先代モデルの生産終了から4年の月日を経て、ようやく日本上陸を果たしたランドローバーの新型「ディフェンダー」。試乗してみて思ったのは、ギア感満載のこのクルマ、ひょっとすると、スズキ「ジムニー」で楽しく遊んでいるようなクルマ好きにはバッチリ刺さる1台かもしれないということだ。

  • ランドローバーの新型「ディフェンダー」

    新潟県妙高市で開催された試乗会で新型「ディフェンダー」にじっくり乗ってきた

本格オフローダーとして長い歴史を持つ英ランドローバーの「ディフェンダー」。先代モデルは2016年に生産終了となっていたが、いよいよ新型が日本に上陸した。2019年に先行予約が始まった150台限定の「ローンチエディション」(納期は2020年夏)はわずか数日で売り切れたというから、新型を待ち焦がれていたファンの熱量の高さは想像に難くない。

新型ディフェンダーには、大きく分けると2つのタイプがある。ショートホイールベースで3ドアの「90」(ナインティ―)とロングホイールベースで5ドアの「110」(ワンテン)だ。試乗したのは、先に日本導入が始まる110の方である。

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    試乗したのは5ドアの「110」

オンロード性能の高さにまずは一驚

70年以上にわたって4WDのプレミアムSUVを作り続けてきたランドローバーにとって、ディフェンダーは同社の歴史そのものだ。初代は1948年のランドローバー「シリーズ1」で、そこから1958年の「シリーズ2」、1971年の「シリーズ3」、1983年の「90/110」、1990年の「ディフェンダー90/110」(ここで初めてディフェンダーの名が与えられた)と長い歴史を経てきた。

シリーズ最新作は垂直・水平基調のデザインがオフローダーであることを物語る本格派だ。丸目2灯のヘッドライト、横開きの後部ドアに取り付けられたスペアタイヤ、リアルーフ左右のアルパインライトウインドーなどで旧型をオマージュしながらも、21世紀のディフェンダーとして全面刷新を受けている。

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    旧型へのオマージュが随所に見受けられるデザイン

新型の最も大きな進化は、「D7x」と呼ばれる新しいプラットフォームを採用した点だ。これまではラダーフレームにボディを乗せる構造を連綿と守り続けてきたディフェンダーだが、新型は軽量アルミのモノコック構造を採用。このボディ、耐久性試験や垂直衝撃試験など計6万2,000回の過酷なテストを乗り切り、極地やサーキットなどで総距離120万キロのテスト走行を重ねた筋金入りである。シャシーのねじり剛性は、これまでの3倍という強靭さを獲得した。

試乗した110の足回りは、フロントにダブルウィッシュボーン、リアにマルチリンクを採用した電子制御エアサスペンションを搭載していた。その効果は、駐車場から一般道に乗り出してすぐに分かるほど。フラットでスムーズな乗り味はまるで、高級セダンをドライブしているような感覚だった。

エアサスには、クルマの動きを毎秒最大500回モニターし、ドライバーの操作や路面状況に対応する「アダプティブダイナミクス」を装備。背の高いボディでも、コーナーをほとんどロールすることなくサラリと通過できてしまう。さらに静粛性が抜群で、足元に255/65R19の大径オフロードタイヤを履いていることが想像できないほどロードノイズが遮断されていた。さらなる乗り心地を求める向きにはオールシーズンタイヤまで用意されるというけれども、このままでも十分以上の乗り心地である。

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    試乗車は大径オフロードタイヤを装着していたが、オンロードでの静粛性は抜群だった

ステアリングに備わる「ACC」(アダプティブクルーズコントロール)もついでに試してみたが、当然ながら、車線キープを行いながらきちんと追従運転をしてくれた。これは、価格が倍以上のメルセデス・ベンツ「Gクラス」もウカウカできないほどの出来栄えだ。

新型ディフェンダー110のボディーサイズは全長4,945mm、全幅1,995mm、全高1,970mmと巨大である。最小回転半径も6mを超えるので、慣れないドライバーにとっては取り回しが不安になるかもしれない。これに対してディフェンダーは、ルーフに搭載したカメラで後方を映し出す「クリアサイトインテリアリアビューミラー」(10万4,000円のオプション)や、12.3インチセンターディスプレイにクルマとその周囲の景色を合成して投影することができる3Dサラウンドカメラを搭載することで対応した。こちらは車体の前後と周囲の9カ所からドライバーが任意の方向を選び、実際にすぐ近くにあるクルマ、人、モノなどが確認できるというもので、使ってみると意外と便利な機能であると感じた。

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    巨大なクルマなので取り回しに不安を感じるかもしれないが、駐車の際などには3Dサラウンドカメラからの映像が役に立つ

今のところ、日本導入モデルのパワートレインは「インジニウム」2.0リッター直列4気筒ガソリンターボの一択で、トランスミッションは8速ATとの組み合わせだけだ。車重が2,240キロと超ヘビー級なので、動力性能についてはちょっと心配になるけれども、実際は最高出力300ps(221kW)/5,000rpm、最大トルク400Nm/2,000rpmとかなり強力。走行中はギアリングもこまめに適切な変速を繰り返していて、試乗コースの登り坂などでも過不足ないパワー感が伝わってきた。

燃費はWLTCモードで8.3km/Lだが、それをどうこう言うクルマではないだろう。本国仕様には、より強力な3.0リッターMHVモデルがあり、電動化という面では、アドベンチャー走行に耐えられるようなシステムを積んだ仕様が今後、出てくる可能性はあるかもしれない。

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    日本導入モデルは2.0リッター直列4気筒のガソリンターボのみだが、パワー不足だと感じることはなかった