登場する芸人・ネタは、「ネームバリューよりも、千鳥さんと掛け算して合うかどうか」という基準で選んでいるという。そのリサーチ方法も独特だ。

従来のネタ番組では、芸人の所属する芸能プロダクションに声をかけてオーディションを実施したり、ライブを見に行って情報収集したりするのが一般的だが、コロナ禍の現状では局の会議室に多くの芸人を一斉に集めることができない上、ライブもほとんど開催されていない。

そこで、ネットでバズっている動画を探すほかにも、「芸人さんたちの中で『今これが面白い』と思われているものをリサーチするということをしています」と、独自のルートで発掘。

さらに、「優秀な(放送)作家さんたちもこういう番組を待っていたようで、いろんな情報を提供してくれて、すごくありがたいです。最近だと、芸人さんの候補が出てきて会議中に上がってる動画を確認できるようになりましたし、芸人さん本人から送ってもらった動画をみんなですぐ見れるというのもありますので、だいぶスピード感が変わったなと思います。すでになっていますが、今後は芸人さんがSNSやネットの世界をどんどん自分をプレゼンする場にしていくと思いますね」といい、「芸人さんの集め方はだいぶ進歩してると思います」と実感を語る。

こうした手法により、候補にあがる芸人の数は膨大になるが、その分視野も広がることで、結果としてネタのバリエーションが増えるというメリットになった。

ちなみに、トータルテンボス・大村の息子の晴空君が出演したのは「妻(ギャル曽根)が大村さんと静岡でレギュラー番組をやってて、それで息子さんの替え歌がめちゃくちゃ上手くて面白いと教えてもらったんです」というきっかけだったそうだ。

  • 大村晴空君 (C)フジテレビ

■あえて“ネタかぶり”の狙い

従来のネタ番組ではタブーだったこととして、あえて“ネタかぶり”を発生させるという演出も取り入れている。

「千鳥さんがストーリーを作っていく番組なので、ネタがかぶってそうなのをあえて入れて、それにどうコメントするかという期待値を込めています。もちろん、芸人さんたちには『あの人とネタがかぶってます』とか『あの人も歌ネタになってます』というのを事前にお伝えしているので、(かぶっている同士の)化学変化で今までとは違って面白く見えないかというところも考えています」と狙いを明かした。

■どうしてもやりたかったオープニングの歌

千鳥のクセの強い衣装も特徴だが、「ネタを批評する人がスーツを着てると単純に偉い人に見えてしまうので、少しでも『お前らに言われたくねぇ!』ってなるように着ていただいてるんですが、そこを飛び越えて、ただ邪魔なものになってます(笑)。レギュラーになっても、ただ邪魔なものとして頑張っていきたいですね」。

また、オープニングで流れるオリジナルの番組テーマソングも、千鳥が「1人でひざを抱え 不安で泣いている少年よ」「ワシらが笑顔にするぜ」とセリフを発するなど、非常にクセが強いが、近年のバラエティでは珍しい。

「“クセがスゴい”ってなんだろうと思ったときに、“余分なものを見せる”ということでもあるかもと思って歌を作ってもらったんです。今どきオープニングで歌を歌うってないじゃないですか。しかも、CGを含めていい意味でちょっとダサい(笑)。普通の番組作りのセオリーだったら、トークやネタをもっと入れろとなるかもしれないけど、急に意味の分からない曲が始まったら『歌!?』ってなるじゃないですか。どうしてもそれがやりたかったんです」

さらに、「千鳥さんに『歌が流れるので、その後に“千鳥のクセがスゴいネタGP”と言ってもらうんですけど、その間にセリフがあるんです』って説明したときに『えー、嫌だな…』と思ってほしかったというのもあります。『俺らもこんなことしなきゃいけないのか』ってプレッシャーをかけようと考えました」と意図を教えてくれた。