新型コロナウイルスによりテレワークが広まり、外出を自粛するなか、体を動かす機会が減っています。そのため、いわゆる「コロナ太り」に悩んでいる人もいるでしょう。そうはいっても、以前のようにジムに通うようなことは、やはりまだ気が引けるかもしれません。だとしたら、「運動量を増やすことなく、太りにくい体をつくる」という都合のいい食生活はないものでしょうか。

  • テレワークで体重増が気になるあなたへ。太りにくい「食生活」のコツは、意外にも「タンパク質+炭水化物」だった! /栄養士・笠井奈津子

栄養士の笠井奈津子さんにお話を聞いたところ、「タンパク質と炭水化物をきちんと食べることを心がけてほしい」という、なんとも意外な答えが返ってきました。

■ただやせようとするのではなく「食べながら太りにくい食生活」を!

今回のコロナ禍の影響によって在宅時間が増えたことで、食生活が大きく変わったという人も多いはずです。わたしは、食生活がより健康的になったという人と、不健康になった人の両極端にわかれたのではないかと見ています。

外食する機会や飲み会などが減ったことで、やせたとか健康的な自炊を心がけるようになった人もいれば、逆に際限なくお菓子を食べるなど食生活が乱れてしまった人もいるでしょう。もちろん、後者の場合には、いわゆる「コロナ太り」してしまったと悩んでいる人もいるにちがいありません。

そして、「やせたいから」と、食事量を減らしている人も増えているようです。ただ、それこそ栄養の専門家である栄養士であっても、「摂取エネルギーを減らしながら栄養の必要量を満たす食事」を考えるのはとても大変なこと。一般の人ならなおさらでしょう。つまり、食事量を減らしている人のほとんどが、栄養不足におちいっていると考えられます。

もちろん、体が必要とする栄養素を摂取できていなければ、体のさまざまなところに不調をきたします。それこそ、新型コロナウイルスに対抗するための免疫力が低下してしまうということにもなりかねません。

ですから、ただやせようとするのではなく、きちんと食べながらも太りにくい食生活にするコツをつかむことが大切です。

■タンパク質を食べて、内臓にハードなエクササイズをさせる

そのコツとは、脂質や糖質などを減らすことを考える前に、まずは不足している栄養を足して、摂取する栄養のバランスを整えることです。とくに、タンパク質不足に注意しましょう。

いまは、スマホのアプリで摂取エネルギーを計算しているという人も多いでしょう。でも、食事量を減らして摂取エネルギーは低く抑えているのに太りやすいと感じている、あるいは実際に太ってしまったという人もいるはずです。その原因こそ、ほかならぬタンパク質不足。タンパク質は、ふつうの食事をしていても不足しがちな栄養素ですから、食事量を減らしていればなおさらです。そして、タンパク質は、太りにくい体をつくるためにとても大切な栄養素のひとつなのです。

みなさんは、「食べる=太る」だと思っていませんか? それは完全な間違いです。食べるということは、じつは内臓のエクササイズのようなもの。食べ物を消化吸収するには、脂質を燃やして内臓をしっかり働かせる必要があるのです。

ただ、なにを食べても同じようにエクササイズできるわけではありません。サラダのような軽いものを消化吸収するくらいなら、内臓にとっては大したエクササイズになりません。一方、肉や魚などタンパク質が豊富な食べ物を消化吸収するのは、それこそハードなエクササイズで、たくさんの脂質を燃やしてくれます。

でも、タンパク質が大切だからと、肉にかたよった食事はおすすめしません。肉食は、免疫機能を高めるために大切な腸内環境を乱してしまうからです。できるだけ、サケやサンマ、サバなどの魚を食べることを意識しましょう。そうすれば、腸内環境を乱すことなくタンパク質を摂取できるうえ、それらの魚に含まれるビタミンDも摂取できる。ビタミンDには、免疫機能の調整役としての働きが期待できます。

■「ダイエットの敵」とされがちな炭水化物でやせる!?

そして、太りにくい体をつくるために重要なもうひとつの栄養素が炭水化物です。これはちょっと意外かもしれません。なにしろ「炭水化物抜きダイエット」といったものもあるように、「炭水化物=太りやすい」と認識している人がほとんどだからです。

もちろん、炭水化物には糖質が含まれますから、食べ過ぎはよくありません。ところが、きちんとタンパク質を摂取したうえなら、炭水化物は太りにくい体をつくるために大きな働きをしてくれます。それは、タンパク質が内臓にエクササイズをさせる際に、「着火剤」のような役割を果たしてくれるということ。タンパク質と同時に炭水化物を摂取することで、内臓がタンパク質を消化吸収する際の消費カロリーがより大きくなるのです。

また、炭水化物は、空腹感を満たす働きによっても太りにくい体をつくることに貢献してくれます。太らないためには、必要以上のエネルギーを摂取することが禁物ということはいうまでもないでしょう。そのために、炭水化物を意識的に減らしたり、炭水化物抜きダイエットをしたりする人がいます。

ところが、そういう人のなかには、炭水化物を抜いているためにエネルギー切れを起こし、空腹感から間食で甘いものをちょこちょこつまんでしまっている人も多いのです……(苦笑)。すると結果的に、適量の炭水化物をとること以上のエネルギーを摂取してしまうのです。

ただ、炭水化物を摂取するためだからといって、パンを食べることはおすすめできません。なぜなら、パンにはバターなど脂質が多く含まれるからです。そもそもパン自体にバターが含まれているうえ、トーストにしてさらにバターを塗ってしまえば、それこそ脂質過多によって太ってしまいます。

また、パスタの場合にも、調理の過程で油を使うことがほとんどですから、パン同様におすすめはできませんね。やはり、わたしたち日本人の主食であるお米がベストです。

【笠井さんおすすめ! 簡単「太りにくい体」実現レシピ】

「炊飯器でできる主食と主菜! 鶏もも肉のアジアンワンプレートごはん」

■材料(ふたり分)
米 1合
雑穀 大さじ1
鶏もも肉 1枚(300g程度)
A{鶏ガラスープの素 小さじ2、酒 大さじ1、塩 小さじ1/2、ショウガ スライスしたもの3枚(チューブのショウガ小さじ1でも可)}

■つくり方
①米をといで30分浸水させ、ザルにあげて水気を切る
②炊飯器に①と雑穀を入れ、1合目の目盛りまでの水とAを加えたら、鶏もも肉を乗せて炊く
③炊き上がったらショウガを取り出し、鶏肉を食べやすい大きさに切って皿に盛り付ける。お好みで生野菜や、スイートチリソース、レモン、ショウガじょうゆなどを添える

構成/岩川悟(合同会社スリップストリーム) 取材・文/清家茂樹 写真/櫻井健司