消費税が10%になり、景気の落ち込みを防ぐために、キャッシュレス決済をすることによるポイント付与制度が設けられました。今では、コンビニで若い世代が現金で支払っているのを目にするのは少なくなってきました。いよいよ現金派とは言っていられない状況になってきたようです。現金派が初めて本格的にキャッシュレスに転向するときには、どのようなことに気を付ければよいのでしょうか。

キャッシュレス決済の種類

何10年も昔の話ですが、銀行のキャッシュカードに自動的にデビット機能がついているのを知りませんでした。住宅ローンを借りるために、新たに銀行口座を作る際には何の説明もありませんでしたので、かなり長い間知らないままでした。問題は機能をよく知らずにキャッシュレス社会に組み込まれてしまっていた点です。キャッシュレスへの流れは今後も加速しますので、知らないでは済まされなくなりそうです。

キャッシュレス決済と言っても、その形態や方法は様々です。古くはテレホンカードなどもキャッシュレスの部類に入りますし、クレジットカードやデビットカードも長く利用されてきています。キャッシュレスには、どのような種類があるのかまとめてみましょう。

精算のタイミングによる違い

実際にお金の精算を行うタイミングで3つの方法に分けられます。

  1. 前払い方式(プリペイド) Suicaなどの電子マネー等
  2. 即時払い方式 デビットカード等、その場で口座から引き落としになるもの
  3. 後払い方式 クレジットカード等の決められた指定日に口座引き落としになるもの

決済読み取り方法による区分

  1. 磁気カード
  2. バーコード
  3. ICカード(接触型・非接触型)
  4. QRコード

磁気カードはスキミングリスクが高く、読み取り方法も次第に安全性が高いものに変わりつつあります。

キャッシュレスのメリット

1. コストの削減

銀行の店舗は縮小していっています。店舗がなくなり、ATMだけになり、それもなくなったりしています。お金を流通させるにはコストがかかるのです。そもそも紙幣は偽造を避けるために定期的に新しい図案にする必要がありますし、そもそも印刷費用も膨大です。また、消費者側も、キャッシュレス化によるポイント獲得などメリットがあります。

2. 業務効率化

店舗でいえば釣銭の用意、現金の集計、現金の預け入れなど、日々の業務が簡素化できます。決済アプリなどで、新たな事業がやりやすくなっていきます。集金が簡素化し、確実になれば、新たな事業も安心して進められます。

3. 決済時間の短縮

レジで、金額が決まってからお財布を探して、小銭を探して、延々と手間取っている高齢者が少なくありません。スマホやカードで決済時間はかなり短縮できそうです。何よりもお財布不要なのは利便性が高いでしよう。

4. グローバル化

日本と比較して外国はキャッシュレス化が進んでいますし、そもそも外国との取引はキャッシュレスです。グローバル化の時代に、日本の企業だけが決済のためのコストを掛けなければならないのであれば、競争には不利となります。

また外国からの旅行客も当然キャッシュレスでないと不便です。いちいち通貨を交換していたら手数料もかかりますし面倒です。消費意欲もいくらか低減するでしょう。

5. お金の流れの透明化

キャッシュレス取引には記録が残ります。いずれマイナンバーが銀行預金等と連動するようになれば、ますます透明化していくと思います。家計簿アプリに自動的に反映もできます。

キャッシュレスのデメリット

1. お金の使い過ぎ

お財布の現金がなければ、使い過ぎはある程度防げます。キャッシュレス決済は口座に残高があれば引き落とせますので、つい使い過ぎてしまう傾向にあります。本格的にキャッシュレスに移行する際にはお金の管理の仕組みも一緒に導入しましょう。

2. 個人情報の提供

現金取引であれば、どこの誰が何を買ったかなど、誰にもわかりません。しかし、キャッシュレス決済やポイントカードなどを使うと、その情報を支払先に提供することになります。

3. 不正や情報漏洩のリスク

偽造紙幣のニュースは最近あまり聞きませんが、磁気カードやQRコードの偽造問題や顧客情報の漏洩問題は度々ニュースになっています。アプリの不正も話題になりました。

4. 記録の分類保管が難しい

キャッシュレス決済は記録が残りますし、家計簿アプリなどに自動的に反映も可能です。しかし、どうでもよい消費の記録と年金保険料などの数十年先の権利を確保するための記録では重みが大きく異なります。権利を守るためには記録の分別保管が大切です。国民年金保険料の納付はクレジット払いができ保険料の割引にもなります。保険料支払いの記録の入手方法はいろいろありますが、保険料の納付書の保管が最も簡単です。

私も、もらえる年金額確認に出向いた時、社会保険事務所から「記録がありません」と言われました。記録保持のためにあえて納付書方式で納付していたので、納付書の束をドンと担当者に突き出して調べなおさせました。もちろん記録は見つかりました。キャッシュレス支払いの場合は必要に応じて記録の保管方法を別途検討ください。

5. 災害時に使えない可能性

非常時には回線が使えない可能性があります。回線を使わないスマホ利用のキャッシュレス決済など、災害対策も必要です。私は回線利用のものしか使っていないので、非常用持ち出しのバッグにテレホンカードやとっさの用が足せる程度の紙幣と小銭を入れています。1万円札よりも千円札、100円といった小銭の方が非常時には使い勝手が良いでしょう。

キャッシュレス機能の使い分け

うっかりお財布を忘れた経験が一回はあるのではないでしょうか。今やスマホを忘れたら大変です。いろいろ持つと管理が大変ですし、使い過ぎや紛失のリスクも高くなります。次のようなことに注意して最適なものを選択ください。

  1. 安全性と盗難、紛失、災害時の対策
  2. サービス範囲が自分とマッチしているか
  3. 機能が重複する無駄がないか
  4. 割引やポイントで節約できるか

キャッシュレス化の加速は、やはり社会の中でメリットが大きいからにほかなりません。ただしそれは経済が優先され、必ずしも個人の安心・安全につながるとは限りません。もちろん個人が安心して使えなければその制度は進展されにくいので安全性は追及されてはいくでしょうが、その先は自己責任となります。社会の変化が加速すれば、自己責任の範疇も拡大するのです。

今後はQRコード等を読み取って、支払いや様々な手続きができるサービスがますますひろがっていくでしょう。お店で受けるサービスのほかに、ネット環境で様々なサービスも受けられる範囲が広がっていくでしょう。キャッシュレス化は高齢者にはハードルが高いと思われがちですが、高齢になるほど自宅で決済できたり、手続きできたりするようになれば便利になるはずです。