独創的なデザインを持ち味とするレンジローバーのSUV「イヴォーク」がフルモデルチェンジを経て2世代目となった。一見すると、先代との違いが分かりづらい新型イヴォークではあるが、乗り味を含め、どのように進化したのか。試乗して確認してきた。

  • レンジローバーの新型「イヴォーク」

    レンジローバーの新型「イヴォーク」に試乗した

初代はインパクト大! 新型は?

ジャガー・ランドローバーが展開するSUV「レンジローバー」の中で、プレミアムコンパクトSUVに位置づけられるのがイヴォークである。日本では2012年に発売となった初代イヴォークには、驚かされたものだ。モーターショー向けにランドローバーが作ったコンセプトカーが、姿かたちをほとんど変えず、そのまま登場したようなデザインだったからだ。

SUVでありながら四角い箱型ではなく、スポーティーなクーペのような造形を採用していたのが初代イヴォークの特徴だった。その後、イヴォークには幌の屋根を持つオープンカー(コンバーチブル)まで登場した。街中を走る乗用車としてのキャラクターを前面に押し出すことで、悪路走破性を魅力とする4輪駆動車の印象を大きく変えたクルマだったのである。

やや小柄なSUVであることから、ランドローバーはイヴォークをコンパクトSUVに分類している。このクルマの後に続き、日本国内においてもホンダ「ヴェゼル」やトヨタ自動車「CH-R」などのコンパクトSUVが登場した。「価格も手ごろで身近なSUV」という新しいクルマの在り方を広めるきっかけになったのはイヴォークだったのだ。

そのイヴォークが今回、フルモデルチェンジを経て2世代目となった。新しくなった点は①イヴォークの最たる特徴である造形、②SUVとしての性能の向上、③最新技術の搭載の3つだ。

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    新型「イヴォーク」の価格は461万円~821万円

「還元主義」を取り入れた新型「イヴォーク」

外観は、イヴォークならではの「SUV×クーペ」というスタイルを踏襲している。ランドローバーでは、レンジローバーの4車種目として2017年に発売した「ヴェラール」から「還元主義」(Reductionism)と呼ぶデザイン哲学を取り入れているが、新型イヴォークもこれを採用した。還元主義とはつまり、「引き算の美学」のような考え方だ。

一見したところ、新型イヴォークの外観に前型と大きく異なる部分は発見できないが、ランドローバーのコンセプトカー「LRX」には、より近づいたような気がする。

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    新型「イヴォーク」のドアハンドルは、使う時にだけせり出してきて、それ以外の場面では格納されている。これも、還元主義を見てとれるポイントだ

室内を見ると、ダッシュボードとセンターコンソールには、カーナビゲーションと車両情報などを表示する2つの液晶画面が設置されている。前型に比べ、運転席は先進的な印象だ。

カーナビゲーションの画面には、未舗装路を走る際に役立つ機能が搭載されている。運転席から見えにくい車両の斜め前方下の路面状況を、カメラ映像の画像処理により、のぞき見るような様子で表示させることができるのだ。乗用車的な印象の強いイヴォークだが、この「クリアサイト グラウンドビュー」という機能は、このクルマが実は悪路走破に長けたSUVであることを思い出させてくれる。

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    新型「イヴォーク」の内装。運転席は先進的な印象だ

そればかりでなく、新型イヴォークは実際に、未舗装路での基本的な走行性能を向上させている。例えば、アプローチアングル(クルマ先端の最下部と前輪の接地面が作る角度のこと)とデパーチャーアングル(アプローチアングルの逆、車両後部下の角度)は先代よりも大きくなった。この角度が大きくなれば、急斜面を登ったり降りたりする際、車体が路面に接触しにくくなる。道を選ばぬ走行性能が向上するのだ。河川を横断する際に重要な水深への対応は、先代に比べ10cm深い60cmまで進入可能となっている。

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    クルマの前後下部に大きなスペースがあると、急斜面を登ったり降りたりしやすい

パワートレインについては、レンジローバー初のマイルドハイブリッド搭載車が加わった。48V仕様のベルト駆動によるスターター・ジェネレーターを用いる仕組みで、特に発進からの加速などでエンジン出力を補ってくれるシステムだ。この機能は、ガソリンエンジンを搭載する「R-DYNAMIC」という仕様で採用となっている。

