住民票の申請や年末調整、確定申告など、公的書類などには家族の続柄を記載する機会が多いです。しかし続柄は性別のように必ず決まっているのではなく、場合によって書き方が異なり、書類により使い分けなければなりません。この記事では社会人として知っておきたい続柄の意味や書き方などについてご紹介します。
続柄の意味と読み方
身内を示す言葉は種類が多く、「続柄」といわれても何を書けばよいかわからないことも多いです。ここでは続柄とはどういうものなのかについて解説します。
続柄の意味
続柄は、戸籍簿や住民票などの書類に記載される表現で、ある人同士の関係を客観的に示す用語です。戸籍法では「実父母または養親との続柄を記載する」と定められています。
昔は、家長を中心とした家制度があり、以下のように定義されていました。
- 先代の家長(戸主)が死亡した場合は、次の家長がその家の稼業や財産すべてを一人で相続する(明治31年民法、明治民法、旧民法)
- 「届出人と戸主との続柄を記載する」(明治31年戸籍法)
家長の条件も定めがあり、多くは長男が相続を行っていたのです。
- 直系
- 前戸主と親等が近い
- 男子優先
- 嫡出子優先
戸籍に続柄が明記されていると、家長(世帯主)からみて誰がどういう立場なのかがわかりやすくなります。
正しい読み方は「つづきがら」
続柄の読み方は「つづきがら」です。誤って「ぞくがら」と呼ぶ人が多いことから、辞書などで「ぞくがら」は俗読みなどとして紹介されることも増えてきています。
なお、続柄を「続き柄」と表記することも可能です。正式な表現ではありませんが、「続き柄」と間に「き」を入れることで誤読されにくくなります。
続柄は自分と親族との関係を示す
続柄はおもに基準となる人と親族との関係を示します。
親族とは、六親等内の血族、配偶者、及び三親等内の姻族のことです。血族とは、親、祖父母、子、孫のように直接血がつながっている人たちで、姻族とは配偶者の両親のように結婚により親戚関係になった人たちです。
続柄としてよく使われるのは世帯主からみた続柄と、あなたからみた続柄です。世帯主は世帯の代表者であり、年齢や性別を問わず住民の申告により決まります。
たとえば、両親と2人の男児からなる4人の世帯で、夫が世帯主の場合には、続柄は以下のようになります。
- 世帯主からみた続柄:世帯主(基準)、妻、長男、次男
一方第二子が続柄を記載する場合は以下のようになります。
- 第二子からみた続柄:父、母、兄、本人(基準)
このように続柄はどの人物を基準とするかによって異なります。
欧米の身分登録制度との違い
日本の戸籍制度は父母の名前や続柄などを含めて管理していますが、諸外国で同様の制度を取っている国は少ないです。欧米では、個人単位で出生、結婚、死亡といった出まれてから死ぬまでの民事的な身分関係を管理する形がみられます。
公的書類でよく使われる続柄
公的書類に記載される続柄について解説します。
住民票における続柄
住民票は転居や免許証の更新の場合などに必要となる公的書類です。住民票は「住民の居住関係を公的に証明」しています。
住民票の写しには「氏名」「生年月日」「性別」「住所」「住民となった年月日」「届け出日および従前の住所」が記載されます。また、選択により「世帯主の氏名と世帯主との続柄」「本籍及び筆頭者氏名」が記載可能です。
住民票の写しに続柄を記載する場合に最も特徴的なのは、子どもに対する表記です。子どもの続柄は「長男」「次男」のような続柄を使われることもありますが、この表記は住民票では用いません。
過去の戸籍や住民票では、「長男」「長女」「二男」「二女」「男」「女」のように条件に応じ分けて管理していましたが、現在ではプライバシーの保護の観点などから、世帯の子どもはすべて「子」で統一されています。
世帯員 | 続柄 |
---|---|
世帯主 | 本人・世帯主 |
配偶者 | 妻、夫 |
夫婦と血縁関係のある子ども | 子 |
夫婦と血縁関係のない子ども(養子) | 子 |
世帯主の父母 | 父・母 |
配偶者の父母 | 妻の父・妻の母 夫の父・夫の母 |
兄弟姉妹 | 兄・弟・姉・妹 |
内縁の夫 | 夫(未届) |
