■神戸市営地下鉄北神線、市バスとの両立が課題か

北神急行線の市営化に合わせて神戸市バスも再編され、系統の新設・延伸により、神戸北町地区や衝原(つくはら)地区から谷上駅へ市バスが乗り入れるようになった。駅前のバスターミナルを観察すると、谷上駅を起点に周辺の交通網を整備したいという神戸市の意図が透けて見える。

谷上駅は駅ビルもある高架駅だが、駅周辺に大型商業施設は存在しない。ここから神戸電鉄の新開地行に乗り換え、隣の箕谷駅へ。駅から3分ほど坂を下ると、市バスの箕谷駅前停留所があり、神戸北町と三宮駅ターミナル前を結ぶ市バス64系統が立ち寄る。

日中時間帯における市バス64系統の所要時間は、神戸北町~地下鉄三宮駅前間が約40分、箕谷駅前~地下鉄三宮駅前間が約20分。運賃は神戸北町~地下鉄三宮駅前間が500円、箕谷駅前~地下鉄三宮駅前間が450円。神戸北町地区はベッドタウン化したエリアのため、三宮方面へ直行する市バス64系統はつねに混雑している。夕方のラッシュ時など、三宮駅前の停留所で行列ができることも珍しくない。

神戸市交通局は北神急行線の市営化に合わせ、神戸北町~谷上駅間に市バス62系統を新設。谷上駅を経由しない64系統を減便することで、市バスから北神線へのシフトを目論んだ。しかし、地元住民らは谷上駅周辺の交通渋滞などを理由に、市バス64系統の減便に反対した。その結果、日中時間帯も15分間隔で運行されている。一方、市バス62系統の本数は1日10本にも満たず、現状では神戸北町から谷上駅経由で神戸市営地下鉄北神線へ、利用者が大幅にシフトするとは考えにくい。

満70歳以上の神戸市在住者が利用できる市の敬老優待乗車制度(敬老パス)の存在も、市バスが好まれる一因だろう。敬老パスを使うことで、神戸北町~三宮駅前間は110円で利用できる。敬老パスで市営地下鉄に利用する場合は小児運賃が適用されるものの、谷上~三宮間は小児運賃でも140円。神戸北町からの利用を考えた場合、運賃面でも市バスのほうが圧倒的に有利だ。

ただし、敬老パスは10月1日から制度が変わり、市バスも市営地下鉄と同様、乗車ごとの小児運賃が適用される予定となっている。ひょっとしたら10月1日以降、乗客の流れに変化があるかもしれない。

  • 神戸市バス64系統。神戸北町から新神戸トンネル経由で新神戸駅・三宮駅前方面へ直行する

箕谷駅前に立ち寄った市バス64系統(三宮駅前行)の車内を観察すると、平日の日中にもかかわらず、大半の座席が埋まっていた様子だった。神戸市北区における市営地下鉄と市バスの両立の難しさを感じさせた。

■山の街駅・北鈴蘭台駅から三宮方面、どのルートが安い?

箕谷駅から再び神戸電鉄の電車に乗り、新開地駅へ向かう。曲線区間を走行している間に周辺の山々が開け、新興住宅地の見える車窓風景に。山の街駅と北鈴蘭台駅でまとまった乗車があり、車内の座席は8割ほど埋まる。

ところで、山の街駅から電車で三宮方面へ向かう場合、所要時間を比較すると谷上駅乗換えのほうが新開地駅乗換えより5分以上早く、普通運賃も50円安い(新開地駅乗換えは570円、谷上駅乗換えは520円)。次の北鈴蘭台駅から三宮方面の運賃は、新開地駅乗換えが550円、谷上駅乗換えが580円で30円高くなる。ただし、所要時間では谷上駅乗換えのほうが5分ほど早い。いまのところ、両駅とも三宮方面の鉄道利用は新開地駅乗換えが一般的と思われるが、とくに山の街駅に関して、今後は谷上駅乗換えを選ぶ人も出てくるのではないかと考えられる。

粟生線と接続する鈴蘭台駅も神戸市北区の中心的な駅だが、乗降客はさほど多くなかった。鈴蘭台駅を発車した電車は、神戸電鉄ならではの急な坂を下りつつ、途中の各駅に停車する。地下区間に入り、終点の新開地駅に到着すると、ほとんどの乗客が乗換えのため、神戸三宮・大阪梅田方面のホームへ向かったようだった。

今回は北神急行線の市営化から2週間後に乗車したこともあり、平日の日中に限って言えば、市営化前と比べて大きな変化はないように感じられた。これから周知を図ることで、定期券の切替えなどの時期に神戸市北部から北神線経由のルートへシフトする利用者が現れる可能性もある。市営化による市バスや神戸電鉄への影響も含め、今後どのような変化が見られるか、注目していきたいと思う。