先が見えにくく、生きにくい現代社会。「しんどいなぁ……」と感じることは誰しもあるでしょう。しかし、多くの人は、そのしんどいことを簡単に「あきらめる」ことはしないのではないでしょうか。でも、そんな「我慢」ばかりの人生で、本当に幸せですか。

今、Twitter界隈で話題の「プロ奢(おご)ラレヤー」氏(以下、プロ奢氏)。彼の生き方や考え方に触れると、少しは気持ちが楽になるかもしれませんよ。

  • Twitter界隈で話題の「プロ奢(おご)ラレヤー」氏

「お金」と「見栄」を捨てたら得られたもの

プロ奢氏は現在23歳。彼はここ3年半ほど、いわゆる労働はせず、「人から奢られること」で生きています。

「僕は、人に比べて欲が少ない。だからお金もそれほど必要ではない。なので、就職して、毎日嫌な仕事をして、給料をもらわなくても生きていけるんです。それって、大きなアドバンテージだと思っているんですよね」。

また、プロ奢氏は、人の目も気にならないと言います。

「僕は基本、目の前の人を同じだと思っていないんです。他人からの評価って、評価する側の軸の中で自分がどう測られているかっていう話。例えば、アフリカの先住民に、『俺は牛を30頭飼っているんだ』ってマウントを取られても何とも思わないじゃないですか。それは民族が違い、物事に対する尺度が違うから。僕にとって人の目っていうのはそういうもの。それがデフォルトなんです」。

  • 「プロの奢られ屋」として活躍するプロ奢ラレヤー氏

「お金」と「見栄」を捨て、人から奢られることで生計を立ててきた3年半。プロ奢氏は、そうした生活を通じて、たくさんの「暇」、「経験」と「知見」、「良き友人」を得たそうです。さらに今では、なぜかお金が沸く体質になったと。彼は、自身のこの生き方、今の生活に、満足していると語ります。

3,000人に奢られ、「興味のないこと」が明確に

プロ奢氏がこれまでに出会った人=奢られた人は約3,000人。活動初期の1,000人くらいまでは、自分は人に会うのが好きで、人に興味があるのだろうと思っていたそうです。でも、1,000人を少し超えた頃から、そうではないことに気付いたのだそう。

「人に会う行為は好きなんです。でも、回数を重ねるごとに、目の前の人の、人間性とか社会性の先にあるものが見えてくるようになると、それが面白いんだってことに気付いたんですよね」。

また、そうして人と向き合う時間は、自分との対峙の時間でもあると言います。

「何千もの人と会っていると、相手との差分から自分が見えてくるんですよね。鏡を見ているように。そうして僕は、自分が何に興味や関心を持っていないのかということが、明確に分かるようになりました。

例えば、よくお金のことについて聞かれるんですが、繰り返し聞かれるたびに、『本当にお金に興味ないな』って実感するんですよ。それが分かると、そのことに時間やエネルギーを割かずに済むようになるわけで、すると、一気に部屋が片付くというか、気持ちがすっきり豊かになるんですよね。

もちろん、逆に興味のあることも分かるけど、生きている中で作用が大きいもの、効いてくるものは、興味のないこと。好きなものって移ろうけど、嫌いなものって、人間あんまり変わらないんですよ。自分の無関心を知るっていうのは、結構大事なことなんじゃないですかね」。

  • 自分の無関心を知るのは大事だろうと話すプロ奢氏

さらにプロ奢氏は、回数を重ねることの重要性についてこう語ります。

「よく、人生のターニングポイントだとか、劇的に考えが変わったきっかけ、みたいな話がありますけど、あれって、ある時突然ドラマチックな変化が起こったわけではなく、すでにその前に同じようなことに1,000回触れていて、1,001回目に変わっただけなんですよね。僕はそう思っている。

興味ない、興味ないなって1,000回思うと、それを捨てられる。人生からそれが消える。何回目かは人によって違うけれど、回数ってわりと大事なポイントで、何事も、回数でどうにかなると僕は思っていますね」。

「自分らしく力を配分」すれば、しんどくない人生が送れる

プロ奢氏は、自身の生き方についてこう説明します。

「最大の成果を得ようと思った時に、10ある力を10出すべきな人と、5で抑えるべきな人がいるんですよ。どの程度の力を出したら成果が出るかは個体差がある。僕の場合は2ぐらいがちょうどいい。それくらいなら、長期的に見た時に出し続けられるんです。それ以上出すと、途中で飽きてやめちゃったりする。

仕事も、社会においては1日8時間が基準になっているけれど、もっとやれる人、あと1時間やってきちっと終わらせた方が次の日も頑張れるっていう人と、8時間はきつくて、5時間だったらやれるのにっていう人がいると思うんです。僕は30分でいい。そっちの方がいいんですよね。単にそれだけ。全力を出していないんじゃなくて、それが一番いいんです。

自分でその配分を決められるかどうかは環境に左右されると思うし、そう簡単にはできないでしょうが、僕みたいに、それがあまりにも社会の設定するものとかけ離れている人は、どうにかして自分で設定できるようにした方がしんどくないし、長期的にはお得ですよね」。

  • 「僕が力を出すのは1日30分でいい」と言う

プロ奢氏は、なぜそれほどまでに達観したものの見方ができるのでしょうか。その質問に対し彼は、「僕は人の2~3倍生きていますから」と答えます。

「社会って、労働によって成り立っていますよね。そんな社会に身を置いている人、その時間軸で生活している人たちにとって、本当に生きている時間、自由な時間っていうのは、金曜日の夜から月曜日の朝までの2.5日。それが僕には7日あるんです。それだけ僕は、相対的に人生が長い。ゲームに例えれば、ダウンロードしたタイミングは同じでも、プレイ時間が違う。僕はずっとそれだけやっているから、進みが早いんです」。

そうして有り余るほどの時間を使い、自分自身と向き合っているプロ奢氏。彼の独特な生き方や考え方は、そうした日々の中から生まれてきたようです。

「どんなに野球が好きで、一生懸命練習しても、高校球児の99.98%の人はプロ野球選手にはなれません。これって、確率的にほぼなれないと言っていいんですよ。残酷ですけど、実際の世の中の普遍的な事実は、知っている方がよくないですか。

それでもあきらめずにピラミッドの頂点を目指すことには、僕は否定もしないし肯定もしない。それがかなうかどうかは、その人自身が知っているはず、というか自分しか知り得ないですよね。

僕は、誰かを先導するつもりもないし、自分の生活や生き方を他人がどう捉えるかということにも興味がない。ただ、僕がどう考え、どうしているかを示すことは、もしかしたら意味があることなのかもしれないなとは思っています」。

取材協力:プロ奢ラレヤー(ぷろおごられやー)

1997年生まれ。高卒。他人に奢られることで生きている「プロの奢られ屋」。常人離れしたライフハック力が現代人の心を揺さぶり、Twitterフォロワー数は9万人超、noteの有料会員数も3千人を超える。著書に『プロ奢ラレヤーのあきらめ戦略』(祥伝社)など。