内縁の妻 | 妻(未届) |
配偶者の連れ子 | 夫の子・妻の子 |
税金関係における続柄
税金関係の書類では「世帯主の続柄」と「あなたとの続柄」とを使い分ける必要があります。
- 世帯主の続柄:世帯主からみた自分の続柄
- あなたとの続柄:自分からみた対象者(世帯主、扶養家族など)の続柄
年末調整における続柄
年末調整では「世帯主」「扶養親族」等について「あなたとの続柄」を記載する欄があります。
世帯主が「夫」の場合に、自分は世帯主の妻だからと誤って「妻」と書いてしまう場合がありますが、「あなたとの続柄」は自分から見て世帯主はどういう続柄かを書く必要があります。
あなたとの続柄の書き方
- 一人暮らし、または自分が世帯主:本人
- 父または母が世帯主:父または母
- 夫または妻が世帯主:夫または妻
- 夫の父(義理の父)、夫の母(義理の母)が世帯主:義父、義母
確定申告における続柄
確定申告では「世帯主」「世帯主との続柄」を記載します。 年末調整の場合とは違い、世帯主からみた自分の続柄を記載する必要があります。
世帯主との続柄の書き方
- 一人暮らし、または自分が世帯主:本人
- 父または母が世帯主:子
- 夫または妻が世帯主:妻または夫
- 夫の父(義理の父)、夫の母(義理の母)が世帯主:息子の嫁、息子の妻、娘、継娘、義理の娘
続柄の書き方
親族の範囲は意外に広く、異母兄弟、異父兄弟、認知された非嫡出子、養子、連れ子なども親族です。ここでは、各親族の続柄の表現方法について整理します。
本人、配偶者の続柄
- 本人の続柄:「本人」
- 配偶者の続柄:「夫」「妻」
- 事実婚の続柄:「夫(未届)」「妻(未届)」
婚姻届けを出さない限り戸籍上は独身ですが、住民票については事実婚の続柄を記載することができます。
子ども、孫の続柄
- 娘や息子など自分の子どもの続柄:「子」
- 再婚相手の子どもの続柄:「夫の子」「妻の子」
- 事実婚で再婚した相手の子どもの続柄:「夫(未届)の子」「妻(未届)の子」
- 届出が出せない事実上の子どもの続柄:「縁故者」
- 孫の続柄:「子の子」
子どもはすべて「子」とすることも多いですが、もとの続柄は「子」と記載することがほとんどです。
また出生順を記載する場合は、長男、二男、三男…のように長子以降は漢数字で記載します。
両親、義理の両親の続柄
- 両親の続柄:「父」「母」
- 妻(夫)の両親の続柄:「妻(夫)の父」「妻(夫)の母」
配偶者の両親について義父、義母、舅(しゅうと)、姑(しゅうとめ)と表現する場合がありますが、行政手続き上は用いません。
兄弟、義理の兄弟の続柄
- 兄弟の続柄:「兄」「弟」「姉」「妹」
- 妻(夫の兄弟の続柄:「妻(夫)の兄」「妻(夫)の弟」「妻(夫)の姉」「妻(夫)の妹」
行政手続き上は「主人の上から2番目の兄」のように兄弟の出生順を表す必要はありません。一般的には主人の兄、義理の兄、といった言い方をする場合もあります。
祖父母の続柄
- 父方の祖父母の続柄:「父の父」「父の母」
- 母方の祖父母の続柄:「母の父」「母の母」
通常は祖父、祖母、夫の祖父、夫の祖母という言い方をしますが、続柄は出生を応用に「父の父」という表現を用います。
おじおばの続柄
- 父方の叔父や叔母の続柄:「父の兄」「父の弟」「父の姉」「父の妹」
- 母方の叔父や叔母の続柄:「母の兄」「母の弟」「母の姉」「母の妹」
おじおばも祖父母の場合と同様に関係を追いかける表現となります。 なお、日常的に使われるおじおばの表記は、相手の年齢を踏まえて「伯叔」の使い分けが必要です。
- 年上のおじおば:伯父伯母
- 年下のおじおば:叔父叔母
その他の続柄
- 届出できない事実上の子:「縁故者」
- 子どもの夫や妻の続柄:「子の夫」「子の妻」
- いとこの子どもやはとこの続柄:「縁故者」
- 親族でないが一緒に住んでいる人の続柄:「同居人」
続柄は誰を基準にした関係なのかが重要
続柄は親族とある人との関係を示したもの。続柄は祖父母を父の父、父の母と記載するなど特徴的な表現がいくつかあります。また、誰からみた続柄を書くかが書類により異なります。指定の内容を確かめて正しい続柄を書くようにしましょう。