「どこかに突っ込みを入れたいけど、欠点らしい欠点が見当たらない……」。トヨタ自動車の新型コンパクトSUV「ヤリス クロス」は、試乗会で開発者インタビューに苦労する(?)珍しいタイプのクルマだった。試乗記と開発者との対話は以下の通りだ。

  • トヨタの「ヤリス クロス」

    トヨタの新型コンパクトSUV「ヤリス クロス」に試乗!

ヤリス クロスはトヨタがデザイン、走り、ユーティリティ、安心・安全の全ての要件を兼ね備えたコンパクトSUVとして開発した新商品。デビュー後1週間ほどで月販目標予定(4,100台)の5倍近い約2万台を受注した大人気モデルだ。横浜で開催された試乗会では、ハイブリッド(HV)とガソリンエンジンで2WD(前輪駆動=FF)と4WDの両方を試し、開発者にも話を聞いてみた。

ハイブリッドは街中なら十分以上

最初に乗ったのは、このクルマで最も売れると思われるHVの2WD。グレードはトップモデルの「Z」だ。Bセグメント用のTNGA「GA-B」プラットフォームを採用したボディサイズは、全長4,180mm、全幅1,765mm、全高1,590mm。同じシャシーを共有する「ヤリス」より240mm長く、70mm広く、90mm高い。

  • トヨタの「ヤリス クロス」

    プラットフォームは共通だが「ヤリス クロス」(手前)は「ヤリス」(後)よりも結構大きい

試乗車のボディカラーはホワイトパールクリスタルシャインのボディにブラックマイカのルーフという2トーンで、ありきたりな表現だがとってもカッコいい。その白黒カラーと、つり目にちょっとアゴが出っ張ったような顔つきは、映画『スターウォーズ』に登場するストームトルーパーを思い出させた。

  • トヨタの「ヤリス クロス」

    ストームトルーパー顔? 「ヤリス クロス」のフロント

ドアを開けると、ブラウンの合皮とツイード調のファブリックを組み合わせた渋目のシートがお出迎え。最低地上高は170mmと普通車より少し高いだけなので、乗り込みに苦労することはない。とはいえ、ドライバーズシートに収まると目線が高く、ちょっと閉塞感のあったヤリスに比べてウエストラインが低いので、広い視界が確保されているのがわかる。

  • トヨタの「ヤリス クロス」
  • トヨタの「ヤリス クロス」
  • 内装はかなり渋い色調だ

搭載するのは91PS(67kW)/120Nmの1.5リッター3気筒「M15A-FXE」ダイナミックフォースエンジンに80PS(59kW)/141Nmのフロントモーターという組み合わせのリダクション機構付きTHSⅡパワートレーン。車重は1,190キロとこの手の車の中では軽く、出だしからスイッと押し出してくれる感じで誠に気持ちが良い。一定速度からの再加速時もアクセルのつきがよく、街中での走りなら十分以上の動力性能を持っている。

215/50R18という大径のタイヤは目地段差でちょっとショックを伝えてくるけれども、ボディ剛性の高さがそれをきちんと押さえ込んでいる感じ。後席の足元もヤリスに比べて広くなっていて、これなら長時間乗っていてもパッセンジャーから不満は出ないのではないだろうか。

凹凸の少ない荷室は容量390L。会場に用意してあった大型のスーツケース2個は余裕で積み込むことができた。ドアはキックモーションで開閉できる「ハンズフリーパワーバックドア」。4:2:4の分割リアシートや6:4のアジャスタブルデッキボードを工夫すれば、なんでも載せられそうだ。

  • トヨタの「ヤリス クロス」

    後席を倒せば自転車2台を積むことも可能とのこと

Zグレードに標準の大型オプティトロンメーターを見ると、チョイ乗りばかりを繰り返した試乗でも燃費は20km/L近くを表示していた。あれれ、欠点が見つからないではないか。

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    オプティトロンメーター。試乗では20km/L前後の燃費を示した