8月30日、Billboard Live YOKOHAMAを会場に”Animelo Summer Night in Billboard Live”(※以下:アニサマナイト)が開催。翌年へ順延となってしまった”Animelo Summer Live 2020 -COLORS-”(※以下:アニサマ2020)にかわり、「STAY HOMEでも本格的なアーティストのライブを届けたい」との想いから立ち上がった新企画だ。

今回は無観客・オンラインライブといった形式。今年だけの普段とは少し違ったオトナな雰囲気のなか、確かな実力を持つアーティストが存分にその歌声を響かせていった。

●歌える喜び、歌声を味わえる喜び――ふたつが交差するBillboard Live YOKOHAMA

まずトップバッターとして、鈴木愛奈が登場。本来ならば今年ソロでの初アニサマのステージを踏むはずだった彼女はまず、アコースティックなアレンジの「やさしさの名前」を披露。伸びやかかつ温かな歌声を響かせていきなり心をぎゅっと掴むと、「次の曲は、お好きなヒカリのイロで……」との言葉に続けて、自身初のアニメ主題歌「ヒカリイロの歌」へ。

こちらもアコースティック気味のアレンジに合わせて、歌声も普段より柔らかめではあったが、神々しさと力強さを兼ね備えた非常に伸びやかなものである点は不変。”生バンドを背負ってこの曲を歌えていることへの幸せ”にあふれた笑顔も、非常に印象深く胸に残るものだった。

歌唱後には「エモーい!」と叫びながら袖からオーイシマサヨシが登場。その歌声を絶賛すると、彼女と「やさしさに包まれたなら」のコラボへ。歌い出しを担当したオーイシの歌声は、まるで青年に一歩足を踏み入れた少年のようなウィスパー気味の優しいもので、サビでは主線を執る鈴木愛奈の厚みのある歌声と絶妙に絡み美しいハーモニーを生み出す。また、ここでも心から楽しそうに歌っていく鈴木愛奈の姿から、さらなる多幸感を受けた視聴者も少なくなかったのではないだろうか。

曲明け、ひとりステージに残ったオーイシはアコギをかき鳴らすと、「アニサマナイトじゃなきゃ、ダメみたーい!」の雄叫びとともに「君じゃなきゃダメみたい」をスタート。今度は一転してファンキーな歌声で耳目を惹きつけると、続いては”広告宣伝課長”に就任したキンカンのCMソング「キンカンのうた2020」へ。

今度はMV同様にダンスも披露したのだが、この日は感染予防のためかヘッドセットではなくそのままスタンドマイクで歌唱。そのため、首の角度などの問題で歌唱が難しい部分も確実に存在するはずなのだが、そういったハードルを一切感じさせない歌声には、ただただ脱帽だ。そして最新シングルから「世界が君を必要とする時が来たんだ」を歌い、ソロの出番の締めくくりへ。アニメ作品に寄り添いながらオーイシ節も全開の楽しすぎるナンバーで、ラブソングやCMソングと合わせて披露することで、彼のアーティストとしての幅の広さも再認識させてくれた。

●会場の雰囲気との相性抜群! な面々が次々登場する前半戦

そして袖に向かってオーイシが再び”鈴木さん”を呼ぶと、登場したのは鈴木雅之! 実は昨年のアニサマがきっかけで、オーイシは鈴木雅之への楽曲提供やベストアルバムへの参加を果たしていたのだ。そんな彼がこの日コラボしたのは、前述のベストアルバムでも共演した「夢で逢えたら」。序盤からオーイシの上ハモなど美しい聴きどころ満載で、特に注目すべきだったのは落ちサビ以降。

まずオーイシが主線を執る部分で歌詞を「アニサマで逢えたら」と替えると、それに呼応して鈴木雅之も大サビの歌詞をチェンジ。オーイシが担った終盤のセリフ部分も、アニサマ2020-21双方に想いを馳せるかのようなこの場限りのものにアレンジ。名バラードを、”アニサマファン”という具体的な存在に向けて届けてくれたのだった。

ここでオーイシは降壇。鈴木雅之が「次の”鈴木さん”をみんなに紹介してみたいと思います」と鈴木愛理を呼び込むと、そのまま「DADDY! DADDY! DO!」がスタート。楽曲・歌声はもちろん、バンドメンバーも含めた全景が映された瞬間のBillboardの似合いっぷりは随一で、鈴木愛理もボーカルワークはもちろん、表情も含めたセクシーなパフォーマンスで楽曲の魅力をさらに高める。

さらにもう1曲、「ラブ・ドラマティック」もこのふたりで続けて披露。2010年代末に生まれた新たなアニソンにおけるデュエット定番曲を、歌声・パフォーマンス両方の掛け合いを感じながら観られたことに、純粋に嬉しさを覚えてしまった。

この曲で前半戦は終了。一旦休憩を挟み、後半の幕開けを飾ったのは三森すずこ。まずはピアノ1本をバックに「夢飛行」をしっとりと歌唱する。華麗なダンスパフォーマンスが魅力のひとつでもある彼女だが、この日はダンスは封印。優しさをたたえた表情で穏やかにこの曲を届けると、続けてスタァライト九九組の「Fly Me to the Star」をソロで歌唱。

後のMCでも「九九組メンバーの想いも背負って」と語ったように、ピュアさのある歌声に情感をたっぷり乗せて歌いきってみせる。そして「今年も(九九組で)カバーやりたかったなぁ……」とこぼしたところで、今年はソロで「薔薇は美しく散る」をカバーしていく。

間違いなく九九組にも似合うであろうこのナンバーでは、力強くも要所要所で歌声をふわりと柔らかく聴かせるなど、巧さもみせて自らの出番を締めくくった。

そしてアコースティックギターの独奏を挟み、ステージに登場したのは早見沙織。デビュー曲のアレンジバージョン「やさしい希望(Bossa Nova)」を優しく、画面の向こうにいる一人ひとりに寄り添うように歌って会場を多幸感であふれさせると、ミドルポップ「Jewelry」へ。

自身も楽しみながらも、音源以上の声の厚みやパワーを込めて歌唱。その歌声で、「大丈夫 信じることがパワー」といったフレーズをサビに持ち、落ちサビでは「また会えるよね」とも歌われるこの曲を届けることで、視聴者に単なる楽しさだけではなく生きる活力も与えてくれているようだった。

そして最後に、会場に非常にマッチするジャジーなナンバー「ESCORT」を披露。楽曲の有するグルーヴ感を歌声でさらに増幅させ、画面越しでも圧倒されてしまうようなステージを最後まで繰り広げてくれたのだった。