お笑いコンビの千鳥がMCを務めるフジテレビ系バラエティ番組『千鳥のクセがスゴいネタGP』(10月8日スタート、毎週木曜21:00~ ※初回2時間SP)。ゴールデンタイムのレギュラーとして久々のお笑いネタ番組となるが、成立の背景には、ネタの見せ方から出演芸人の情報収集、さらにはオリジナルのテーマ曲まで、従来のセオリーにとらわれない制作陣の姿勢があった。

4月にレギュラー化された『有吉の壁』(日本テレビ)も、情報性のある番組のニーズが高いと思われていた平日夜7時台で純度100%のお笑い番組を編成し、従来の常識を打破して成功を収めているが、『クセスゴ』はそれに続くことができるのか。『全力!脱力タイムズ』のチームを率いて新番組に挑む、総合演出の名城ラリータ氏(フジクリエイティブコーポレーション)に、話を聞いた――。

  • 『千鳥のクセがスゴいネタGP』MCの千鳥(大悟、ノブ)

    『千鳥のクセがスゴいネタGP』MCの千鳥(大悟、ノブ)

■ネタを披露した人をどう解釈するか

この番組は、人気芸人たちが普段テレビで見せない“クセがスゴい”ネタを披露していくというもの。「本来、ネタ番組ならMCが目の前で見て、お客さんがいてというのが普通なんですが、コロナ禍の状況もあってそれをすべて省略して、ネタをVTR化し、別のスタジオで千鳥さんに見てもらうという形を取りました」と、成立の経緯を明かす。

さらに、千鳥がネタを見て発するコメントも含めて、1つのネタとして楽しむのが、大きな特徴だ。

「昔、『エンタの神様』でネタにテロップを入れるのはどうかという議論がありましたよね。あれは、お笑いファンじゃない人に向けて分かりやすくしたいという演出だったと思うのですが、それと似ている部分もあります。千鳥さんがネタを披露した人をどう解釈するかということで、すごく味わい深く見えたり、膨らんで見えたりするというのが、今の時代に合ってると思いますね」

特番2回目から具体例を挙げると、「エハラマサヒロさんがディズニーキャストのものまねをしたんですけど、千鳥さんが『普通に上手で面白いのに、なんで笑えないんだろう?(笑)』という見方を示してくれる(笑)。とにかく明るい安村さんが『R-1』の2回戦くらいまでいってる芸人さんのものまねをすると、千鳥さんが受けて話を厚くすることによって、その芸人さんの裾野や人物像が見えてくるんです」

ほかにも、トータルテンボス・大村朋宏の息子である晴空(はるく)君が、父をテーマに替え歌を披露して大きな注目を浴びたが、「大村さんがお子さんと一緒に出て『なんちゅー顔してんねん』までは僕らでも想像できるんですけど、千鳥さんがすごいのは、さらにバックボーンまで解説してくれるところなんです。普通なら『お子さん歌上手いな、表情カワイイな』となるネタだと思うんですけど、それを1個飛び越えて『子供に仕送りされた親がこんなふうになんねん』って哀愁が出るような話になるので、すごく面白かったですね。僕らもそういう人やネタをもっと探して提案していかなきゃいけないなと再確認しました」

この千鳥の役割は“副音声”のようなもので、「ネタの面白さをより増してくれるので、『たしかにそう思える』と共感してもらったり、『なるほどそう思えるんだ』という発見できたりすることが、すごく短いネタの中にいっぱい出てくると思います」と、新たなネタの楽しみ方を提示している。

  • エハラマサヒロ

  • トータルテンボス・大村朋宏(右)と息子の晴空君

  • (C)フジテレビ

■“おかわりタイム”の意味

番組の最後には、もう一度見たいネタの“おかわりタイム”も。これは、従来の番組でもある構成だが、『クセスゴ』では、そのネタをもう1回見せたときに、“千鳥が今度はどんなコメントをするのか”という変化がポイントだ。

「普通の“おかわりタイム”って強い作品をもう1回見るという感覚だと思うんですけど、それよりも『千鳥さんがもう1回見て、何を発見してくれるんだろう』というところに注目して見てもらえればと思います」と解説する。

それは、特番1回目で小島よしおが見せた「アスパラガスの歌」のネタで気づいたそう。「2回聴いてみると、『実は良いこと言ってるな』って(笑)。普通の番組なら、その時間で別のもう1組を出すと思うんですけど、違う見方で楽しんでもらえるように“グランプリを決める”という時間を作っています」