俳優の長谷川博己が主演を務めるNHK大河ドラマ『麒麟がくる』(毎週日曜20:00~)で、俳優の滝藤賢一が覚慶(足利義昭)役を演じている。第13代将軍の足利義輝(向井理)が殺害され、次の将軍の候補に。27日に放送された第25回「羽運ぶ蟻(あり)」では、還俗して足利義昭と名乗ったその後が描かれた。心優しい義昭の人柄が伝わる光秀(長谷川博己)とのシーンも登場したが、本作で描く足利義昭とは? 制作統括の落合将氏に、義昭、そして演じる滝藤について話を聞いた(以下、第25回の内容を含む)。

  • 『麒麟がくる』足利義昭役の滝藤賢一

第24回「将軍の器」では、覚慶は光秀に「私は戦が好きではない、死ぬのが怖い。人を殺すなど、思っただけでも恐ろしい」と本音を吐露。その姿を見て、光秀は将軍にふさわしくないと考えた。

そして、第25回「羽運ぶ蟻」。覚慶は還俗して足利義昭と名乗るも、受け入れを希望する越前・朝倉義景(ユースケ・サンタマリア)の態度が決まらず、近場で立ち往生を余儀なくされていた。そんなある日、義昭は、自分の体よりもはるかに大きな蝶の羽根を運ぶ蟻を見つける。そして、再び光秀と会った際にそのエピソードを語り出し、「仲間の蟻が寄ってきて手を貸そうとしたが、己だけで運ぼうとする。意地になっているのだ。蟻は私だ」と、自身をその蟻に例えた。

続けて、「将軍という大きな羽根は一人では運べん。しかし 助けがあれば」と義昭。まだ迷いはあると伝えた上で、「私が将軍になれば、今まで手の届かなかった人々を救えるかもしれん。そう考えると将軍になるのも悪くはない」と語り、光秀は「ご立派なお考えと思います」とその考えを称賛する。そして、光秀は義景に会った際、「たとえば強い大名方がお支えすれば立派な将軍になるやもしれません」と口添えするのだった。

心優しい義昭の人柄が描かれたが、本作における足利義昭について、制作統括の落合氏は「義昭は、武家に生まれてはいますが、まったく刀も持ったことがない、優しくそして弱い存在として描かれます」と説明。そして、「その優しさゆえに一度は信長に追放に近き目にあいますが、光秀に刻まれる義昭の『生き物への慈しみ』が、のちの光秀にどう影響を与えるか、そのあたりが物語のカギになるかもしれません」としている。

また、滝藤の起用について「幅広い演技をできる巧者で、武家の棟梁であるのに、武士にあらざる優しみを持つ、という難しい表現ができる方だと思い、義昭役をお願いしました」と明かし、「ご本人も『難しい役』とおっしゃっていましたが、現時点で見事に最後の将軍を演じきってくださっていると思います」と評価している。

印象的な蟻のエピソードは、脚本の池端俊策氏のアイデアとのこと。落合氏は「池端さんは動物や虫などをドラマの仕掛けとして多く使います。セット劇たるテレビドラマを熟知されてらっしゃるゆえのテクニックであるとも思っています」と語った。

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