特撮ドラマ『仮面ライダーゼロワン』(テレビ朝日)で主人公・飛電或人(仮面ライダーゼロワン)を演じた俳優の高橋文哉。現在19歳の彼は、令和初、そして21世紀生まれ初の仮面ライダーとなったが、8月30日に最終回を迎えたあとの心境について「心にぽっかり穴が空いた感じです」と、素直な気持ちを吐露する。

12月18日公開の『劇場版 仮面ライダーゼロワン』も待機中だが、高橋は仮面ライダーの重責を経て、何を得たのか。また、彼がこの先、目指していく俳優像とは? 「第31回 マイナビ 東京ガールズコレクション 2020 AUTUMN/WINTER ONLINE」に出演した高橋を直撃した。

  • 高橋文哉

燃え尽き症候群になったのは無理もない。高橋は「全身全霊をかけて『ゼロワン』に臨みました。1年間、毎日朝から晩までやってきた仕事で、もはや日常になっていたから、それがパッと急になくなった今、何かが足りないというか、ハマってないなという感じがします」と語る。

『仮面ライダーゼロワン』の舞台は、AIロボ=ヒューマギアと人類が共存している社会。「ヒューマギアをテーマにした作品でしたが、観ているみなさんに寄り添ってきた作品だったと思います。最終回では、ヒューマギアと人間の境目はないし、夢を持っていれば、みんなが仮面ライダーになれるという内容となり、すごく『ゼロワン』らしい最後になったなと思いました」と振り返る。

最終回の撮影について、「1カットだけ記憶がないカットがある」と言う高橋。「途中で倒れてしまって、周りの方が運んでくれたらしいのですが、その時の芝居をあとで観てみたら、台詞をちゃんと言えていたので、自分でも鳥肌が立ちました」

どうやら、気持ちが入り込みすぎたらしい。「自分の感情に対して素直にお芝居をしていたんです。或人がイズ(鶴嶋乃愛演じる秘書型ヒューマギア)のことを思い出すというシーンでしたが、その時に自分のなかでも、或人のなかでも1年間の思い出がフラッシュバックしたというか、或人に僕の魂を吸い取られたような感じになりました。すごく不思議な体験でした」と、その瞬間の感覚を伝える。

ラストシーンでは、イズ役の鶴嶋とギャグのアドリブに挑んだ。「或人がイズを復元させた時、やはりこれまでの記憶がなくて、悲しく感じるんです。或人としては、自分が何もできなかったという悔しい思いがあるから、それを全部、イズと一緒にギャグをすることで忘れようという気持ちになるのかなと思って、鶴嶋さんと相談し合って演じました。もともと台本では3行くらいしかないシーンでしたが、10行以上に引き伸ばしました。2人がやってきたことの集大成を監督に見せたかったので」

撮影が終わったあとには、監督から「本当に或人が文哉で良かったよ」というねぎらいの言葉をもらったという。「まだ冬に映画の撮影が残っているので、『映画が終わったら全部話すよ』と言われました。お叱りなのか、お褒めの言葉なのかはわからないですが、楽しみです。そして、映画もいい作品にしたいと思っています」

『ゼロワン』を通じて、俳優として大きな成長を遂げた高橋。「一番大きな収穫は、素敵なキャストや、スタッフのみなさんと出会いです。また、先程言った魂を吸い取られたような不思議な感覚もそうです。1年間、やっていてすごく楽しかったですし、今後の俳優人生に生かせればと思っています」と語る。

憧れの俳優は、窪田正孝。「憧れの人にすると、決して超えられないというのを漫画か何かで読んだことがあるのですが、窪田正孝さんだけはずっと憧れ続けています。僕は窪田さんの血管が好きなんです。もちろん、お芝居やお顔、人柄も大好きです。作品のメイキングをよく観るのですが、窪田さんは優しそうな人柄が伝わってきて、僕もこういう人間になりたいなと。そして、作品を観るたびに、お芝居の参考にさせていただきたいと感じます」と、すべてにおいて目標のようだ。

また、「僕は高校のころまでは調理師を目指していました。その理由は自分の料理で、誰かを笑顔にしたり、元気にしたり、『明日も頑張ろう』と思っていただけたらいいなと思っていたからです」と打ち明け、「そういう意味では、その想いは俳優になっても変わっていないです。このお仕事のいいところは、不特定多数の方々に笑顔や元気をお届けできること。今後も、どんどん精進して、僕の作品を観たいと思ってもらえる役者になっていきたいです」と力強く語った。

■高橋文哉(たかはし・ふみや)
2001年3月12日生まれ、埼玉県出身。『仮面ライダーゼロワン』(19~20)で、主人公の飛電或人/仮面ライダーゼロワン役を務める。映画は『劇場版 仮面ライダージオウ Over Quartzer』(19)や『仮面ライダー 令和 ザ・ファースト・ジェネレーション』(19)に出演。『劇場版 仮面ライダーゼロワン』が12月18日に公開予定。