東京商工会議所 中小企業のデジタルシフト推進委員会・災害対策委員会はこのほど、「テレワークの実施状況に関する緊急アンケート」調査を実施し、結果を公表した。

同調査は、緊急事態宣言発令期間(2020年4月7日〜5月25日)を経た、東京におけるテレワークの実施状況を把握するために実施。調査期間は、2020年5月29日〜6月5日。調査対象は、東京商工会議所会員企業1万2,555社で、回答件数:1,111件(回答率8.8%)。調査方法は、FAXによる調査票の送付、FAX・メール・WEBによる回答にて行った。

  • 「テレワークの実施状況に関する緊急アンケート」を実施 ※調査概要・回答企業属性

調査の結果、テレワークの実施率は67.3%であり、前回調査と比較し41.3ポイント増加。テレワークを「実施している」企業のうち、52.7%は緊急事態宣言発令以降(4月8日〜)から実施していると回答した。企業の声としては、「従業員の半数で実施。『緊急事態、とりあえずやろう』と開始した。近日、効果検証する」(発令以降から実施/製造業/30人未満)などが寄せられた。

  • テレワーク実施率(全体・開始時期別)

従業員30人未満の企業のテレワーク実施率は45.0%だったが、30人以上では74.1%、300人以上では90.0%と、従業員規模が大きくなるに従い実施率は高かった。業種別では、小売業の実施率が44.4%と、全業種で唯一「実施する予定はない」が「実施している」を上回った。

  • テレワーク実施率(従業員規模別・業種別)

ここには、「店頭は人による対応は必須、事務仕事は切り出すほども無く、リモートで市場(花卉)の競りに参加することも可能ではあるが、当店は高級・高額品種を仕入れるため、商品を肉眼や触感で確認しており、テレワークは無理」(実施する予定はない/小売業/30人未満)とのコメントが寄せられている。

いずれの従業員規模においてもテレワーク実施率は30ポイント以上増加しており、30人未満においても32.7ポイント増加となった。「製造現場主体の会社のため、これまでテレワークを全く考えていなかったが、可能な社員(事務系)を対象にテレワークを導入した。多様な働き方に対応することで人材確保に繋がるものと期待している」(発令以降から実施/製造業/30人未満)との声があった。

  • テレワーク実施率(従業員規模別・前回調査との比較)

緊急事態宣言発令以降、テレワークを実施した人数が最も多かった日の全社員に占める実施割合について、回答者全体では「61〜80%」(23.7%)が最多であったが、「発令前より実施」では「81〜100%」(30.1%)が最多であり、「発令以降から実施」では「20%以下」(26.2%)が最多だった。

緊急事態宣言発令期間中、テレワークを実施していた社員のうちで、最も多く該当する実施頻度は「週5日」だったが、その比率は「発令前より実施」では41.8%、「発令以降から実施」では27.8%だった。現場の声としては、「緊急事態宣言発令を受け、時間が無かったため、経理や総務等比較的実施しやすい部署の社員に限定してテレワークを実施した」(発令以降から実施/製造業/30人未満)などがあった。

  • テレワークの実施割合・実施頻度

テレワークで活用しているハードウェアは「PC」が97.0%で最も多く、「スマートフォン」55.3%、「タブレット」30.4%であった。活用しているハードウェアの所有者は、「発令前より実施」「発令以降から実施」ともに「会社支給」が最多であったが、その比率は「発令前より実施」では62.9%、「発令以降から実施」では50.1%だった。「テレワークをするにあたり、短期間で全社員分のPCを揃えることは難しかったため、自宅にPCが無い社員から優先してPCを支給した」(発令以降から実施/卸売業/30人未満)などの声が挙がった。

  • 活用しているハードウェアについて

テレワークを実施した際に生じた課題は、回答者全体では「ネットワーク環境の整備」(56.7%)が最多に。「発令前より実施」では「書類への押印対応」(60.1%)が最多であり、「発令以降から実施」では「PC・スマホ等の機器の確保」(58.8%)が最も多かった。企業からは課題として、「ネットワーク工事を依頼した際、依頼先のIT業者より『受注が増えている一方、出勤抑制により対応できる件数が限られ、先まで工事の予約が埋まっている』との説明があり、なかなか対応してもらえなかった」(発令以降から実施/サービス業/30人未満)といった指摘があった。

