅にて、新快速の歴史を振り返るパネル展示も行われる。

京都鉄道博物館では、新快速50周年記念企画「この秋は新快速で50! ~学んで、遊んで、しんかいそく~」を12月13日まで開催中。特別展示や「新快速」映像シアター、収蔵資料展・写真展や講演会などさまざまな企画を用意した。11月7~10日には、新快速の専用車両としてデビューし、現在はおもに湖西線・草津線で運行される117系(クハ117形1号車など4両)の特別展示が予定されている。