知っているようで知らない両親のラブストーリーを本格的にドラマ化する読売テレビ・日本テレビ系バラエティ特番『両親ラブストーリー~オヤコイ』が、17日・24日に2週連続で放送される。

第1弾が18年9月に放送されると、親の恋愛という普遍的なテーマをドラマ仕立てにして、スタジオにいる子供(=ゲスト)のリアクションとともに見るという斬新さが評価され、放送文化基金賞で優秀賞と企画賞、ATP賞テレビグランプリ優秀賞、アジアコンテンツ見本市最優秀賞と、さまざまな賞を獲得。今回、満を持して第2弾の放送となる。

「知りたいようで、知りたくないようで…」という複雑な感情を見事に引き出す“親の恋”という題材を、どのように番組として成立させていったのか。企画した放送作家の樅野太紀氏と、演出を手がける共同テレビの藪木健太郎氏は、その過程で番組作りに大切なことを改めて確認したという――。

  • 樅野太紀氏(左)と藪木健太郎氏

    樅野太紀氏(左)と藪木健太郎氏

■知りたいようで知りたくない…“両親の恋”

この企画を思いついた経緯について、樅野氏は「“知らないことを知る”って面白いなあというのをずっと考えていた中で、実家にいるときに『そう言えば両親ってどうやって出会って、どうやって恋をして、どうやってプロポーズしたのか知らないな…』と思ったのと同時に、『いや、でも知りたくないぞ? 気持ち悪いな…』とも感じたんです。そこから、『これって面白いんじゃないか。芸能人の方のご両親を徹底取材してドラマにして見せたら、今まで見たことないような顔が見れるんじゃないか』と考えたのがきっかけです」と明かす。

しかし、その企画をいくつかのテレビ局のスタッフにプレゼンしても、「あんまりピンとくる人がいなくて」と、樅野氏のパソコンの中で塩漬けされることに。その後、吉本興業の番組制作のスタッフから企画を求められて「これ持っていっていいよ」と渡してみたものの、リアクションはなかった。

それから3年後に突然、この番組のプロデューサーでもある吉本興業の森俊和氏から「樅野さん、通りました!」と電話が。企画を渡していたことを忘れていた樅野氏は「ごめん、何の話!?」と一瞬混乱したそうだが、こうしてようやく日の目を見ることになったのだ。

森氏は、『ENGEIグランドスラム』(フジテレビ)で一緒に仕事をしていた藪木氏に番組演出を依頼したいと相談。樅野氏は、もともとお笑いコンビ・チャイルドマシーンとして活動し、芸人時代に藪木氏が担当するCS放送のネタ番組『OFJ』に出演していた経緯があり、「売れてもいないのにたくさん番組に出させていただいて、すごくお世話になって感謝している人なので、『もうぜひ!』とお願いしました」と、今回のタッグが実現した。

■“本気のドラマ化”の狙い

長い付き合いの2人だが、それまで構成作家×演出として一緒に仕事をしたことはなく、藪木氏は「ロッチのコカド(ケンタロウ)と作家の酒井(義文)さんと、1回だけ4人で偶然飲みに行ったくらい」と振り返る。

『オヤコイ』の番組化が持ち上がったのは、藪木氏がフジテレビから共テレに出向したばかりのタイミング。「いろんなところに企画を持ってノックしていた時期で、藁にもすがる思いだったので、『ぜひやらせてもらいます!』とお願いしました」と、移籍第1弾の番組となった。

それまで、ほとんどの番組を企画から立てていた藪木氏にとって、他人の企画を番組にしていく作業は初めてのこと。だからこそ、「作った後に『自分でやりました』って言えるくらい自分のエッセンスを入れてやり込ませていただくと最初に言いました」と、気合を入れて臨んだ。

それを受けた樅野氏は「本当に熱を感じてすごかったです(笑)」と回想。「でも、藪木さんにやってもらって本当にラッキーだと思いました。たまに、いい加減にやるディレクターがいて、『クソっ! 俺の考えた企画なのに!』ってなることがあるんですけど(笑)、あんな熱量でやってくれて、本当に安心しました。これはうまくいってもいかなくても、本気でやってくれた結果になるから」と、全幅の信頼寄せていた。

  • ドラマパートより 竹財輝之助(左)と原田佳奈 (C)ytv

樅野氏は企画段階で、「再現VTRでもコントでも、そこは何でも良かったんです」と、本格的なドラマで見せるという構成は考えていなかったそう。

それに対し、企画を見て「当事者の子供は恥ずかしいけど、他人から見たらいい話でもあるという、捉え方にこれだけ差があるものってなかなかないので、面白そうだなと思いました」と直感した藪木氏は「これは正面からいかないとダメだな」と、“本気のドラマ化”というアイデアを打ち出した。

これにより、より見ている子供の恥ずかしさが増幅する効果が。さらに、「最後は“ありがとう”というところに持っていけたらいいなというのを、最初になんとなく思っていたんです。“恥ずかしい”からそこに転換するには、茶化しちゃいけないと考えました」(藪木氏)という。