「スーパー戦隊シリーズ」では、巨大化した怪物と戦うヒーローたちが「巨大メカ」あるいは「巨大ロボット」を駆使して戦うのが大きな見どころとなっている。

『バトルフィーバーJ』のバトルフィーバロボや第4作『電子戦隊デンジマン』(80年)のダイデンジンなどは、1年間で一度も敵と戦って敗れたことのない無敵ぶりを誇っていたが、第10作『超新星フラッシュマン』(1986年)では、改造実験帝国メスの猛威によって、フラッシュマンの巨大ロボット・フラッシュキングが"大破"するというショッキングな場面が描かれた(第15話)。

大ピンチのフラッシュマンにとって救いとなったのは、フラッシュ星に伝説として語り継がれていた「英雄タイタン」の遺したトレーラー型の巨大メカ「フラッシュタイタン」だった。フラッシュタイタンはタイタンボーイとグレートタイタンという2種類の巨大ロボに変形するメカで、これに乗って地球へ飛来してきたのが、メスの裏切り者レー・バラキだった。

バラキは英雄タイタンの死のまぎわにフラッシュタイタンを預かり、100年もの間フラッシュマンにこれを託す日が来るのを待っていたという。見た目こそ怪人のようなレー・バラキだが、その魂はまさしくヒーローと同じもの。バラキはメスの攻撃によって倒されてしまったが、彼から譲り受けたフラッシュタイタンはフラッシュキングと並んでフラッシュマンの頼もしい仲間となり、メスの魔手から地球の平和を守り通した。

スーパー戦隊に新たなメカ、巨大ロボットをレギュラーメンバーへと"託す"ために来たキャラクターとしては、第14作『地球戦隊ファイブマン』(1990年)でスターファイブと共に地球へやってきた「宇宙の暴れウルフ グンサー」や、第15作『鳥人戦隊ジェットマン』(1991年)で裏次元ディメンシアからジェットガルーダに乗って現れた3人の戦士(レイ、カンナ、ダン)がいた。彼らは"スーパー戦隊の最大の危機を救いに現れる"という最高のシチュエーションもあり、いずれも強い印象を残している。

先の『超獣戦隊ライブマン』でのブラックバイソン、グリーンサイも新メカ「バイソンライナー」「サイファイヤー」が合体した巨大ロボット「ライブボクサー」に乗ってライブマンに合流したキャラクターといえる。スーパー戦隊のさらなるパワーアップに貢献した新ヒーローというカテゴリーには、『恐竜戦隊ジュウレンジャー』のドラゴンレンジャーも入っており、ドラゴンシーザーが大獣神と合体して「獣帝大獣神」に、そしてキングブラキオンとの合体で「究極大獣神」が完成する。ドラゴンレンジャーは、それまでの「新メカ・新ロボをもたらしたキャラクター」の新しい形であり、発展形だったということができる。

激レア新戦士

これまで述べたように、『恐竜戦隊ジュウレンジャー』でドラゴンレンジャーが登場するまでのスーパー戦隊は、初めから終わりまでメンバー編成が大きく変動することはまれであった。そんな中でも、イレギュラー的に出現した「幻の"追加戦士"」と呼ぶべきキャラクターが存在する。ここからはそんな"レア"な戦士たちをご紹介しよう。

『超電子バイオマン』は先に述べたように、500年前にバイオ粒子を浴びた若者たちの血をひく者しかバイオマンになれないという条件があった。第35、36話に登場した山守正太(演:黒崎輝)は山で育った野性児で、超人的な身体能力を備えた明るい若者。山でジュンに一目惚れした正太は自分もバイオマンのように悪と戦いたいと願い出るが、彼の肉体からはバイオ粒子反応がなく、仲間入りを拒絶されてしまった。悔しさを隠せない正太は新帝国ギアに操られ、邪悪な「マグネ戦士」に変貌してバイオマンを攻撃することになるのだが、出自や立ち位置の異なる者でも「追加戦士」として認められる近年の「スーパー戦隊シリーズ」ならば、正太も見事「6番目の男」となって一緒に戦うことができたのではないかと思うと、いまさらながら残念な気がしないでもない。

第11作『光戦隊マスクマン』(1987年)の第39話「復活!謎のX1マスク」では、マスクマンのプロトタイプ「X1マスク」が1度限りの登場を果たしている。赤、黒、青、黄、桃のマスクマンカラーと被らない「緑」のスーツに身を包み、目と鼻と口が造型された『バトルフィーバーJ』を思わせる仮面を被ったX1マスク/飛鳥リョウは、たった1回だけとは言わず、もっと活躍してほしかった名キャラクターだった。

第13作『高速戦隊ターボレンジャー』(1989年)のレッドターボ/炎力たち5人の高校生は、子どものころ「妖精」の光を浴びたことにより、ターボブレスを用いてターボレンジャーへと変身することができる。しかし第43話「6人目の戦士!」では、彼らと同じく妖精の光を浴びていた同級生の山田健一がブルーターボ/浜洋平のブレスを盗み、ブルーターボになるという珍事件が起こった。山田にはターボレンジャーになる条件こそそろっていたが、基礎的な運動能力が不足している上に、戦士として必要な"勇気"が欠けていた。このことを痛感した山田は、最終的にブレスを洋平に返して普通の高校生に戻っている。

『鳥人戦隊ジェットマン』では第40、41話の前後編エピソードにて、密かに戦闘訓練を積んだ実力者だけで構成された「ネオジェットマン」が登場し、変身不能になったオリジナル・ジェットマンに代わって次元戦団バイラムと戦う姿が描かれた。

しかし、戦士の自主性を重んじるジェットマンの小田切長官とは対照的に、戦士たちを消耗品としかみなしていない非情な一条総司令の下で任務にあたるネオジェットマンの5人は、本来の能力を発揮しきれていないまま前線から撤退。ふたたびジェットマンに地球の守りを託すようになる。「正規のスーパー戦隊の存在をおびやかすライバル戦隊」という魅力的な設定を持つネオジェットマンもまた、スーパー戦隊ファンにとって忘れられないキャラクターとなりえた。

長い歴史を誇る「スーパー戦隊シリーズ」だけに、初の「追加戦士」ドラゴンレンジャーが登場してからも、追加戦士とは異なるポジションでいくつかの戦士たちがレギュラーメンバーの支援を行うさまざまなケースが見られた。『行って帰ってきた烈車戦隊トッキュウジャー 夢の超トッキュウ7号』(2015年)のトッキュウ7号/(元)車掌や、『帰ってきた手裏剣戦隊ニンニンジャー ニンニンガールズVSボーイズ FINAL WARS』(2016年)のミドニンジャー/九重ルナのように、Vシネマや映画作品のみに登場したスペシャルな戦士たちの活躍も、ここに特筆しておきたい。