元A級棋士の橋本崇載八段相手に完勝! 順位戦通算成績は31勝1敗に

第79期順位戦B級2組(主催:毎日新聞社・朝日新聞社)の2回戦、▲藤井聡太七段-△橋本崇載八段戦が7月6日に東京・将棋会館で行われました。結果は85手で藤井七段の勝利。開幕2連勝で、連続昇級に向けて順調な滑り出しとなりました。

戦型は先手の藤井七段が左美濃、後手の橋本八段が矢倉となりました。腰掛け銀に構えて4筋からの仕掛けを見せる藤井七段に対し、橋本八段は専守防衛の姿勢です。銀を繰り替えてさらに固めようとした橋本八段でしたが、一瞬の隙を藤井七段は見逃しませんでした。

橋本八段は守りをさらに強固なものにするために、5三の銀を4三に移動させようと、一旦△4二銀右と銀を引きました。銀は金と違い、1手では横のマスに移動できないため、銀引きはどうしても必要な動き。しかし、上部の守りが手薄になったこの一瞬の隙を、藤井七段は見逃しませんでした。

藤井七段は▲4五歩と仕掛けて銀を五段目に進め、▲3五歩~▲2四歩と連続で突き捨て。そして▲4四歩と打って橋本陣の上部から襲い掛かります。仕掛けから流れるような攻めが決まり、20手ほど進んだ局面では藤井七段が角銀交換の戦果をあげていました。後手からは変化の余地のない完璧な攻めだっただけに、もしかしたら△4二銀右、さらにはその前の作戦自体が良くなかったのかもしれません。

橋本八段は苦しいながらも辛抱を重ね、局面を落ち着かせます。ここで焦った攻めを先手がしてきてくれれば、後手も手駒を蓄えて反撃のチャンスがあります。ところが、ここでも藤井七段は非凡な指し回し。敵陣にじっと▲8二角と打って、桂香を取りに行きました。あまりにも落ち着いた方針で、とても17歳の指し手とは思えません。

ゆっくりしているとさらに駒損が拡大してしまう橋本八段。中央からなんとか藤井陣に攻め込もうとします。しかし、これは攻めたというよりも攻めさせられた格好。先ほど書いたのとは逆に、後手が焦った攻めをして、先手が反動を利用して一気に反撃するという展開になってしまいました。もちろん、この流れに誘導したのは藤井七段です。

結局、橋本八段の攻めは藤井玉には届きませんでした。と金を作ったところで、飛車取りに香を打たれて投了となりました。飛車を逃げれば橋本玉が詰まされてしまいます。

すばやい仕掛けから一気に優位に立ち、その後は相手の攻めを敢えて呼び込む落ち着いた指し回しで勝利した藤井七段。王手を一度もかけさせない、まさに完勝でした。敗れた橋本八段は局後に「こちらがとぼとぼ歩いている間に一瞬で抜き去られた。積んでいるエンジンが違う感じがした」とお手上げ気味の様子で本局を振り返りました。

藤井七段はこの勝利で順位戦通算成績は31勝1敗となり、前代未聞の成績をさらに良化させました。また、今年度成績は12勝1敗に。王座戦二次予選で大橋貴洸六段に敗れただけです。2つのタイトル戦を同時に戦っているさなかにこの成績は驚異的。まだ早すぎますが、今年度も勝率8割超えは堅いのでは、と思わせられる好調(順調?)ぶりです。

終局直後の藤井七段。橋本八段の配慮で感想戦は行われなかった(提供:日本将棋連盟)
終局直後の藤井七段。橋本八段の配慮で感想戦は行われなかった(提供:日本将棋連盟)