誰もが知り、使用している言葉「編集」。編集という言葉は、視覚的なものにまつわるものと考えがちですが、捉え方を広くすることで、ビジネスシーンのさまざまな場面で便利に使用できます。今回は、編集という言葉について少し考えてみましょう。

編集を知る

「編集」という言葉は、何か視覚的なものを作るときなどによく使うイメージがあります。また、パソコンの操作のひとつとして画面表示にも使われています。

  • 編集を知る

    「編集」について深く考えてみましょう

日常に溶け込んでいる「編集」という言葉ですが、具体的に意味を調べたことはありますか? 意味を知りそれを深く掘り下げることで、ビジネスシーンでも活用できるようになります。

編集とは

編集という言葉の意味は「資料や素材を、構成、配置、調整などの作業をして、書籍や新聞、テレビやラジオ番組、映画などにまとめること」です。編集をする際は必ず何らかの目的があり、受け手に与える印象を左右することにもなるため、とても大切な作業工程といえます。

付加価値をつけることができる編集

編集の仕方によって、編集対象にさまざまな付加価値をつけることができます。渋谷のスクランブル交差点の写真を例に考えてみましょう。

山や森など大自然の写真を隣に置くと、スクランブル交差点の写真は「都会の風景」という意味を持つ写真に見えてきます。

また、スクランブル交差点の写真の横に、シャッター通り商店街の写真を置くと、スクランブル交差点の写真は「活気のある街」という意味を持つ写真に見えてくるでしょう。

何かを構成したり、組み合わせたり、配置したりすることで、そのものの価値を変えることや、新しい価値を生み出すことが可能になります。このように受け手に印象づけていくことが、編集の目的なのです。

効果的な編集で人を動かす

では、目的を達成するための編集の工程を、もう少しくわしく解説しましょう。編集の基本を知れば、さまざまなことに応用ができます。

  • 効果的な編集で人を動かす

    編集の工程をより詳しくみていきましょう

情報を集めて分析する

まずは編集対象の最終的な形を考えながら企画を立てますが、そのときに重要なことが、情報の収集と分析です。理想とする最終形にするためには、既存の理想的な事例や、類似した事例の印象など、情報をたくさん集めて細かく分析します。

「どのような共通点によってその印象になるのか」「その印象を抱く人々に共通する視点は何か」など、さまざまな情報を集めて分析を行い、理想形を作るために必要な要素を発見していきます。

企画と構成で人を惹きつける

情報分析ができたら、対象物を編集する企画を立てます。そして、その企画に沿った内容の構成を考え、必要な素材を集めて、対象物で伝えたいことがより受け手にしっかり伝わるようにしていきます。この企画を立てて構成を考える工程も、印象を左右する大切なことです。

発信の方法も考える

最後に、企画して構成した内容を、どのようにして発信していくかを考えます。視覚的にわかりやすい発信方法や話し方の工夫、または発信者の変更など、発信の方法でも印象はガラリと変わるため、あらかじめ情報分析してきたデータが重要になってきます。

ビジネスと編集

編集工程の概要を把握したところで、ビジネスシーンにどのように活用できるのか考えてみます。

  • ビジネスと編集

    編集のスキルはビジネスにどのように生かせるのでしょうか

ビジネスシーンにも、企業や顧客に商品の魅力を伝えたり、自分が考えていることを社内で発表したりと、誰かに何かを伝える場面が多いものです。 相手に与える印象をあらかじめ分析しながら伝えると、いい結果につながりやすくなります。

話の構成を考える

まずはどのような構成で話をしていくかを考えます。構成のおおまかな流れは「はじめ→本題→まとめ」です。

本題の構成に集中しがちですが、はじめとまとめの部分もとても大切になってくるので、構成に必ず組み込みましょう。受け手が初対面であれば、軽い自己紹介から入るのもおすすめです。場の緊張感をほぐくための内容だと、受け手の関心が集まりやすいでしょう。

本題に向けては、結論を先に伝えるのか、世間話から入るのか、本題に関連するニュースやトピックを交えた話などがあります。受け手が共感しやすい内容だと、関心を惹きつけやすいです。

本題は根拠とそれに関連する事例を持ち出すと、相手に説得力を与えることができます。結論を明確にして話すと、話の内容がブレずに、結論が強調されてわかりやすくすることが可能です。

まとめは、質疑応答の時間を設けて、リスクに対する解決策を話しましょう。相手の考えも質疑のやりとりで聞き出すことができます。

8割は視覚から情報を得る

ことわざにも「百聞は一見にしかず」とあるように、人間は情報の8割を視覚から得ているといいます。つまり、印象に残りやすいものは、視覚からの情報が多いということです。プレゼンテーションでは視覚的なツールをぜひ有効活用しましょう。

プレゼンテーションの資料などは、全体的なわかりやすさと、強調したい部分がはっきりしていると、情報が頭に入りやすくなります。色使いは、背景色と文字の色を合わせて4色でそろえると、すっきりとして強調箇所もわかりやすくなります。

強調したいものは大きく、わかりやすく、目立つように表示しましょう。強く印象づけるために何度か繰り返し表示することもよく使われる方法です。

編集力が説得を左右する

編集とは、いろいろなものを組み合わせ、構成したり、または取捨選択して不要なものを削ぎ落としたりする作業の総称です。さまざまな目線から観察して、不要なものは思いきって削ぎ落とす選択を取れるかどうかも大切になってきます。

伝えたいことやそれに必要なこと以外を削除すれば、そのスペースや時間に、よりわかりやすい例を組み込んで受け手の気をひくこともできます。必要な情報と不要な情報の取捨選択は、編集作業のなかでも注意深く行いましょう。

「編集」を日常で役立てる

編集という言葉の捉えかたを少し変えるだけで、日常のいたるところに編集はあることがわかります。そして編集の役割を深く知ることで、さまざまな場面に応用ができます。

人と話す、何かを作る、どこかに出かける、たくさんの人の前で発表する、企画を立てるときなど、日常生活やビジネスシーンで、編集は私たちを支えてくれています。