――本作は機動捜査隊(通称:機捜)の物語ですが、機捜のイメージは変わりましたか?

綾野:源ちゃんは機捜の人と会っていたけど僕はそういうことをしていなくて、『ドラゴンボール』など少年漫画ばっかり読んで伊吹を形成していきました。気づいたことは、最悪なケースになる前に止められる可能性が初動捜査にはあり、すでに最悪のケースが起こってしまっていても、二次被害を止められる部署が、とても伊吹に合っているような気がしました。また、事件を起こしてしまった犯人がどういう人なのかということよりも、なぜ事件を起こしてしまったのか、そこから目をそむけないという姿勢でやられていることを、このドラマで機捜に触れて体感させられています。

星野:僕はそもそも機動捜査隊を知らなくて、でも知らない人も多いと思うんですよね。捜査一課はドラマや映画にもよく出てくるのでみなさん見ていると思いますが、その捜査一課の人たちが出ていく前に機動捜査隊が初動捜査をするということを、設定資料をもらったときに知り、しかも24時間勤務で、そこから数日空いてまた24時間勤務という、不思議な勤務体制も含めて面白いなと思ったし、なんてドラマ向きなんだろうと思いました。24時間の中で2人の主人公が解決するぞっていうところで、観ている人の気持ちもどんどん盛り上がっていきそうだなと思いました。

――星野さんは実際に機動捜査隊の方にお会いしたんですね。

星野:元機捜の方とお会いできました。すごく優しい方でしたし、すごく普通の人間の方だったんですけど、やはり目の奥が、命をかけて戦ってきた人の目をされているというか、言いようのないオーラを発していて、自分たちには想像が及ばない部分があるんだろうなと思いつつ、相棒がいかに大事かという話をしてくれたときに、そこは自分にもわかる部分だなと思いました。(相棒とは)「家族以上に一番長くいる人になるから、何から何まで全部話す」っておっしゃっていました。ずっと車の中にいて何かあったら出ていく。主体がトークで、相棒の仲も深まるというのは、ドラマの中で生かせるなと。警察官は当たり前に人間だというのが、ストーリーの中でもすごく出ていると思います。

――演じている役の印象を教えてください。

綾野:伊吹はとにかく機嫌がいい人。あとは、切り替えが早いですね。ネチネチしていない、そんな悩まない、そういうメリハリが利いている人で、こういう友達がいっぱいほしいなって思うくらい。自分が語る以上のことを芝居でやってしまっているので、そんなに語れることがないんですが、とても魅力的で、物語を引っ張る力を持っているキャラクターであるのは間違いないです。

――演じていて楽しいですか?

綾野:あんまり演じているという感覚はないです。役作りという役作りもしてないですし、とりあえず少年漫画を読んでいて、最近は青年漫画もちょっとずつ入れていっていますけど、本当にそれくらいで(笑)。自分を捨てて役になりきるのはとてもいいことだと思いますが、僕はそのやりかたも散々やってきてもういいかなと思ったので、自分のいいところを伊吹にもアウトプットして、僕と伊吹を合体させていく。より自分らしくやらせてもらっていて、源ちゃんがいるからそういう風に思えたというのもあったと思います。

――星野さんは志摩の印象はいかがですか?

星野:ものすごく推理力と思考力が高くて、刑事に向いていて、優秀な男。もともとは捜査一課にいたんですけど、いろいろあって4機捜に来るというところから話がスタートします。彼はパッと見、だらっとしていて、言葉遣いも荒く、人に対して熱く語るようなところはないと見せかけておきながら、捜査になると急にものすごく熱くなったりとか、急にすごい推理を発揮したりする。その中で、闇をずっと背負っているところがあって、なぜ彼がこうなっていったかだんだん明らかになっていきますが、演じていてすごく楽しいです。

――野木さんの脚本の魅力はどのように感じていますか?

綾野:脚本が面白いのは当然なんですけど、脚本より映像化したほうが面白くなるように作られているのかなっていうくらい、映像化したことで完結する脚本だということが前提になっていると思いました。カット割りが普通のドラマの倍くらい多く、かつ、セリフがかぶることってなかなかないんですけど、ダブルトークでやっていたり。空間をどうしていくか、現場にいろんなアイデアを生み出させる台本だと思います。

星野:僕は野木さんの作品は3作目なんですけど、僕は野木さんの人間性がまず好きなんです。あと、表現への姿勢が。根底に伝えたいことがあったり、今この物語を世の中に放つといいことがあるんじゃないかという、強いメッセージがいつも込められている。それを1話完結の連ドラに組み込むエンターテインメントの技量もすごい。読んでいるだけでワクワクドキドキします。

――予告を見ても、カーアクションが激しいなと。撮影の感想やエピソードを教えてください。

綾野:いやーすごいよね、源ちゃん。やりながら自分たちでも驚くほど。まずは、何に感謝しないきゃいけないかっていうと、ああいうカーアクションを撮らせてくれる街や自治体ですよね。場所はさまざまなところで撮っています。『西部警察』や『あぶない刑事』などとも違うコンプライアンスの中、2020年のカーアクションスタイルという意味では、スタントのみなさんと僕たちのコラボレーションが明確になっています。CGではどうにも出せない、重力に立ち向かっている車の感じをしっかりと描いていて、しびれます。僕と源ちゃんどっちもドリフトのシーンがあるんですけど、テンションぶちあがりますね。

星野:1台大変なことになるからね (笑)。そういうことをテレビドラマでは最近全然ないなと思っていて、台本見たときにどこまでやるんだろうと思っていたけど、ここまでやるんだって。みんなで工夫して安全に、でも、今までにない面白いものを作るぞという情熱をすごく感じるし、企業秘密なくらい面白い撮り方をしているんですよ。撮影の仕方もたぶん今までに誰もやっていないようなやり方で、それもあって今までに見たことのない映像になっていると思います。