“親の恋”という最も身近でありながら、誰もが触れずにきたことに着目した同番組だが、藪木氏は「良い企画って、“コロンブスの卵”なんですよね。今までそこにあったのに見過ごしてきたものを、樅野さんが気づいたということだと思います」と感心。

樅野氏は「やっぱりネットで調べて出てくる情報はいらないなと思って探したのが、“親の恋”だったんですよ。取材しないと絶対に出てこないものを伝えるのがテレビなんじゃないかと思うんです」と力を込める。

それを受け、藪木氏は「一次情報ってやっぱり魅力がありますもんね。ここ数年、“情報”を求められて作られたテレビ番組は、どこかで見たなという感じがあったじゃないですか。『ネットにしか出てないから、まだ一般には広がってないだろう』と甘い考えで作られていった番組というのは、やっぱり面白くないですからね」と再確認した。

■視聴率の新指標で「テレビが若返っている」

“情報”を求められてきたテレビ番組の制作現場は今、視聴率調査のサンプル拡大によってターゲットを重視した新たな指標に基づき、大きく変化している。日本テレビが重視する「コアターゲット」(13~49歳)の支持を受けるジャンルが、樅野氏も藪木氏も得意とするお笑い純度の強いバラエティだ。

樅野氏は「去年の今頃は、世帯視聴率重視で本当にお年寄り向けの企画しか通らない時期だったので、その頃『俺、こんなことしたかったんだっけ?』と思っていた自分に教えてあげたいです、『来年とんでもないことになるよ!』って(笑)。急に“お笑い、お笑い”になって、こんな日が来るとはと思いながら今、生きています。得意なこと、好きなことをやらせていただいているので、ラッキーですね。今年になってこんなに楽しい仕事があるとは、本当に幸せだなと思います」と充実の表情。

藪木氏は「『オヤコイ』も、ここまで本格的にドラマにするバラエティは他にないし、“親の恋”って掘るところも珍しい番組なので、今後も新基準で業界が進むのであれば、そういうポイントがグッと狭まったところに鉱脈があるんだろうなという気がします」と推測する。

さらに、樅野氏は「それこそ『オヤコイ』のように、今まで『こんなの通らないだろう』と思っていた企画を、もう1回掘り起こしてもいいかもしれないです。テレビの気持ちが変わって、本当に若返っている感じがするので」とも。

この良い流れを続けていくために結果を残すことが、作り手としては大きなミッションだ。

樅野氏は「フジテレビさんが大きなコント特番(『ただ今、コント中。』)をやって、ちゃんと数字も獲ったじゃないですか。そういうことがあると、『ああいう番組も見てくれるんだ』って希望があります。夢を持ってテレビ局に入ってきた人たちが『やったー! これがやりたかったんだ!』って言えるようになっていくといいですよね」と期待。

藪木氏は「演出家の色が出しやすい時代になってきているのかなとも思うので、これからも自分のやり方で面白いと思った番組を作っていきたいですね」と意気込んでいる。

●樅野太紀
1974年生まれ、岡山県出身。95年からお笑いコンビ・チャイルドマシーンとして活躍するも04年に解散し、放送作家に転向。現在は『しくじり先生 俺みたいになるな!!』『あいつ今何してる?』『ミュージックステーション』『関ジャム 完全燃SHOW』『かまいガチ』(テレビ朝日)、『有田Pおもてなす』『わらたまドッカ~ン』(NHK)、『有吉の壁』(日本テレビ)、『プレバト!!』(MBS)、『アウト×デラックス』『千鳥のクセがスゴいネタGP』(フジテレビ)などを担当。『しくじり先生』で第41回放送文化基金賞・構成作家賞、『両親ラブストーリー~オヤコイ』で第45回放送文化基金賞・企画賞を受賞。

●藪木健太郎
1971年生まれ、三重県出身。早稲田大学卒業後、95年にフジテレビジョン入社。照明部から02年にバラエティ制作に異動して『アヤパン』『力の限りゴーゴゴー!!』『笑う犬』『新堂本兄弟』『爆笑ヒットパレード』『エニシバナシ』『おじさんスケッチ』などを担当。『爆笑レッドカーペット』『爆笑レッドシアター』『THE MANZAI(第2期)』『うつけもん』『オサレもん』『ツギクルもん』『ENGEIグランドスラム』『笑わせたもん勝ちトーナメント KYO-ICHI』などのネタ・演芸番組を立ち上げ、18年から共同テレビジョンに出向。『両親ラブストーリー~オヤコイ』(読売テレビ)のほか、『ザ・ベストワン』(TBS)、『NHKだめ自慢~みんながでるテレビ~』(NHK)、『ネタX(エクス)チェンジ』(読売テレビ)などを手がける。