  • テレワークを実施した際に生じた課題

テレワークを実施したことによる効果は、回答者全体では「働き方改革(時間外業務の削減)が進んだ」(50.1%)が 最多だった。「発令前より実施」「発令以降から実施」ともに「働き方改革が進んだ」が最多で、「業務プロセスの見直しができた」が続いた。

  • テレワーク実施の効果

企業の声としては、「テレワーク導入を機に、社内稟議について全てオンライン決裁できるよう変更した」(発令以降から実施/小売業/30人未満)、「緊急事態宣言発令中、出勤抑制のためテレワークを実施した。時間外業務は減少したが、生産性や業績の向上に寄与するかは、まだ見極められておらず、このまま継続するかは未定である」(発令以降から実施/サービス業/30人未満)、「6月に入りテレワークは一旦廃止、全員出社とした。 テレワークの効果は見えづらい」(発令以降から実施/建設業/30〜49人)などがあった。

テレワーク実施の際に相談先は、「自分で調べた」(61.7%)が最多であり、「取引先・同業者」(23.2%)がそれに続いた。「自社で情報収集をしながら準備したが、経営課題に共通点が多い同業の取り組みや、業務フローについて熟知している取引先からのアドバイスは大変役に立ち、大いに参考にした」(発令以降から実施/サービス業/30人未満)とのコメントがあった。

  • テレワークの相談先

テレワーク未実施(=「実施を検討している」+「実施する予定はない」)の企業に、テレワークの実施を検討する際の課題を聞いた。前回調査では「テレワーク可能な業務がない」(52.8%)が最多だったが、今回調査では「社内体制が整っていない」(51.1%)が最多だった。「少人数で現場仕事が多いため、全社員が現場に出ながら“多能工"として働いている。店頭の対応も全員でやっており、ギリギリの人手で現場を回している」(実施する予定はない/サービス業/30人未満)などが実態のようだ。

  • 〈未実施企業〉テレワークの実施を検討する際の課題

テレワークに関連した助成金・補助金・公的支援制度の認知度・活用状況について、認知度(=「活用したことがある」+「知っているが活用したことがない」)と「活用したことがある」割合ともに、最も高いものは「事業継続緊急対策(テレワーク)助成金(東京都)」であり、認知度は81.1%、「活用したことがある」割合は10.4%だった。

  • 助成金・補助金・公的支援制度について(認知度・活用度)

実際の活用に際しては、「支援制度を活用したかったが、申請し助成を受けるまでに時間を要すること、申請より先に導入したものは助成対象外であること、助成対象となる経費に制限があることなどがネックとなり、当社では活用できなかった」(発令以降から実施/サービス業/30人未満)などの指摘があった。

その他、寄せられた企業の声には、テレワークを実施するにあたり工夫している点として、「社内の情報共有については無料のチャットツールを活用するなど、身の丈にあったITツールを活用しテレワーク環境を整備している」(発令以降から実施/製造業/30人未満)、「全社員にノートPCを配布し、勤怠管理や業務報告もクラウドサービスを活用、会社でもテレワークでも同じやり方で業務をオンラインで完結させるようにした」(発令以降から実施/小売業/30人未満)、「Web会議システムを活用することで、テレワークしている社員ともコミュニケーションが途切れないようにしているほか、テレワーク始業時と終業時に上司へメールで報告することでオンオフのメリハリをつけている」(発令以降から実施/サービス業/50人以上100人未満)。

今後のテレワーク推進に向けた取り組みでは、「既にテレワークを実施しているが、コロナ感染拡大の第2波に備え、まだ十分とはいえない情報セキュリティ体制を整備していく方針である」(発令以降から実施/建設業/30人以上50人未満)、「現状は、ほとんどの業務プロセスを紙で実施しており、ペーパレス化が課題となっているため、システム業者と打合せを進めて、ペーパレス化を段階的に進めることによって、テレワークを本格的に稼働させていく予定である」(実施を検討している/サービス業/30人以上50人未満)などが寄せられた。