イヴォークが取り入れた最新技術を押さえておくと、前述した「クリアサイト グラウンドビュー」のほかに、屋根に取り付けたカメラで後方の様子をルームミラーに映し出す「クリアサイト インテリア・リアビューミラー」がある。スマートフォンにあらかじめ入力しておくことで、空調や連絡先などをドライバーに合わせた設定にしてくれる「スマートセッティング」も便利な機能だ。

意外に広い車幅に注意? 新型「イヴォーク」に試乗

今回の試乗車は、マイルドハイブリッドを体験できる「R-DYNAMIC HSE P300 MHEV」と導入初期の限定車種「ファーストエディション」の2台だった。

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    試乗した「R-DYNAMIC HSE P300 MHEV」(フィレンツェレッド)

レンジローバーらしいSUVとしての持ち味をより深く味わえたのは「ファーストエディションの方だった。ガソリンターボエンジンを搭載し、最高出力249psを発揮する「SE」というグレードをベースに、装備を充実させた車種だ。マイルドハイブリッドでなくても加速の力は十分だし、サスペンションの動きもしなやかで快適な乗り心地だった。

それに対し、マイルドハイブリッド搭載の「R-DYNAMIC HSE P300 MHEV」は、発進の時にモーターの力がやや強く出過ぎるため、飛び出すような動きがあった。慣れればアクセルペダルの踏み込み方で調整できるが、最初の動き出しでは驚かされた。

サスペンションの設定は、まるでレースコースでも走行するためであるかのように硬く、路面の影響を受けるので振動が強かった。路面状況に合わせてドライブモードを切り替えることができるので、試しに砂地を走る設定に切り替えてみると、乗り心地は改善した。標準設定の硬さは、後席の座り心地にも影響を及ぼす。そのため、「R-DYNAMIC HSE P300 MHEV」はあまり快適とはいえなかった。

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    試しに選択してみた砂地用のドライブモードは、舗装路でも意外と快適に乗れた

乗り心地については、好みが分かれるところでもある。だが、クルマとしての全体的な調和は、ファーストエディションの方に分があるように思えた。

前型と新型で、車体の寸法はほとんど変わっていない。わずかに新型が大きくなる程度だが、試乗をしてみると、車幅の広さが気になった。特に、郊外へ向かう際などに走ることのある地方の道幅では、すれ違いなどで車幅の広さにかなり神経を使った。格好はいいが、扱いでやや気遣いを必要とするクルマだといえる。コンパクトSUVといえども、ヴェゼルやCH-Rに比べれば、かなり幅の広いクルマなのだ。

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    新型「イヴォーク」のボディサイズは全長4,380mm、全幅1,905mm、全高1,650mm。コンパクトSUVという触れ込みだが、「ヴェゼル」や「CH-R」と比べれば新型「イヴォーク」は幅の広いクルマだ

電気自動車(EV)のSUVであるジャガー「I-PACE」は、イヴォークに近い車幅を持つ。それでも、I-PACEに乗った時は、車幅に対し、あまり神経質にならずに済んだ。I-PACEはエンジンを搭載しないというEVらしさを表すため、フロントウィンドウの支柱であるフロントピラーを前方へ押し出した造形としていることから、運転中は左側の支柱が視野の端に入り、車幅感覚がつかみやすい。このあたりに、運転のしやすさを感じる理由があるのではないだろうか。

初代イヴォークは、SUVの中では他に類を見ない独特な存在として目を引くクルマだった。新型も、そこが最大の魅力である。一方で、都会で乗るにしても郊外へ出かけるにしても、その独特な造形を成り立たせている車幅の広さが、運転する上では気になるポイントになる。

格好がよく、独創的なものを求める人には新型イヴォークをオススメできるが、造形の美しさを追求するのであればヴェラールという選択肢もあるし、独創性では同じジャガー・ランドローバーグループのI-PACEを選ぶ手もある。独自性がイヴォークの持ち味ではあるが、ほかの選択肢が充実してきたことにより、新型では、その強みがそれほど感じられなくなっているような気もする。

著者情報:御堀直嗣(ミホリ・ナオツグ)

1955年東京都出身。玉川大学工学部機械工学科を卒業後、「FL500」「FJ1600」などのレース参戦を経て、モータージャーナリストに。自動車の技術面から社会との関わりまで、幅広く執筆している。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。電気自動車の普及を考える市民団体「日本EVクラブ」副代表を務める。著書に「スバル デザイン」「マツダスカイアクティブエンジンの開発」など。